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File No.150711


戦国武将
九州電力川内1号機の原子炉に核燃料が装填された。原発事故後の新基準に初めて適合し、ようやく原発による発電が再開される見通しである。ただ、4年余りのブランクがあり、再稼働に向け慎重な点検、確認が行われている。機器や設備などは繊細である。点検だけでは分からない劣化などがあるかもしれない。機器だけでなく、人的にも重大事故を想定したリアルな訓練が必要だ。この後、1か月をかけて、原子炉に異常がないかなどが確認され、原子力委員会の検査後、8月中旬には制御棒が抜かれる。1号機が問題なく稼働し、発送電が開始されれば続く2号機、ひいては玄海原発の稼働も視野に入ってくる。おそらく全国の電力会社が、祈るような気持ちで見守っていることだろう。電力会社はどこも同じだが、原発停止で火力に頼り、大幅な赤字を余儀なくされている。その一部は、我々個人や企業の電気料金に上乗せされてきた。今回の1号機がスムースにいって、2号機も稼働すれば、年間150億円の収支改善の見通しだという。

経産省は、先ごろ2030年の電源構成案を提示した。それによると、重要なベースロード電源と位置付けられた原発の電源比率を20〜22%とした。また再生可能エネルギーも現在の11%から22〜24%と大幅に増加している。その分石炭、石油、LNGといった化石燃料の比率が引き下げられた。電源で重要なのは、日本経済をも左右しかねない発電コストである。火力発電の燃料の輸入によって貿易収支が大幅な赤字に陥った。その赤字の一部は、家庭用の電気料金に19%、産業用には28%上乗せされている。ギリギリの経営を続けている中小企業にとって、これは生きるか死ぬかの大問題である。辛抱たまらんと、電気料金の安い海外へ出ていく企業も多い。空洞化によって、国内産業は衰退していく。一方、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーも、決してコストは安くない。しかも出力に安定性が無いため、増やし過ぎると安定供給に支障を来たす。電源構成は、それぞれの特性を考慮し、状況の変化に対応しつつ、いかに柔軟に組んでいけるかである。
新設工事


エレガント
"ゆでガエル"という言葉を知っているだろうか。カエルは、熱湯に入れられると、飛び出して逃げるが、水から徐々に熱くしていくと、気付かないまま熱湯になり、もはや逃げる力を無くし死んでしまう。日本は、今CO2をまき散らし放題まき散らし、排出量は過去最悪になっている。北京の深刻な大気汚染は、対岸の火事ではない。北京の子供たちは体をむしばまれ、病院へ駆け込んでいる。日本が排出しているCO2もまた、北京の排出と何ら変わることはない。何も処理されることなく、ただ大気中にまき散らされている。つまり、地球全体を汚染し、我々はゆでガエル状態にあると言ってよい。そうならないために、今世紀末の平均気温上昇を、産業革命前に比べ2度未満に抑えるというのが世界が目指す目標である。先ごろ行われたサミットでは、日本の削減目標を、13年比26%減とした。この目標達成のためには、CO2を排出せず、安定した電力供給をする原子力は必須である。福島原発は、電源が壊れただけで、何も原子炉が壊れた訳ではない。

日本のエネルギー自給率は、現在6%に落ち込んでいる。資源小国である日本は、エネルギー資源の80%を輸入に頼り、石油に至ってはほぼすべてが輸入であり、その大部分を中東に依存している。シーレーンの確保は、すなわちエネルギーの安定確保であり、国の存立にかかわる重大な問題である。中国が、尖閣諸島を侵略しようとしているのも、南沙に軍事施設をつくったのも、理由の一つは、埋蔵する資源を確保しようとするものである。そのうち日本の周辺にあるメタンハイドレードが欲しくなるにちがいない。新しい電源構成では、エネルギー自給率を25%まで引き上げる目標である。再生エネルギーの比率を見ると、太陽光の7%をはじめ、風力、水力、地熱、バイオマスを含め、2030年に22〜24%としている。しかし、コスト面とのバランスもある。「安保法制反対」「原発再稼働反対」。日本のエネルギー安全保障など、毛ほども考えていない。何でも反対で、環境悪化を待たず、日本が"ゆでガエル"になる。
負けねえぞ


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2015/09/01 九電・川内1号機がフル出力運転
再稼働させた川内原発1号機(出力89万キロワット)が、フル稼働(定格熱出力一定運転)を始めた。今後、問題が無ければ、原子力規制委員会の最終検査を受けて、9月10日には営業運転に入る。これで電力供給の余力を示す「予備率」が、3.0%から6.7%に改善される。これまで中部電力と四国電力から合計49万キロワットの融通を受ける想定だったが、川内1号機がフル稼働したことで、融通を受ける必要がなくなった。予備率が改善されたのは、九電だけでなく、西日本、中日本全体の予備率も4.0%から6.0%改善されるという。
川内原発2号機(出力89万キロワット)についても、9月中旬に燃料を装填、10月中旬に再稼働し、11月中旬には営業運転開始の見通しである。