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File No.140207


日本の小惑星探査機「はやぶさ」はターゲットマーカーに、88万人の名前を刻んで飛び立った。次の「はやぶさ2」でも、宇宙ファンの名前やメッセージを乗せて飛ぶ。私は思うところあって両方とも登録を思いとどまった。ところが、先月(2014/01)15日、NASA(米航空宇宙局)は、2016年に打ち上げる小惑星探査機「オシリス・レックス」に名前を乗せたい人の募集を始めた。早速ウェブサイトから登録をした。だれでも登録でき、登録すると証明書がすぐ発行される。私が登録したのは、受け付け開始から数日後だったので、かなり若いIDナンバーをもらった。探査機は2016年に打ち上げられ、18年に小惑星「ベンヌ」に到着する。2年間滞在後、小惑星の試料を23年に地球に届ける計画だ。「オシリス・レックス」はその後、私の名前が刻まれたマイクロチップを乗せ、半永久的に太陽を周回する。

先日、テレビ東京の番組「昭和は輝いていた」で「宇宙開発」を取り上げていた。ゲストは、JAXAの名誉教授 的川泰宣氏と、宇宙科学研究所教授で「はやぶさ」で有名な川口淳一郎氏、それに宇宙ファンの中西モナさんだった。その中で川口教授が「イトカワ」を探査する意義についてこう語っていた。『「はやぶさ」は地球の中身を知ること。地球の中で何か動いている。しかし何が動いているか、きちんと証明して言える人は誰もいない。地球は6000kmある。掘ってもせいぜい20〜30kmしか掘ったことがない。山の岩を見て地球の中に岩があるというのは間違い。・・・・地球をつくる一番軽いものだから一番上にある。地球全体の比重はその倍くらいある。だからもっとずっと重いものでできているのだが、それは全部沈んでいる。何があるか知るために小惑星に行く。小さい惑星は重いものも沈まない。一番表面のかけらを持って帰ると、それでかつて地球をつくった中身がわかる』。つまり「はやぶさ」による小惑星探査は、我々が生きる地球を知るためのミッションだった。
「はやぶさ 2」 (想像図)

同番組では、糸川博士の人となりなども話題となった。その中で糸川先生が二回目の打ち上げ不成功に終わったときの記者会見の話が興味深い。記者の「また失敗でしたね」という問いに対して、糸川先生はこう答えたという。『あなたは日本語をあまり知らないね。新しいものを作り上げたいと思って努力しているとき、そういう努力は失敗とは言わない。ひとつひとつうまくいかなかったことが積み重なって、やっと新しいものが成就したと言う。そういう挑んでいくという歴史なのだから、チャレンジしている人に失敗という平板なことばを言ってはいけませんよ』。そう言えば昭和33年、小学館の雑誌「中学生の友一年」に糸川先生の「私の好きなことば」が掲載されていた。やはり「失敗や不運は、必ず踏み石になって、もう一つ高い所に登る役にたつはずです」と書かれていた。



「ベンヌ」の調査目的を見て初めて知った観測目的があった。それは「ヤルコフスキー効果の観測」というものである。調べてみると、「天体からの熱放射の不均一が生じることにより、天体にモーメントが生じ、小天体の軌道が影響を受ける効果である」となっている。小天体の一日の熱放射が均一でないため、長い間にわずかではあるが軌道が変化するという。これは小惑星などの小さな天体だからこそ起こるもののようだ。「イカロス」が太陽の光を受けて進むことを考えれば理解できないでもない。「ベンヌ」は150〜200年の間に地球に衝突する可能性があるという。これを正確に予測するには、その形状、構成物質などの調査と、レーダー観測と光学観測による「ヤルコフスキー効果」の影響を詳細に調べる必要があるという。つまり目的のひとつは、小天体の地球への衝突を回避する技術の蓄積というもののようだ。「はやぶさ2」は、太陽系の起源・進化と生命の原材料物質を解明するために小惑星「1999 JU3」を目指す。宇宙開発は、さらに高度な領域へと進んでいる。


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登録画面

証明書

NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」に名前を登録していると、定期的にメールが送られてくる。
[*****(name)] your name is going to space!
The Planetary Society [connect@planetary.org]
Thanks for signing up to send your name to asteroid Bennu. NASA's OSIRIS-REx mission will be the first U.S. mission to return samples from an asteroid to Earth, and you'll be there! Well, not you per se, but your name.
Traveling is better with company, so tell your friends! Tell your family! All they need to do is visit planetary.org/bennu and fill in their information.
If that doesn't convince you, perhaps this will help:
Hurry, while supplies last! Don't let your friends and family miss this opportunity to travel in space!
The Planetary Society