映画「コンフェッション」を観て 随筆のページへ

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この映画のキャッチコピーが「残したものは視聴率と死体」。主人公のチャック・バリスは、アメリカのテレビ界に君臨した伝説のプロデューサーであると同時に、CIAのエージェントとして33人を暗殺したという二面性を持っている。全く別の顔を描かねばならないという難しい題材を、どう描いているかがこの映画の見どころの一つである。華やかな色彩でテレビ界を描き、モノトーンでCIAのダークな世界を描くなど、表現に工夫のあとが見られる。技術を駆使して、色彩や画質もその年代に応じた処理がされており、50〜60年代の雰囲気なども伝わってくる。


チャック・バリスは多くの視聴者参加型番組を世に送り出す。「ゴング・ショウ」では自ら司会で活躍し、「デート・ゲーム」は人気番組になり、ゴールデンタイムに放送されるようになる。映画では「デート・ゲーム」のシーンに“ブラピ”がワンカット出ている。「ゴング・ショウ」というのは、アメリカのラジオ番組のパロディだそうだが、驚いたことにそのラジオ番組こそ「NHKのど自慢大会」の原型なのだそうだ。バリスの功績は、テレビに出たい素人の奇人変人を発掘し、プロにはない面白さで一般視聴者とテレビ界の距離を縮めたことにある。映画では、必然的にテレビ界の裏側も描くことになるが、そのあたりを垣間見ることができるのもまた面白い。


「デート・ゲーム」は世界中でマネされたという。日本でも「パンチDEデート」や「ねるとん紅鯨団」などは、おそらくバリスの影響を受けているのではなかろうか。アメリカのテレビの影響は、日本のテレビの草創期からのことである。当時、映画界はテレビとは一線を画し、全く相容れない状態であった。それが幸いして、多くのアメリカの番組が日本の家庭に流れ込んできた。「アイ・ラブ・ルーシー」や「奥様は魔女」は大人気となり、アメリカの裕福な家庭の状況や、アメリカ的な底抜けに明るい笑いを我々に見せてくれた。そのほかにも「名犬ラッシー」「ベン・ケーシー」「逃亡者」など多くの番組が放送され、個人的に私がアメリカにあこがれを持つ大きな要因となった。


映画の中でバリスを無名時代から支えるペニー役を“ドリュー・バリモア”が演じている。これがなかなかいい。いかにもアメリカ的な関係といえるかもしれないが、お互いが縛られず、かつ支えあい、奇妙な関係を保つ。彼女の存在がホッとさせるし、ついつい応援したくなる。彼女のほかに“ジュリア・ロバーツ”もCIAのエージェントに協力する役で出演している。謎に包まれた女の役で、これも今までにないキャラクターである。この映画は、先に書いたとおり、二面性を描くことの難しさから、よほど注意深く見ていないと混乱してしまいそうである。「二兎を追うもの一兎も得ず」の感が無きにしもあらずである。



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STORY
監督:製作:ジョージ・クルーニー
出演:サム・ロックウェル、 ドリュー・バリモア
1950年代、若きチャック・バリス(サム・ロックウェル)は、伸び盛りのTV業界での出世を目論む。理由は単純明快。偉くなれば金も女も思いのままだから。60年代に入ると、視聴者参加型の新しいゲーム番組を考案する。同じ頃、謎の男ジム・バード(ジョージ・クルーニー)に儲け話を持ちかけられるが、それはあろうことかCIAの秘密工作員として暗殺を請け負う仕事だった。番組がヒットし、売れっ子プロデューサーになると同時に、殺し屋としての裏の任務も着々とこなして…。
チャック・バリスは、CIAのエージェントとして33人を暗殺したと言う。CIAと言えば東西冷戦時代の産物で、軍に代わって情報収集や、諜報活動を行い、重要な秘密情報を大統領に提供する機関である。その機関の命令で、政府要人を暗殺したことを堂々と公表するのか?と疑問がわくが、そのあたりは、曖昧模糊である。CIAを扱った映画は過去いくつもあった。ジーン・ハックマンとキャンディス・バーゲンの「ターゲット」(1978)は、愛する妻を守るため、仕事を引き受けるが、最後には妻を失い、自分もその組織のターゲットになる。リー・マービンとロバート・ショウの「アバランチ・エクスプレス」(1979)はKGBの仕掛ける執拗な攻撃をCIAが迎え撃つ。KGBの仕組んだ大雪崩がクライマックスとなる。「追いつめられて」(1988)では国防長官のジーン・ハックマンにCIAの連絡員ケビン・コスナーがソ連のスパイに仕立て上げられ戦う。ジーナ・デービスの「ロング・キス・グッドナイト」(1997)では8年前に組織によって消された主人公が奇跡的に記憶喪失状態で幸せな生活を送っていることが当局に発覚する。そんな折、交通事故で大統領直属の秘密工作員だった記憶が甦る。次々とCIAからの暗殺者が送られてくる。実に面白い映画だった。スパイと言えばテレビの名作「スパイ大作戦」である。当局からの指令は「おはようフェルプス君」で始まり「当局は一切関知しないからそのつもりで。テープは5秒後に消滅する」で終わる。人気の高かったこのシリーズは、今も名場面が記憶に残っている。