海で生き抜く
(マリンワールド海の中道)
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File No.140810

カエルアンコウ
マリンワールド海の中道(福岡市東区西戸崎)では今、夏休み期間中ということもあって「奇妙な研究室」という特別展が開催されている。どんな奇妙な生物に出会えるのか期待しながら出かけた。水族館というのは、いつ行ったか記憶にないくらい久しぶりである。館の案内によれば、マリンワールドの展示テーマは「対馬暖流」にすむ海洋生物だという。きれいな魚もいれば、ギョッとして一歩下がるようなものもいる。案内板には「海は、たくさんの不思議にあふれた生命(いのち)のふるさとです」として、「なぜ、魚は群れるのか?」「なぜ、魚はこんな形なのか?」といった問いかけが書いてあった。これを念頭に、水槽を観ていくと、さらに見えてくるものがある。一方、ショーも「イルカ・アシカショー」「イワシタイフーン」「ラッコの餌付け」などなど、たくさん用意されている。いわしの大群が、ひとつの巨大な生き物のように水中を舞う姿は圧巻である。

さて、「奇妙な研究室」であるが、「オウムガイ」や「オオイカリナマコ」など、珍しい生物が展示してあった。「オウムガイ」はユラユラと水に浮いているだけで一向に動かない。「メキシコサンショウウオ」も動く気配がない。しかしこれも生きていくためのチエである。エサの少ない深海生物がそうであるように、エネルギーの消費を最小限に抑えて、エサを捕獲するために備えているのだろう。エサの捕獲といえば「カエルアンコウ」は変わっている。頭の上にある疑似餌(エスカ)で小魚をおびき寄せ、一気に捕食するという。「アフリカハイギョ」の説明は興味深かった。『水が少なくなる乾期に耐えるため肺を獲得した肺魚は、魚類でありながら空気呼吸ができます。濁った泥水など、視力に頼れない生活環境に合わせて目は小さく、また頭部には微妙な水流の変化を感じる穴(側線)が発達しています』。「なぜ、魚はこんな形なのか」という問いには、すべての魚それぞれの答えがありそうだ。 アフリカハイギョ

オニダルマオコゼ
生存競争で生き残っていくのは、強さではなく、環境適応能力であると言われる。まさに「アフリカハイギョ」は、その典型であるが、現在、生き延びてきている生物は、多かれ少なかれ、命を繋ぐためのチエを獲得している。だからこそ今を生きているのである。「オニダルマオコゼ」の「擬態」もそのひとつである。そう思って見ても判然としないくらいよく化けている。細胞の生き抜くチエを目で確認できるのだ。「ミノカサゴ」は猛毒を持っている。攻撃は最大の防御というが、この魚たちは攻撃のためではなく、自分自身や種を守るために毒を持っていると書かれていた。『「種」を守るため』というのが光る。「ウミキノコ」は、光のエネルギーだけで成長するという。これこそ究極の環境適応能力と言えるかもしれない。説明には炭酸カルシュウムで出来た小さな骨片を持っていると書いてあった。あるいは細胞内に葉緑体でも持っているのだろうか?

イワシの大群の水槽には様々な魚が一緒に泳いでいる。よく大きな魚から捕食されないと思ったら、水族館側でそれぞれの魚に充分なエサを与え、狩りをさせないようにしているとのことだった。動物たちは生き延びるために必要なエサを得れば、目の前を小魚が泳いでいても捕食しないのである。それが食物連鎖の"掟"である。だが、その掟を守りながらも、生き延びる為の熾烈な戦いが、毎日毎日繰り広げられている。食うか食われるか、生存競争の中で獲得していった能力と形。「奇妙な」とか「気持ち悪い」などと、食物連鎖の頂点に立った人間が軽々しく言ってはいけないのだ。それは、種の絶滅の危機に立たされながらも、長い時間をかけて勝ち取った合理的なデザインだからである。魚も人間も、目や鼻や口が頭部に集中し、同じような顔をしている。どんな形態にしろ、その形態に敬意を表さねばならない。「奇妙な研究室」の生物たちが、ダテに30億年の歴史を背負っているのではないと言っているかのようだ。 ウミキノコ

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追伸:サンゴは葉緑体を持っている訳ではなかった。
光合成は、サンゴの細胞内に共生している褐虫藻(かっちゅうそう)の働きだそうだ。褐虫藻はサンゴから二酸化炭素などをもらい、それをもとに光合成を行う。できた炭水化物をサンゴに与えるかわりに、サンゴの中で増殖する共生関係にあるという。

↓ マリンワールドの館内に書かれていた館の紹介
『当館の展示テーマは、福岡県北部を流れる「対馬暖流」です。対馬暖流域にすむ海洋生物は、沖縄から奄美大島周辺の亜熱帯生物、九州から日本海南部沿岸の温帯生物、日本海北部からオホーツク海にすむ寒帯生物など、バラエティに富んでいます。当館の展示は、暖流にのって、南から北へと配置されています。対馬暖流の海にすむ生き物のさまざまな暮らしぶりをじっくり観察してください。』

マインスイーパ
下3例には、いづれも地雷が5〜6個隠れています。
しかし、確実に地雷の無い、突破口となるセルがあります。
それはどれでしょうか?
 
(クリアした画面は次回の随筆で・・・)