風速53m!!

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先日、出張で来た人と昼食を共にした。鹿児島での話題といえば「桜島の灰」と「台風」が定番である。当然「台風」の話になったが、私が鹿児島に来て3シーズン、「一回もイメージしていたような台風が来ていない」と不謹慎な話をしてしまった。過去、「風速35m」は「大分」で経験した。ちょっとそれるが、「風速40米」なら映画のなかで経験した。ご存知、石原裕次郎の大ヒット映画である。クライマックスは暴風雨の工事現場で格闘するシーン。今でもそのシーンで殴り合う時の「どすっ!どすっ!」という音が耳に残っている。

しか〜し、今回の台風はすごかった。「中心気圧940hpa」想像を絶する「風速53m」の暴風雨である。しかも一番激しいと言われる南東側の暴風域を体感。これは、まぎれもなく一生に一度であろう貴重な体験である。時は真夜中、午前2時〜3時。サッシの枠が 折れよとばかりに しなる、しなる、しなる…。頑丈なサッシだが瞬間Gで折れる可能性もあると考えると不安でベッドで横になんかなっていられない。激しく叩き付ける雨・襲いかかる風。床が地響きをたて、なにもかもがガタガタと音を立てる。網戸が、右に左に"カシャーン、カシャーン"と勝手に動き回り、電灯は点いたり消えたり、ビデオと炊飯器の灯かりが点滅し、まるで「エクソシスト」「ポルターガイスト」状態である。その凄まじさは、貴重な体験であった事は言うまでも無い。

そして、台風一過、高潮による多数の死者をはじめ、大きな災害のつめ痕を残した。過去の大災害のほとんどが、予期しなかったレベルであった。出水市の土石流は想定した40倍が襲った。阪神大震災の一本足の高速道路もまたしかりである。また最近では今までに経験しなかった新しいタイプの水害も発生している。福岡市のオフィスビルの地階の水没は、1時間に80mm近い降雨量で想定した排水能力をはるかに超えていた。東京新宿の三階建てマンションの地下倉庫の水没も排水能力をはるかに超える雨量であった。

机上で考え、このくらいが発生しても大丈夫としたレベルの数十倍が襲いかかる。災害とはそういうものだ。自治体は、防災にどれだけの費用をかけるか、掛けることが出来るか、真剣な取り組みが必要である。しかし、これは予算との兼ね合いであり限界があることもまた理解しなければならない。もっとも重要なことは、自然の力の前では人間がいかに弱者であるかを、我々一人々々が自覚することである。今度の体感は、それを教えてくれた。


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