航空関連の話題(2) 随筆のページへ

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File No.150703
7月2日天神のアクロスで開かれた福岡EU協会主催のセミナー「KLMオランダ航空はなぜ九州に上陸したか?」を聴講した。KLMオランダ航空は、2013年4月福岡に、初の欧州直行便として就航した。福岡を飛び立ったKLM機は、12時間でオランダのスキポール空港に到着し、ここをハブ空港として数時間後には、ヨーロッパ各地の目的地へ行ける。KLM機の乗客の80%は、乗り継ぎ客だという。オランダは、ヨーロッパのほぼ中心に位置する地の利を生かし「ワンターミナルコンセプト」で、ハブ空港に徹しした戦略をとっている。講師は「オランダは小国で、資源・人・労働力もなく、昔からモノやヒトの流れの中継地点として発展してきた歴史がある」と話す。その状況を「ヨーロッパの面を提供する」と表現されていた。この考え方こそが、成田、関空に次いで、3番目に九州に路線を開いた理由でもある。ヨーロッパ渡航者数では4番目ではあるが、ヨーロッパへの直行便が飛んでいない都市としては日本で最大の福岡を選択したのである。しかも福岡はアジアに近く、アジアへの路線数も多い。成田、関空、福岡から飛ぶことで、日本における面を提供したのである。
現在、世界の航空会社の頭痛の種は、中東湾岸航空3社の台頭である。エミレーツ航空、カタール航空、エディハド航空の3社である。このところ、この3社の勢いが止まらない。カネに糸目はつけないとはこのこと、エアバスのA380やA350など、最新鋭機を投入し、最高のサービスを提供している。一方で、KLMなど既存の航空会社は、LCC対策に追われていたかと思えば、長距離路線でも湾岸3社の攻勢にお手上げ状態である。脅威を感じたアメリカのデルタ、アメリカン、ユナイテッドのビッグ3は、抗議の声を上げている。その理由の一つが、国からの巨額の補助や、無利子の融資を受けており、オープンスカイ協定に違反しているというものだ。しかし、そんな抗議などほとんど効力もなく、ものともしていないのが現状である。それどころか、アメリカに直行便を開設しようとするなど、路線網の拡大に余念がない。この状況からして、湾岸3社に真っ向勝負するのは得策ではない。あえて手を結ぶ方向に動く航空会社も出てきている。 ANA B787-9 初号機
(JA830A 福岡空港にて)

KLM 次の機材はB787-9

エアバス最新鋭機 A350XWB
湾岸3社の一つ、カタール航空が、エアバスの最新鋭機A350XWBの量産1号機を受領した。ローンチカスタマーのカタール航空から、世界デビューである。ここの社長の言葉が今の勢いを表している。「現在の最新鋭機A350XWBも5年後の最新鋭機となる777Xも競合機とならない。常にその時代の最新鋭機をすばやく投入することで、高い競争力を維持する」。A350XWBは、中型ワイドボディ機ファミリーを形成している。A350-800、A350-900、A350-1000の3種類である。つまり胴体の長さが違うだけで、基本は同じなのである。それはパイロットも整備士も、同じ資格でいいということを意味する。777と787であれば両方の資格が必要となる。A350XWBは、最新鋭機でそれなりのメリットもあるが、ボーイング社のように、日本の製造業には貢献していない。それにも関わらず、これまでボーイング一筋だったJALが、A350XWBを導入する。確定31機、オプション21機の購入契約をしたという。日本のナショナル・フラッグ・キャリアを、ANAに取られ、縛りが無くなったのだろう。
さて経営破たんしたスカイマークの動きが、予断を許さない状況になっている。今、再生案を提出しているのが、スカイマークとイントレピッドである。当初、スカイマーク案が有力だったようだが、ここにきてイントレピッドが債権者への弁済率を、スカイマークと同じ5%に引き上げた。これで東京地裁は両案を債権者会議にかける決定をした。最終的に債権者集会で債権総額の1/2以上、債権者数の過半数を取った方になる。ところが880億円の債権をもつエアバスがどっちを選択するか、いまのところ不透明なのだ。しかもまだ総債権額も確定していない。エアバスは、ANAにスカイマークがキャンセルした航空機の一部を購入するよう迫っている。これが成立するかどうかで、エアバスがどっちを選択するか決まりそうだ。エアバスはぎりぎりまで引っ張って、有利な条件を引き出そうとするのでは、と見られている。ただANAの方は、エアバスにとって有力な顧客でもあり、エアバスとは友好な関係にあると言っている。債権者会議に向け、かなり激しい水面下の交渉が続きそうだ。
スカイマーク(福岡空港にて)


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KLMオランダ航空(福岡空港にて) 福岡線就航時のポスター 講演会場に展示されていた模型

2015・08・07 ANAがスカイマークの再建を支援
8月5日に行われたスカイマークの債権者集会で、債権者数の8割、債権額の60%の賛成でスカイマークの再建案が可決された。債権総額の29%を持つエアバスがこの案支持に回ったのが決め手となった。エアバスの動きを見て、他の大口債権者もANA支持に回ったという。エアバスが動いた背景には、今後のANAとの取引もあるだろうが、ANAの方が現実的で安定感があったということのようだ。

2015/09/01 福岡空港の訪日客急増
福岡空港が国際線就航から50年を迎えた。福岡空港は、海外路線数の多さで、成田、羽田、関西、中部に次いで5番目に多いという。
福岡空港の2014年の外国人入国者数が急増している。過去最多の約88万8千人を記録し、はじめて日本人出国者数の約88万4千人を上回った。円安やLCCの就航などが後押しをしたようだ。
北九州空港や佐賀空港など、九州の他の空港でも入国外国人者数が日本人出国者数を上回ったという。
(西日本新聞より)