防衛白書と中国 随筆のページへ

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File No.150723
政府は22日、中国による東シナ海でのガス田開発の状況を、外務省のホームページで公表した。掲載された写真は、近年急激に建設が進む中国側の構造物が確認できるものである。平成25年6月までは4基だったものが、この2年で12基ものガス田開発用プラットホームが造られた。しかも、そのうちの5基はこの1年で増設されたものだという。そもそもこのガス田開発は、中間線に隣接するガス田や、中間線をまたぐ特定海域は共同開発海域とすることで合意していた。しかし、2010年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で条約の締結交渉は中断していた。以降、日本の呼びかけに応じることなく、勝手に開発をつづけている。日本は「中国が一方的に資源開発をすることは極めて遺憾」と中止を求めたが、中国は「開発活動は完全に正当で合法だ」と、いつものことながら得意技の横車で我が道を行く。及び腰の外務省も、今回の写真公開は、少しは危機感がでてきたと見える。世界に向けて大々的に公表し、南沙の埋め立て同様、世界から非難を浴びせるのがまず第一歩だろう。
このガス田開発は、日本の資源の抜き取りの問題だけではない。軍事的に重要な意味を持っている。構築されたプラットホームには、すでにヘリコプターが離発着できるヘリパッドのような施設が確認されている。ここからの偵察が日常茶飯事に行われれば、尖閣同様、メディアがニュースにも取り上げなくなる。先日の衆院平和安全法制特別委員会で中谷防衛相は、プラットホームが軍事拠点化する恐れがあり、安全保障の観点から、その脅威に懸念を示した。軍事拠点化の恐れとは次のようなものである。構築されたプラットホームに、軍事用レーダーを置けば、尖閣諸島付近や、この付近の日本の防空識別圏の状況が把握でき、自衛隊や米軍の動きをすべて把握できるという。この状況下で対空ミサイルなどが設置されれば、考えただけでも恐ろしい。加えて、プラットホームの海中にレーダーを設置すれば、潜水艦の動きまでも把握でき、沖縄周辺の自衛隊と米軍の、陸海空の動きが全て把握され、圧倒的な脅威になることは間違いない。
政府は21日の閣議で、2015年版の「防衛白書」を了承した。白書では、安全保障環境の厳しさが一層増していることを指摘。特に中国の軍事力を背景にした一方的な主張による海洋進出に懸念を示している。東シナ海のガス田の脅威は上で述べたとおりだが、当初の表現は「施設建設や探査を行っている」というものだった。これに自民党国防部会の要請で「海洋プラットホームの建設」という具体的な文言を入れたという。当然である。南シナ海における軍事施設のための埋め立ても、東アジアを緊張させている。白書は「南沙諸島にある七つの岩礁で、急速かつ大規模な埋め立てを強行しているほか、滑走路や港湾を含むインフラ整備を推進しているとみられ、国際社会が懸念している。航行の自由、飛行の自由の原則が不当に侵害されるような状況が生じている」としている。それは強固な防衛体制がなければ、尖閣諸島でいつ起きてもおかしくない状況だといえる。白書では、中国の妥協のない強硬姿勢は、不測の事態を招きかねないとしている。
昨年度の空自のスクランブル発進は、1000回に迫らんとする状況である。深刻さを増す安全保障環境にあって、もはや一国では守り切れない厳しい状況下にあることは明白である。我が国が国民の生命と財産を守るにはどうあるべきか。今回の安全保障法制は、その一つの方向性を示すものだ。集団的自衛権の行きつくところは、有事にアメリカ議会が、日本のために血を流す決議をする信頼関係を築くことにある。我々は、観念的ではなく現実を見よう。我々の安全をどう確保するか、目を見開いて、安全保障環境を把握し、自分の頭でしっかり考えたい。そもそも昭和30年代、あれほど吹き荒れた「安保反対」の嵐も、過ぎさってみれば、アメリカの軍事力を背景に、70年間の平和を保つことが出来た。その時代に信念を曲げず決断した政治家がいたからだ。支持率を無視することはできないが、政権は、支持率に一喜一憂せず、国民を守るためという信念のもと突き進んでほしい。それこそが責任ある政治家としての在り方である。それが正しい決断であったと分かる時がきっと来る。

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2015/07/27 安全保障政策とは
今日の産経新聞の正論に、西原正氏が「新安保法案の議論に戦略感覚を」と題して執筆されている。その中で「安全保障政策」の基本的な考え方について次のように書かれている。
『一国の安全保障政策とは、軍事的脅威に対して最悪の事態を考慮して対応策を練っておくことである。その対応策を準備するにあたっては、敵性国に知らしめない機密の部分を秘めているのでなければ、効果ある政策にはならない』。

自民党・稲田議員はTV討論でこう発言した。『民主党は「個別的自衛権で対応できない場合がある」と言いながら、ではどうするかという対案も出さず批判ばかりしているのは無責任。単に批判ばかりしていて、この国が守れますか』。全くその通り。

国民に理解されていないというが、これまでどれだけ微に入り細にわたり報道されてきたことか。安保法制反対のデモに参加している人でさえ、「戦争はいやだ」の域から出ていない人も多い。その先の「ではどうやって相手国の軍事力を抑止するか」というところまで考えが至っていない。国民の側にも問題がある。

野党の「議論が尽くされていない」は決まり文句で、「どんなに議論しようが賛成するつもりはない」という意味である。共産党など野党は、安保法制「廃案」が目的であるから、国を守る手段などどうでもいい、批判だけを延々と繰り返す。

2015/07/23 中国、東・南シナ海で演習活発化
中国人民解放軍が、東・南シナ海や西太平洋など6か所で実弾射撃を含む軍事演習を開始したもようだ。中国が領有権を主張する尖閣諸島や、岩礁埋め立てで緊張する南シナ海を念頭にした軍事演習と見られる。中国国防相は「定期的なもので、軍事闘争の準備を進めるためだ」と説明した。南シナ海で一方的に実効支配を強化する中での軍事演習活発化に、近隣諸国の懸念が高まる。


2015/07/17 安保法・衆院通過
これで今国会の成立が確実となった。防衛体制の強化こそが、外交のバックボーンであり、平和を守る基本である。理念だけで、やみくもに反対する左翼は、領土・領海・国民の生命を守る手段を持たない。心のうちでは、どうせ強行採決するだろうから、そうなれば政権の足を引っ張る格好の口実が出来る、くらいしか思ってないだろう。
政権与党には、国を守る責任がある。
今日の新聞の社説の見出しは次の通り。
新聞   見出し
産経新聞 安保法衆院通過・日本の守り向上へ前進だ。
読売新聞 安保法案参院へ・日本の平和確保に重要な前進。