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File No.140914

リュック・ベッソン監督作品の映画「ニキータ」では、麻薬中毒の少女ニキータが、政府から3年間の特殊訓練を受け、プロの暗殺者になっていく。そんな監督による今回の作品では、スカーレット・ヨハンソンが、超人的な能力を発揮するヒロインになる。特殊な薬品によって、ルーシーの脳機能が覚醒する。普通の人間では、10%しか機能していないという脳が100%覚醒したらどうなるのか。まさに人類がかつて経験したことのない世界が描かれる。映画の冒頭、細胞が分裂するかのような映像が映し出され、「生物は10億年まえに誕生し、どう進化したか」というナレーションが流れる。生物の誕生を10億年前としたのは、おそらく多細胞生物の誕生という意味なのだろう。その生命は環境によって、困難な環境であれば、生命は「不死」を選択し、容易な環境であれば「繁殖」を選択するという。これまで地球上の生物は、「繁殖」を選択してきた。さて100%覚醒したルーシーの選択は・・・・。

ごく普通に暮らしていた平凡な女性ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は、留学先の台北で、マフィアの闇取引に巻き込まれてしまう。下腹部に新種の薬品の袋を埋めこまれるが、マフィアの暴行により、それが体内に漏れ出す。ルーシーの脳が覚醒し始める。通常の人間は脳の10%しか機能していないが、薬品により彼女の脳は次第に覚醒していく。30%の覚醒状態で、自分の細胞のコントロールが可能になり、更にレベルアップしていく。目に見えない電波や電磁波が見え、外の会話がすべて聞こえ、脳の深淵にまでアクセス可能になったルーシー。空間や大気、大地の振動、重力さえ感じる。100%覚醒に向かって突き進んでいくにつれ、人間性が失われてゆく。他人を自由にコントロールできる能力は、マフィアといえども虫けら同然。しかし細胞分裂の限界に至ったルーシーは、もはやこれまでと、100%覚醒した脳の状態を、脳科学者ノーマン博士(モーガン・フリーマン)に伝えるべくダウンロードを始める。

ルーシーが覚醒し始める元となったのは「CPH4」というもので、これは妊娠6か月の時、胎児の骨格をつくるために必要な物質だという。現実にそんな物質があるかどうかは分からないが、これを大量に摂取することで、人間の脳が100%覚醒するという設定である。その時の脳がどんな状態になっているのか、かつて人類は経験したことが無い。ただ脳の状態というのは、所詮ニューロンとシナプスの、微弱な電気エネルギーによる繋がりである。1と0の組み合わせのコンピュータを通して、ダウンロードすることは可能と思われる。ただダウンロードされる時の異様な映像からして、人類に伝えられるルーシーのデータは膨大と思われるが、メディアがUSBというのは如何なものか。映画の中で、CPH4の運び屋3人の行き先を、マフィアのボスの頭に指を接触させただけで、ボスの記憶を読み取るほどのルーシーである。画期的な記憶媒体とインターフェースは考えられなかったものか。

「時が存在の証となる」、「時なくして何物も存在しない」など、この映画では「時間」というのが重要なファクターになっている。ルーシーは、80%覚醒状態に入り、時間を支配し四次元の世界へ。過去にタイムスリップし、空間移動もできるようになる。一瞬にしてパリからニューヨークへ、手を動かしただけでタイムズスクエアの時間が矢のように流れる。猿人のルーシーがいる世界へタイムスリップするルーシー。あたかも映画「E・T」のように、指と指を接触させると、地球を出て宇宙へ。そして宇宙創世へ。それはクルト・ゲーテルの過去と未来が繋がってしまう「回転する宇宙」のようでもある。「彼女はどこに?」。ルーシーからのメッセージは「私はいたるところにいる」。ルーシーは、「不死」を選び、時空を超えた「神」に近い存在になったのだ。
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映画「LUCY/ルーシー」

2014年/仏/89分
2014・08・29公開

監督:リュック・ベッソン
出演:スカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン

2014・09・16 映画「ハンナ」
先日「ハンナ」という映画が深夜に放映されていた。この映画は2011年のアメリカの作品で、ケイト・ブランシェット(ハンナ役ではない)が出ていた。番組の紹介にはこう書いてあった。『殺人マシーンとして育てられた16歳のヒロインを描いたアクションムービー。元CIAの工作員の父に、フィンランドの山奥で人知れず育てられた16歳の少女ハンナ。幼い頃から格闘技をはじめ、あらゆる戦闘テクニックを叩きこまれ、その戦闘テクニックは父をしのぐまでになっていた』
この少女はどういう経緯で生まれてきたのかは、映画の中の次のセリフで分かる。
『胎児にほんの少し手を加え改善を図る。恐怖と同情に乏しくさせ、筋力は増強させる。感覚は鋭く、完璧な兵士を生み出そうとした』。