貸金業規制法改正に思う
(2003年)

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file-No. 030701

つい最近、大手消費者金融の「武富士」がマスコミに大きく取り上げられていた。その内容は

厚生労働省の大阪労働局は、労働基準法違反の疑いで武富士本社など計7ヶ所を捜索。
元社員24人が、残業代など未払い賃金や、業務上で与えられた精神的苦痛に対する慰謝料など総額3億円の支払いを求める訴訟全国4地裁に提訴。
元社員やジャーナリストを対象に盗聴をしていた疑いがあるとして、弁護士グループが東京地裁に告発状を提出。

などなど同社の周辺はあわただしい。さらに、法律上支払い義務のない親族への違法な取立てや、過剰融資を強制してまで行わせる徹底したノルマ達成競争。目標未達支店は「反逆者」と会議でののしられ二時間くらいつるし上げられる。など常軌を逸した社内体制も伝えられている。そういった「風評リスク」もあって、同社は昨年末、格付け会社から「安定的」から「ネガティブ」へ見通しが変更された。最近マスコミに登場したのは同社だけではない「アコム」も返済交渉中の顧客の債務残高を不正に水増した問題で、その額は1億1314万円と判明。関東財務局から、再発防止に向け法令順守体制の強化を要請された。双方とも企業のもつ社会的責任の自覚もなく、「上場企業」とか「経団連の会員」というイメージからはかけ離れた体質と言わざるを得ない。


一方銀行の動向も、ペイオフ解禁を前に、二期連続無配は国有化など大変である。ここにきて「貸し渋り」「貸しはがし」の企業向けから、高利の個人ローンへ変化を見せている。都市銀行や地方銀行の相次ぐ消費者金融への参入で、市場は飽和状態になってきている。従来の銀行の個人ローンは10%以下、銀行と消費者金融が提携するモビットなどの個人ローンは20%以内、サラ金業界は出資法の29.2%以内のいわゆるグレーゾーンで商売するという棲み分けになってきている。サラ金業界は、収入がなく担保のない人たちまでターゲットを広げなければ利益を確保できない。日本カウンセリング協会も最近の傾向として「20代の自己破産が目立ち始めた。これまで審査ではねられていたフリーターらに、最近は消費者金融が融資。彼らがその後、返済に困るケースが増えている」と言っている。大手消費者金融で枠いっぱい借りた人は、ヤミ金へと流れていく。借金返済のために借金するという自転車操業に陥り、感覚の麻痺した多重債務者は、浮かび上がることのない奈落の底へと落ちていく。「全国ヤミ金融対策協議会」は、出資法違反(高金利)容疑で19都道府県、のべ5200以上の業者を各地の警察本部に告発した。また昨年、全国の警察が摘発したヤミ金融事件は、過去最多の238件、被害総額は約160億円に及んだという。2002年度の自己破産の申し立て件数が全国で21万件を超し、7年連続で過去最多を更新したという事実が現状を如実に物語っている。


このような状況を踏まえ、今国会ではヤミ金対策として貸金業規制法や出資法などの改正案について、罰則を大幅強化する方向で検討されている。その内容は、無登録業者への罰金を最大1億円に、登録業者でも悪質な貸し付けには最大3000万円に引き上げる予定である。今回の貸金業規制法改正にあたって、業界側は34%程度まで引き上げを要望した。2000年にそれまで40%だった上限金利が29%に引き下げられた結果、リスクの大きい客は中小金融業者からも締め出されヤミ金へ流れたのだという。業者の経営上の問題と、多重債務者を出さないた為にも、引き上げを要望しているのである。一方、日本弁護士連合会は、出資法と利息制限法の上限金利を同じにして、グレーゾーンを無くすよう要望している。現状を見るに、上限金利を引き上げるなどもっての外と言わざるを得ない。日弁連の言うとおり引き下げるのが妥当である。第一グレーゾーンの存在自体おかしいではないか。利息制限法の、規定を超過分は無効としながら、借り手が任意に払った分は認めるなどという矛盾はあってはならない。ヤミ金へ流れたのが悪いのではない。ヤミ金の存在があってはならないのである。「金利を引き下げることが本当に消費者保護につながるのか」という意見など本末転倒である。正規の利息で借り入れ枠がいっぱいになったのなら、そこで再生の道をさぐるべきである。法律では、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」など、債務の度合いに応じた方法が用意されている。多重債務者を防止するなら、出来るだけ早い段階で手を差し伸べるべきである。大阪八尾市では今月、ヤミ金融の過酷な取立てを苦にした夫婦と妻の兄が鉄道自殺するという悲惨な事件もおきている。貸金業者が利息制限法を逸脱して吸った甘い汁こそ、債務者の血のにじむような涙であることを肝に銘じなければならない


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追伸平成16年2月21日読売新聞

金利過払い訴訟・借り手側逆転勝訴

「みなし弁済、厳格解釈を」・・・最高裁、初判断

 商工ローン大手「商工ファンド」(現SFCG)から融資を受けた中小事業者が、不当に高い金利を支払わされたとして、同社に過払い金の返還を求めた二件の訴訟の上告審判決が二十日、最高裁第二小法廷であった。一定の要件を満たせば利息制限法の上限を超える金利でも有効とする貸金業規制法の「みなし弁済」規定について、同小法廷は「厳格に解釈すべき」との初判断を示し、借り手側の訴えを棄却した二審判決を破棄、審理を東京、札幌各高裁に差し戻す原告側逆転勝訴の判決を言い渡した。貸金業者は、利息制限法と出資法の二つの上限金利の間の「グレーゾーン」で営業しており、この日の判断は業界全体に影響を与えそうだ。

 利息制限法は融資額に応じて上限金利を年20%〜15%と定めているが、一方で出資法が、利息制限法の規定を超える上限金利を定めており、「二重基準」となっている。 出資法には罰則があるが、利息制限法にはなく、消費者金融を含む多くの業者は「みなし弁済」規定の適用を前提として、利息制限法以上で出資法以下の金利で融資しているのが実情。このため、全国各地で借り手側が利息制限法の上限を超えて支払った利息の返還を求めて訴訟を起こしている。 訴えていたのは、茨城県取手市の塗装業者と札幌市の建設業者。いずれも1993〜99年に、SFCGから当時の出資法のほぼ上限の年40%近い金利で融資を受け、過払い分としてそれぞれ約410万円、約290万円の返還を求めた。

「みなし弁済」規定では、@貸金業者が借り手と契約書面を交わすことA契約に基づく利息を借り手が自らの意思で支払うことB返済を受けた場合、業者は直ちに利息や元本への充当金額などを記した受取証書を交付すること・・・などの要件を挙げている。SFCG側は「要件を満たしていた」と主張したが、第二小法廷は「契約書面は所定の事項がすべて記戦されていることが必要」と具体的基準に初めて言及した。 また、塗装業者の訴えに対しては、受取証書の交付が返済から二十日後だった点も指摘し、「みなし弁済」の要件を満たしていなかったと結論づけた。その上で、過払い額などについて、高裁で改めて審理するよう命じた。一、二審は「書類に不備はない」などとして請求を棄却したため、借り手側が上告していた。

日栄・商工ファンド対策全国弁護士団の話「貸金業界全体が真っ青になる判決。営業の抜本的な改善を迫られる業者も多いのではないか」
「みなし弁済」とは・・・・・貸金業者が利息制限法の規定を超える金利を取った場合でも、法的に有効な返済とみなされ、債務者に返還しなくてもよいとされる規定(貸金業規制法第43条)

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追伸平成18年3月8日西日本新聞

ヤミ金取立て・時効目前6人逮捕

大阪府八尾市の夫婦ら三人が2003年6月、ヤミ金融の取立てを苦に心中した事件で、大阪・和歌山・沖縄など6府県警の合同捜査本部は7日、出資法違反(高金利)容疑で、夫婦に金を貸していたヤミ金業者メンバーで飲食店経営の容疑者ら6人を逮捕した。過酷な取立てが社会問題となり、ヤミ金融の罰則強化のきっかけになった事件は、出資法の時効の5月を目前に、実行犯逮捕にたどり着いた。
八尾3人心中事件・・・・2003年6月14日午前零時すぎ、大阪府八尾市のJR関西線の線路上で3人が電車にはねられ死亡した。遺書から、ヤミ金融による取立てを苦にした心中と分り、業者に対する批判が高まった。事件をきっかけに、無登録業者への罰則を「5年以下の懲役または1000万円以下の罰金」に引上げることなどを柱とするヤミ金融対策法(改正貸金業規制法と改正出資法)が施行された。

追伸平成18(2006)年4月19日 西日本新聞
グレーゾーン金利撤廃へ・・・・金融庁の有識者懇談会・方向示す
消費者金融など貸金業の規制を検討している金融庁の有識者懇談会は18日、会合を開き、焦点となっている利息制限法の規制を上回る「グレーソーン金利を撤廃し、貸金業の上限金利を利息制限法まで引き下げるべきだとの意見でほぼ一致した。社会問題化している多重債務問題の発生を防ぐには、高金利を是正し、規制を強化することが必要との認識を共有した。
 これを受け金融庁は議員立法である貸金業法の改正を目指して、与党との本格的な調整に入った。与党は来年初めまでに法改正する見通しだ。自民党は金融調査会の下に貸金業規制について協議する小委員会を設置し、有識者懇談会が21日にまとめる中間報告も踏まえ、議論を進める。上限金利を引き下げた場合の借り手と消費者金融業者などへの影響、過剰融資規制の在り方が中心になる見込み。
 消費者金融大手アイフルによる強引な取立てといった違法行為が判明した事も踏まえ、懇談会では、貸金業者の顧客への説明義務強化や、参入基準の厳格化でも一致した。
 グレーゾーン金利は、利息制限法の上限金利(年15〜20%)と出資法の上限(年29・2%)との間の金利。貸金業法では、借り手が任意に支払い、契約書面などがそろっている場合に、この利息を有効とする「みなし弁済」規定を設けている。懇談会は最高裁が借り手保護を重視する判断を次々と示していることから、金利問題を議論していた。

不祥事機に貸金改革
 根拠があいまいで高すぎるとの批判が強まっていたいた貸金業のグレーゾーン金利が撤廃に近づいた。金融庁の有識者懇談会が上限金利引き下げでほぼ一致、与謝野馨金融担当相も出資法などを所管する法務省との協議を表明。アイフルの不祥事も「追い風」に改革へ踏み込んだ。ただ、業界の反発も強いだけに、具体策をどう描くか。与党協議が次の焦点となる。
▽厳しい空気 「われわれは消費者のために議論している」内閣府の後藤田正純政務官は18費の懇談会で、業界論理に固執する貸金業者に諭すように言い放った。委員からは、金融庁の処分で明らかになったアイフルの違法な取りたて行為をめぐって「衝撃を受けた」「アイフルだけの問題ではない」との声も噴出。業者への厳しい空気が強まった。
 国民生活センターが3月に発表した調査では、複数の貸金業者から借金している多重債務者の9割が、グレーゾーン金利の意味を知らず返済に追われていた実態も判明している。論議はグレーゾーン金利に廃止や、上限金利を出資法の上限金利(年29・2%)でなく、利息制限法の上限(年15〜20%)とする方向へ一気に傾いていった。消費者金融問題に取り組んできた宇都宮健児弁護士は、懇談会後の記者会見で「世論の力で(制度)を変えられる」と、手ごたえをもらした。

▽与党に課題 「これまで利息制限法に一本化という話は、ほとんど出てなかった。議論の運び方が恣意的だ」。急テンポで進んだ懇談会の議論に、消費者金融業界には戸惑いと反発が広がった。USB証券によると、上限金利が18%で一本化された場合、消費者金融の上場大手五社の半分以上は収支トントンか、赤字に転落する見通し。金利引き下げで十分な利幅が得られず、厳しい経営を強いられることへの危機感は高まっている。
 ただ、懇談会では「引き下げの副作用は冷静に考える必要がある」(大学教授)との声も出た。消費者金融大手幹部は「金利20%では(採算が合わず融資を)ほとんどお断りする」ともらす。消費者金融の融資が細れば、より高金利のヤミ金融に手を出さざるを得ない人が増える恐れもある。
 個人の小口融資は、法人取引を主体とした銀行が手をつけなかった分野。大手行の参入が始まったことで、ようやく裾野を広げつつある。借り手の事情に合わせた金利体制の整備が急務といえ、これから本格化する与党の論議は、大きな課題を背負っている。
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平成18年(2006年)10月27日 日本経済新聞
貸金業法案・・・違法業者の罰則強化
超高金利や業務停止違反・・・罰金最大1億円
政府与党がまとめた貸金業法案で、違法業者への罰則を大幅に強化していることが明らかになった。超高金利で貸し出したり、業務停止命令に反した法人に対し最大1億円の罰金を科す。これまでは罰金刑だった貸金業者による登録申請書への虚偽記載にも最大2年の懲役刑を科すなど全体に厳罰化している。無登録のヤミ金融業者やヤミ金融まがいの業者の締め出しを狙っている。
政府・与党の貸金業法案の骨子
業務規制 ○貸金業者の登録要件を純資産5000万円以上に引き上げ。
○借り手の自殺で保険金が出る生命保険加入を禁止。
○行政処分に業務改善命令を追加。
過剰貸付の抑制 ○個人信用情報機関の整備。
○年収の3分の1超の貸付を禁止。
金利規制 ○グレーゾーン金利の廃止。
○出資法の上限金利を20%に引き下げ。
ヤミ金融対策 ○超高金利貸付や無登録営業の懲役5年→10年に
多重債務者対策 ○内閣官房に多重債務者対策本部設置。

追伸平成18(2006)年12月13日 Sankei Web(産経新聞)より
改正貸金業規制法が成立
グレーゾーン金利を撤廃

消費者金融など貸金業者の規制を強化する改正貸金業規制法など関連法が13日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。貸出金利の上限を利息制限法の上限(年15〜20%)まで引き下げ、出資法の上限(同29.2%)との間に当たるグレーゾーン(灰色)金利を撤廃する。複数の貸金業者から借金して返済困難に陥る多重債務者問題の解決が狙い。上限金利は平成21年末にも引き下げられる見通しだ。

 改正法は年内に公布され、来年1月に違法な高利で貸し付ける無登録のヤミ金融業者に対する罰則強化を施行。高金利、無登録営業の罰則を懲役5年以下から10年以下に引き上げる。

 さらに、公布から1年以内に日中のしつこい取り立て行為を禁じるなど取り立て規制を強化。2年半以内に、上限金利の引き下げのほか、借り手1人当たりの借入総額を年収の「3分の1」に制限する総量規制を導入する予定だ。

 金利規制を強化するのは貸金業者の利用する金利帯が灰色金利に集中していることが多重債務者問題の一因とされるため。総量規制は借り手の返済能力を超えた過剰融資を防ぐ目的だ。

 ただ、金利の大幅引き下げで、貸し倒れ懸念のある低所得者に融資しなくなる「貸し渋り」が広がる懸念もあることから、改正法は金利引き下げまでに金利水準などを見直す規定も盛り込んだ。