映画「フライトプラン」を観て | 随筆のページへ 映画のページへ トップページへ FileNo.060205 |
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1万メートル上空の密室で忽然と消えた6歳の娘ジュリア。絶対にあきらめず、ひとり孤独な闘いを続ける母親カイル。巨大ジェット旅客機の中で繰り広げられるサスペンス・アクション。当初の脚本では父親が主人公だったそうだ。さしずめ父親ならブルース・ウィリスが似合うストーリーだ。この映画はジョディ・フォスター版「ダイ・ハード」と言っていいだろう。主人公カイルは、この最新鋭機を開発したチームのエキスパートである。400項目に及ぶ安全装置のテスト確認を行ったカイル。この巨大ハイテク機の隅から隅まで頭の中に入っている。トイレの天井がどこに通じているかなんて初歩的。ずらっと並んだ配線の中から、一つを選んでショートさせる。この機に関するカイルの圧倒的な知識量、その優位性がなければ、強い意思だけで闘えるものではない。優秀な技術開発エンジニアという知的な設定と、強靭なパワーで闘う主人公カイルの役柄がジョディ・フォスターにぴったりだ。
この映画の舞台となるのは世界最大のハイテクジェット旅客機、アルト航空E-474。総2階建てで、映画での乗客は425名だが収容可能人数はオールエコノミーなら854人という設定になっている。調理室が7つあり、らせん階段や、バー・カウンターも備えている。この超大型機のモデルとなったのは、今年デビュー予定の「エアバスA380」と思われる。しかしこの映画はアメリカ映画である。制作にはボーイング社の協力もあっているようだ。去年の新規受注でエアバスが、ボーイングを上回ったという状況もある。間違ってもエアバスという訳にはいかない。まず「E-474」という名称からしてボーイングのジャンボ機「B747」を連想させる。コクピットもA380は主デッキにあるが、映画ではジャンボ機同様上部デッキに配している。コクピットの中を見ても操縦桿が、エアバスのサイド・スティックではなく、ボーイングの操縦輪になっている。とは言うものの映像としては、やはり「世界最大!」を舞台にする方がインパクトがある。
過去、飛行機を舞台にしたパニック映画は多い。やはりその最初は「大空港」(70年)だろう。このとき使われた機材は「ボーイング707」である。これはボーイング社として初のジェット旅客機だが、ジェット旅客機そのものをメジャーにした機でもある。当時の映画の主役となったのも当然かもしれない。この後「エアポート75」「エアポート77」と続くが、いずれもジャンボ機「ボーイング747」が使われている。79年の「エアポート80」の舞台はコンコルドだった。コンコルドは生産数こそわずか20機ほどだったが、マッハ2で飛ぶ史上唯一の超音速旅客機だ。映画ではミサイルや戦闘機などの攻撃を切り抜けるなど、その速さを強調していた。90年の「ダイ・ハード2」もラストシーンで効果的に使われる。ジョン・マックレーン刑事が、B747機の翼の上で格闘する。97年の「エアフォース・ワン」では、B747から大統領を救出し「救援機はコールサインを変更する。変更名は“エアフォース・ワン”」というラストシーンが感動的だった。飛行機という計算し尽された究極の機能美は、映画にとっても魅力ある素材に違いない。
E−474機に乗って、いつしか眠りに落ちるカイル。ふっと目を覚ますと、隣にいるはずの娘ジュリアがいない。彼女の搭乗券もバッグも消えている。機内でジュリアを見たものは誰もいない。搭乗者名簿にもない。追い討ちをかけるように、ジュリアは既に6日前に死亡していたという知らせが届く。カイルを取り巻く状況の全てがジュリアの存在を否定する。この機に搭乗したという記憶はカイルの幻想だったのか。しかし、母と娘の繋がりはそんな状況をも跳ね返す。カイルには母親として、娘を守るという本能がその存在を確信させる。搭乗したとき、ジュリアが曇った窓ガラスに書いたハートマークはその象徴だろう。女優生活40年、二度のアカデミー賞・主演女優賞に輝くジョディ・フォスター。「絶対にやる価値があるというもの以外はやりたくない」と言い切る。今回は子供との繋がりを描く、というところに惹かれたという。確かにこの映画を観ていると「女は強し!母親はさらに強し!」というのが率直な印象だ。最後に乗客の一人が思わずもらす「すごい母親だ!」
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STORY | |
監督:ロベルト・シュヴェンケ 出演:ジョディ・フォスター |
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突然の夫の事故死をまだ受け入れられないカイル(ジョディ・フォスター)は、6歳の娘ジュリアと旅客機に乗り込む。夫の棺とともに最新鋭巨大ジェット、アルト航空E-474はニューヨークへ向け飛び立つ。このハイテク機は、カイルのチームが設計したものだ。 いつしか眠りに落ちるカイル。ふっと目を覚ますと娘のジュリアがいない。ジュリアの搭乗券もバッグも消えている。乗務員と乗客の誰もがジュリアを見ていない。搭乗者名簿にも記載がない。追い討ちをかける様に、ジュリアは6日前に既に死亡していたとの連絡が入る。はたしてジュリアの存在は幻想だったのか・・・ |
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