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File No.160815

外国人向け地図記号
2020年の東京オリンピックを控え、国土地理院では、外国人にも分かりやすい地図を作成するため、新たな地図記号や英語表記決定した。地図記号15種類は、外国人がよく訪れるレストランやホテルといった施設を対象としている。訪日客が直感的に理解でき、支障なく旅行できる環境をつくることが目的である。たとえばホテルの「H」は、ベッドで寝ている人のイメージで表現し、交番のマークは、警棒2本を交差させた記号を、警察官が敬礼している姿にする。郵便局のマークも、逓信省時代の〒のマークから、手紙(封筒)のイメージにする。ショッピングセンターや百貨店なども、外国人観光客が必ずと言っていいほど訪れるポイントである。このマークは、ショッピングカートをイメージしたものだが、パブリックコメントの意見を踏まえ、若干の手直しをしたという。今後、国土地理院が作成する英語版地図に適用していくが、自治体などで作成する外国人向けの観光用地図やガイドブックなどでも使用される。ただし、日本向けの地図記号が変わる訳ではない。

外国人向け地図に記載する地名や施設名などの英語表記も規定される。地名では山、川、湖といった自然地名、都道府県名などの居住地名、道路、駅などの施設名が対象となる。ローマ字表記がベースとなるが、外国人に分かりやすくするために二つの方式が考えられている。「追加方式」と「置換方式」である。まず「追加方式」であるが、単純にローマ字で書くとサロマ湖は「Saromako」となるが、これを外国人に分かりやすくLakeを追加し「Lake Saromako」とする。「Tonegawa」は「Tonegawa River」となる。次に「置換方式」であるが、地形や種別を表す部分を、英語に置き換えるというものである。サロマ湖の例では、追加方式では「Lake Saromako」だったが置き換え方式では「Lake Saroma」となる。つまり湖(ko)の部分がLakeに置き換わるのである。利根川の例では川の部分をRiverに置き換え「Tone River」となる。ただ、どちらにもメリット、デメリットがあり、どちらか一方に決めるのではなく、それぞれを判断し運用するという。
英語表記の地図


TOKYO 1964
ピクトグラムという言葉になじみがない人も多いと思う。しかし、非常口のマークは誰でも知っている。消防庁の規定で、表示が定められているマークである。このピクトグラムは、1964年の東京オリンピックの時に開発されたものだ。当時まだ外国からの観光客は少なかった時代である。そこにオリンピックで、大量の外国人が押し寄せることになった。そこで考えられたのがピクトグラム(絵文字)である。街のいたるところで必要とされたのはもちろんだが、オリンピックであるから各競技においても直感的に理解できるピクトグラムも求められた。そこで気鋭のデザイナーが集められ「競技」や「施設」などを表すピクトグラムが作られた。よく芸術に国境はないと言われる。もはやこのとき作られたピクトグラムは、言葉の壁を破り、国境を越える素晴らしい芸術の域である。世界から高い評価を受けたこのピクトグラムは、その後世界に引き継がれていく。

以前、このピクトグラム開発のドキュメンタリー番組を観たことがある。その時非常に印象的だったのが、チームリーダーから求められた「著作権の放棄」だった。デザイナーみんなが求めに応じ署名した。おそらくこのデザインは世界にとって、価値あるものと確信し、世界に広がることを念頭においてのことだったろう。まさに日本人の日本人たるこころである。1964東京以来、50年にわたって世界で受け継がれ、リオオリンピックでも各競技毎にピクトグラムが作られている。そのルーツは、幕末から明治期にかけて、ヨーロッパの芸術に影響を与えたジャポニスムにも見ることができよう。現代においても携帯電話(スマホ)の絵文字が世界で使われている。私のガラ系にも一つの絵文字だけ送られてくることがあるが、それで十分気持ちが通じる。日本が開発した非常口のピクトグラムは、世界共通のマークとなった。このピクトグラムで、どれだけの人が救われだろうか。外国人に分かりやすいピクトグラムは、ある意味「お・も・て・な・し」の重要な部分である。
RIO 2016


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