笑っていいとも・放送終了 随筆のページへ

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File No.140404
無くなって初めて知る、その存在の大きさ。「笑っていいとも!」が去る3月31日に終了して数日、私の率直な思いである。昭和57年から32年間、一貫して変わらなかった昼12時から1時間の生放送。昼前に食事の準備に取りかかって、12時からくったくのない笑いとともに食事をする。国民の多くに、こんな日常が定着していた。テレフォンショッキングに出演した安倍首相にして「無形文化財」とまで言わしめた番組である。放送回数8054回と、生放送単独司会回数が、放送最終日にギネスに認定された。それはレギュラー陣の一人・木下優樹菜の「・・・・気がついたら、当たり前のように小さい頃から見ていた番組」という言葉に表わされている。終了するとはいえ、昼の時間帯では、ずっとトップの視聴率を取り続け、番組の持つエネルギーはまだまだ衰えていなかった。グランドフィナーレの最高視聴率が33.4%という驚異的な数字を獲得したのをみても、放送終了はいかにも残念である。
金曜日のコーナーで「国語辞典、目指せ言葉の達人」というのがある。最後に出された題は「笑っていいとも」だった。番組に出演しているタレントそれぞれの率直な思いが書かれていた。中でも関根勤さんが番組の側面を、端的に言い表していた。『32年間、日本のお昼に笑いを届け続けた。その間、出演者の中から、優秀なタレントが育ち、彼ら、彼女らが、日本のバラエティ界を盛り上げた。日本の発展と平和を笑いという側面から支えた名番組。司会は初回から最終回まで、タモリ(森田一義)が務めた』。国民的長寿番組という側面、多くのタレントを育てたという側面が言い表されている。グランドフィナーレに集結したかつてのレギュラー陣の顔ぶれをみると、冠番組をもつ、そうそうたる面々だった。『唯一、レギュラー出演が決まると"おめでとう"と言われる番組』と劇団ひとりが言うように、芸能人憧れの番組であり、テレフォンショッキングへの出演は、一流芸能人の証でもあった。
32年間、長寿番組になりえたのは、その「ゆるさ」にあるとよく聞く。だが「ゆるさ」だけでは長く続くはずがない。長く続くには、その基盤がしっかりしていなければならない。タモリさんが、しっかりした「基盤」を持っていたからこそ、「ゆるさ」を演出し、視聴者にホッとする安心感を与え続けられたのである。それを一番感じさせるのは、テレフォンショキングである。このトークは言ってみれば、ジャズで云う「ジャムセッション」である。ジャズでは、プロとプロのぶつかり合いだが、トークに出演するゲストは、上手な人、下手な人、様々ある。しかし、我々にそれを意識させない、いつも変わらないレベルのトークが繰り広げられていた。我々は、そのアドリブ技術が遥かに高かったが故に、それを感じなかっただけである。野球で超難しい外野フライを、凡フライに見せる技術である。その技術を支えたのはほかでもない、タモリさんの驚異的な知識の広さと深さである。



続けていればいつか繋がるだろう、と思っていたタモリさんだが、最後のグランドフィナーレで、その想いは叶えられた。憧れの吉永小百合さんが、中継ではあったが、スペシャルゲストとして出演した。しかも、直筆のメッセージ、花束、プレゼントまで届けられた。プレゼントは旅行バッグだった。「少しお休みになれるんですか?」という小百合さんの心づかいが伺える贈り物だった。周りからは「照れてるんじゃないよ」「顔、赤いすよ」とヤジが飛ぶ。考えてみれば、中継の方がタモリさんがグダグダにならずに、かえってよかったかもしれない。「タモリさんの大きなクルーザーに、いつかぜひ乗せていただきたいのですが?」、「いいとも〜!!」。「また私と食事に行ってもいいかな?」、「いいとも〜!!」と、お互いが約束を取り付けた。これじゃ〜、まるで相思相愛じゃないか!! まあ、これも32年間、アルタに通い続け、日本に笑顔を送り続けたご褒美である。タモリさん、本当にお疲れ様でした。
吉永小百合さんが
「いいとも〜!!」 と言った瞬間
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テレフォンショッキング・ゲスト

井上陽水(3/19)

安倍首相(3/21)

福山雅治(3/26)

黒柳徹子(3/28)

ビートたけし(3/31)

明石家さんま(3/31)
グランドフィナーレの、さんまさんとの掛け合いの中で、お笑いの大物の呼び方の話が出た。「殿」「大将」「若」という呼称に対して、タモリさんの呼び方を募集したとき、「チーママ」に決まったという。これはあまりにもバランスが取れていない。そこで考えてみた。中洲産業大学というのがあるので「教授」もありかもしれない。しかし、私は「博士」というのがいいと思う。「博」というのは、「博学」あるいは「博識」の「博」である。知識の広さ、深さからいいのではないか。もう一つ「博多」の「博」という意味もある。さらに「士」というのは「学徳を修めたりっぱな男子」という意味がある。「博識の士」「博多の士」で「博士」という呼び方が適切だと思うがどうだろう。

2014/10/16 タモリさん、菊池寛賞受賞!!
タモリさんが、「第32回 菊池寛賞」を受賞した。受賞理由は次の通り。『32年間、生放送の「笑っていいとも!」の司会を務めるなど、独自の視点を持つテレビ番組の「顔」として日本の笑いを革新した』。