映画「サロゲート」を観て
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File No.100130

映画の最初に、金髪の若々しいFBI捜査官トム・グリアーが登場する。これが何と、グリアー捜査官(ブルース・ウィリス)のサロゲートである。これはちょっとした見もので、インパクトがある。サロゲートの開発者・キャンター博士を演じているジェームズ・クロムウェルは、「アイ・ロボット」でも反乱を起こしたロボットの開発者・ラニング博士役だったのが面白い。さて、この映画の世界では、人類の98%が日常生活を身代りロボット"サロゲート"に代行させている。街を歩いているのも、オフィスで働いているのも、すべてがロボットである。生身の人間は、スティムチェアーという椅子に座って、脳波によってサロゲートをコントロールしている。ここが「アイ・ロボット」とは根本的に違う。家から一歩も出ないので、犯罪などに遭遇する危険はなく、安全な世界が構築されている。外に出て行くサロゲートは、本人が望む通りの容姿を自由に選ぶことができる。つまり、風采の上がらないおやじが、ロザムンド・パイク(グリアーの妻マギー役)のような美女サロゲートを身代りにして働かすこともできるのだからややこしい。

深夜、ナイトクラブ前でサロゲート二体が破壊された。犠牲者は、登録記録のない青年と、若い女性。青年のIDチップは黒こげになっていた。FBI捜査官のグリアー(ブルース・ウィリス)と、ピータース(ラダ・ミッチェル)は、女性サロゲートのオペレーターの住むマンションへ急行する。そこで目にしたのは何と、破壊されていたサロゲートと同様、眼球が破裂し死亡している太った40男だった。さらに、大学の学生寮で、同じような状態で死亡している大学生が発見された。共通する死因は、脳が液状化していることだった。15年ぶりに発生した殺人事件だ。サロゲートのリスクは、人間には及ばないはずの世界。この事件が公になったらパニックになる。捜査は極秘で行われることになった。死亡した大学生は、サロゲートの開発者・キャンター博士の息子・ジャレットであることが判明した。サロゲートの最大手メーカー・VSI社の経営陣と対立したため、今はひっそり暮らしているキャンター博士だが、このことが息子の死と関係あるのだろうか。捜査官二人は、VSI社を訪れる。

ロボットと言えば、今テレビで『ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ』が放映中である。これは映画の「ターミネーター」シリーズの流れで制作されたもので、基本的な背景はすべて「ターミネーター」と同じになっている。今回、サラ・コナー役が、リンダ・ハミルトンから代わっている。最初、ちょっと違和感があったが、年齢的なものもあったのかもしれない。サブタイトルで"史上最強の美少女サイボーグ"となっているように、コナー親子を守るために、今回新たに送り込まれてきたのがTOK715:キャメロンである。キャメロンの動きを見ていると、ひょっとしたら人間の感情が芽生えているのではないか、と思うようなシーンがある。キャメロンのプログラムチップが損傷し、ジョンを殺そうとする。危険なためジョンが破壊しようとすると「愛してる、愛してるわ、ジョン」と必死に殺さないでと懇願する。何だかプログラムとは思えない言動である。キャメロンの原型が、未来のジョンを愛していたアリソンであるから、プログラム通りなのかもしれないが、スカイネットが、自らの意思を持ち戦争を起こした時代から送り込まれたTOK715であることを考えれば、ありえない話ではないかも(?)と思っている。

映画の冒頭、一瞬ではあるが大阪大学の石黒教授と、教授そっくりのロボットが並んで映っている。教授の作ったのは、双子のアンドロイドという意味の「ジェミノイド」である。この教授そっくりのジェミノイドは、遠隔操作型であるから、ひょっとするとこれが映画制作のヒントになったのではないかとさえ思う。日本のロボット技術は、世界の中でも群を抜いている。今年の正月には、本人そっくりのロボットをつくれるという福袋が2010万円で販売されていた。顔の表情はもちろん、声も録音して本人のようにしゃべるという。映画では、サロゲートが人間の身代りとなり、理想とする容姿を手に入れ、すべての危険から解放される。一見すばらしい世界だが、一つのものを手に入れると、それによって失われるものがある。「高まる鼓動、人間はそのスリルを忘れてしまった」。サロゲートを開発したキャンター博士は「人類を救えば、まだ息子の死は無駄ではない」と、人類の再生を願いながら自殺する。それは、グリアーが、妻マギーと万感の思いを持って抱き合うシーンに象徴される。ロボットは、人間が人間らしく生きるためのサポーターでなければならない。
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「サロゲート」

 2009年/米

監督:ジョナサン・モストウ
出演:ブルース・ウィリス
   ロザムンド・パイク

身代わりロボット「サロゲート」がすべてを代行する社会・・・・それは、人類が待ち望んだユートピアのはずだった
2010・01・11 ロボスクエア(福岡市百地浜)

ロボスクエアで開催された「ロボット・バトル大会」の様子。
ロボットの大きさでORCリーグとARCリーグに分かれ、それぞれのリーグ戦を勝ち抜いていく。勝ち上がった4体づつが、決勝トーナメントを戦い優勝を目指す。遠くは関東から参戦したロボットもあった。
二足歩行はもちろん、倒れたら即起き上がり、ジャンプし、走りまわる。相手と対戦する時に見せる、ちょっと腰を落とし、斜に構えたポーズは、ちょうどブルース・リーが敵と対戦するときの姿を思わせる。
勝ったロボットは、両手を天に突き上げ勝ち誇り、負けたロボットは、床を拳で叩いて悔しさを表現する。 二足歩行ロボットは、もうこんなに身近なものになった。
ロボスクエアに掲示されていたロボット開発の歴史
1969年 WAP−1 ゴムの筋肉を伸び縮みさせて歩くロボット。日本ロボット研究の草分け。 全高:89cm
重量:2.2kg
早稲田大学・加藤一郎研究室
1973年 WABOT−1 世界初の人間型知能ロボット。歩くだけでなく、耳と目を持ち対象物を認識できる。 全高:190cm
重量:120kg
早稲田大学・生物工学グループ
1979年 WL−9DR 世界で初めて1歩10秒ながら、人間の歩きの動作をほぼ再現。 全高:100cm
重量:40.7kg
早稲田大学・加藤一郎研究室
1984年 WABOT−2 楽譜を目で読んで電子オルガンを演奏するミュージシャン・ロボット 全高:189cm
重量:83kg
早稲田大学・μ研究グループ
1985年 WL−10RD 1歩1.3秒世界初の動完全歩行を実現。斜面や階段も昇降できる。 全高:140cm
重量:83kg
早稲田大学・加藤一郎研究室
1986年 WL−12L でこぼこ道でも障害物があってもバランスを崩さず歩き続ける。 全高:180cm
重量:120kg
早稲田大学・加藤一郎研究室
1997年 WABIAN−R ダンスを踊ったり感情を表す歩行ができる。 全高:189cm
重量:136kg
早稲田大学・高西信夫研究室




























































2010・01・30 ルビコンへ
今度のバンクーバー五輪のフィギュアだが、コントロールをやめてくれないか。前回のトリノでは、安藤美姫選手を15位と叩き潰し、一方で荒川静香選手に日本選手唯一のメダル、それも金メダルを目の前で取らせた。今回の経過を見ていても、安藤選手はGPファイナルのSPで首位に立ったところまでで、それ以降じわじわと君がコントロールしてきているのを感じている。全日本では、すでに代表選手には決定していたものの、4位に終わり、安藤選手自身が「内定者としてふさわしくない演技」と言ったほどの出来だった。ダークホースの鈴木明子選手を入れたのは、どういう思惑か。まさか、キム・ヨナ、浅田真央、鈴木明子を表彰台に上がらせ、安藤選手ひとり涙させるのではないだろうな。全日本の成績が、バンクーバーの暗示ではないことを祈っている。もう一度言う。頼むからコントロールをやめてくれ。
2010・02・26バンクーバー 安藤美姫選手・5位
まずは、ルビコンへ礼を言う。ありがとう。安藤選手は、その力をよく発揮し、悔いのない五輪であったと思える。SPでは、全日本のイメージを彷彿とさせ、最後もそれを踏襲したと思えるが、それはもう言うまい。
とにかく、フリーをノーミスで終って、今季自己最高点を出し、持ち味も充分発揮できたと思う。安藤選手の「スケートしていてよかった」という一言に尽きる。更に「4年前より、自分なりに成長できた」と言っている。苦しい時もあったろうが、精神的に負けることなく、よくぞ滑りきってくれた。