フィンランドといえば、ノルウェー、スウェーデン、ソ連の3国と国境を接する北欧の国。メランコリックなムードに閉じこめられた遥かな土地です。しかし、モダンなポピュラー音楽の波は、このフィンランドにもひしひしと押しよせて、若々しい音楽家たちのグループか次々と誕生しているのです。
とくに、現在ヘルシンキで最も人気の高いのは、ザ・サウンズというこの4人組。電気ギター3つにドラムスという、小編成の演奏グループですが、メンバーはいずれもハイ・ティーンからはたち代の好青年ぞろい。明日の世代を代表する、フレッシュなアーティストです。力強いエネルギーと新しい感覚にみちあふれたその演奏は「フィンランドのヌーヴェル・ヴァーグ」と呼ぶにふさわしいものでありましょう。
最近のヒット・ナンバー2曲をひっさげて、彼らはここに、日本へのテビューを飾りました。世界的なベスト・セラーを記録したこのレコードは、おそらくわが国でも多くのファンをかくとくすることでありましょう。
■さすらいのギター
原題は「マンチュリアン・ビート」。東洋的な哀愁を感じさせる、美しいメロディーです。赤い夕陽の満州を思わせるその調べは、とりわけ私たち日本人の胸に、淡い感傷をよびおこします。ロシア氏謡と共通した、何ともいえないムードがありますね。ザ・サウンズの演奏も、そのセンチメンタルな曲調を、ロックのビートと巧みにマッチさせた好演です。 わが国でもヒット間違いなしの一篇でありましょう。
■エマの面影
エマはもちろん女性の名前。憂愁の瞳に燃える想いを秘めた、チャーミングな北欧の娘でしょう。激しいビートに乗った親しみやすいメロディーが、彼女のプロフィルをくっきりと浮き彫りにします。リズミックな中に、わびしげなノスタルジーがただようのも、フィンランドというお国がらをよく現わしていますね。共感を禁じ得ない、印象的な一篇です。なお、この曲は、ザ・サウンズのヒット・ナンバーとして、世界中に知られました。
きすらいのギター
ザ・サウンズ