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File No.160904

今年(2016年)4月、宇宙物理学者・ホーキング博士らによって「ブレークスルー・スターショット」という計画が発表された。この計画は、超小型の探査機「ナノクラフト」で、約4.4光年の距離にある「アルファ・ケンタウリ」を探査しようというものである。探査機には小型カメラや通信システムなどが積み込まれる。恒星間を飛行する推進システムは、数メートル四方の「ライトセイル」という帆を使う。この帆が地上から発するレーザーを受けて進む訳だが、これが秒速6万キロ、高速の20%という猛スピードになるという。4.4光年という距離にピンと来ないかもしれないが、現在の探査機なら約3万年かかる恐ろしく遠い距離である。これをナノクラフトは20年で到達する。この計画を実行するための技術は、これから開発するといい、実際に探査機が飛び立つのは20年後になる。つまり20年後に旅立ち、20年かけて目標に到達し、得たデータが地球に届くのに4年かかる。つまり、人類が移住できるかどうか判断されるのは、すべてが順調にいったとして44年後になる。

超小型、超軽量であるから、20年間飛び続ける間には、さまざまな障害が待ち受ける。このため探査機は、数千個発射されるという。その中のひとつでも到達すれば目的は達成されるわけだが、逆に考えると、数千個発射しなければならない危うい旅路ということにもなる。最初からすべてが順調にいって目的達成ということにはならないかもしれない。さらに光速の20%という猛スピードで、アルファ・ケンタウリを通り過ぎるわけだから、判断するに必要なデータを十分に取得できるのか。超小型カメラだが、鮮明な画像でしっかり捉え、なおかつ判断できるだけの画像を地球に送ることができるのだろうか。まあ、最高の宇宙物理学者が名を連ねている訳だから、素人が心配することでもない。いずれにせよ、いよいよ太陽系外惑星を至近距離から探査する計画が始められようとしている。地球上の生命が過去何度も絶滅の危機にさらされたように、その日が明日来るかもしれない。太陽が終焉を迎え、地球が運命を共にする日は必ず来る。人類は新たな生存の地を確保するのを急がねばならない。


火星探査機・オポチュニティ
人類が近い将来地球を脱出して、他の惑星へ移住するのに、最も可能性が高いのが火星である。火星には水や大気が存在し、人類が生きていくための元素はすべて備わっている。加えて、火星の1日は約24時間余り、地軸の傾きも地球と似ている。現在の技術でも、火星までは約半年、地球に一番近くにあって、この条件なら、まずは火星を目指すのは当然といえる。そこで考えられているのが「火星の地球化=テラフォーミング」である。限りなく地球環境に近づける計画だが、困難ではあるが、夢物語ではないようだ。だが肝心要の人間が、地球という自然が豊かで穏やかな環境で育ったひ弱な生命であることが問題である。先ごろ、人工知能(AI)が、囲碁のトッププロを破ったというニュースがあった。局面を見て直感で本質をつかみ、大局観をもったことが勝因だったという。この大局観を可能にしたのが「ディープラーニング(深層学習)」だった。まずはひ弱な人間に代わって、火星の地球化は高度な能力をもつロボットにやってもらうといいかもしれない。

太陽の寿命はあと50億年。その時地球は、赤色巨星化した太陽に呑み込まれるか、あるいは焼き尽くされるかである。いずれにせよ地球も火星も、太陽の運命共同体である。必ずやってくるその時までに、宇宙の中の稀有な存在としての人類は、太陽系外惑星に移住し、「種」の保存を図らねばならない。アルファ・ケンタウリは、その有力候補となるのか、さらには次の移住先への橋頭保になりうるのか。しかし、地球の人口が100億になると予測される今、全人類が移住するのは、当然不可能である。結局人類の中の一握りがその使命を担って宇宙船に乗りこむことになる。片田舎のおじさんは、選ばれる可能性などゼロだが、何世代にもわたって、宇宙船の中で生活するなど願い下げである。ましてや、フロンティア・スピリットのかけらも持ち合わせていない。仮に、地球が太陽に呑み込まれる日が、目の前に来たとする。その日を待ちうける私は、これまで計り知れない恵みを与え続けてくれた太陽に感謝しつつ、地球最後の姿を目の当たりにする。そして、その貴重な体験とともに静かに消えていく。
映画「インターステラー」より


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