浮き上がって進む船

長崎の三菱造船所

昭和35年6月


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file-No. 040530

小型実用艇の実現へ

【長崎】長崎市の三菱造船船型試験場は昨年暮れからやっていたジェット気流を利用して海面より浮きあがって進むホバークラフト(エア・クッション艇)つまり飛行機と船の中間的乗り物の模型実験にこのほど成功、さらに一歩進んで、小型実用艇の実現を目ざして基礎的な調査を行なっている。エア・クッション艇の原理は、船底からジェットを吹きだして高圧のエア・カーテンをつくり浮きあがるもので、同試験場ではジェット気流をつくりだすために模型飛行機用のガソリンエンジンを用い船体はジュラルミンの軽合金と合成樹脂アクリライトを使った。高さは二十a長さ四十五a、重さ二キログラムの模型である。

エア・クッション艇は五年前から英国で研究が進められ、小型艇がドーバー海峡横断に成功したこともあるが、日本の造船界ではまだ実験期で、ようやく同造船所で試作に乗り出したていど。水面(または地面)効果をうまく利用すれば、海面上二bていどのところでは風の力の数分の一の力で浮きあがることができるといわれる。
 なお試験場ではこれと並行して水中翼艇(水中につき出た羽の浮力で艇体を空中に持ちあげて波の抵抗を少なくする艇)の研究も進めている。


谷口船型試験場長の話
 ホバークラフトは飛行機と船の中間的乗り物というべきもので、原理的には船体は大きければ大きいほどまた速力も百ノットから百五十ノットという高速の場合が都合がいい。エンジンに高馬力のものが必要なので一足飛びに実現というわけにもいかないが、あと数年もすれば世界各国の造船所で競ってとりあげることになるだろう。とくに高速を要する客船や貨物船などには断然いい。

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