新地形図

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File No.140114

昨年11月、国土地理院の新地形図10面が刊行された。今後数年をかけ、全国の地形図を刊行する予定である。今回刊行された新地形図は、多色刷になったのをはじめ大幅な改定が行われた。だがそもそも根本的に大きく変わった点がある。それはこれまでの地形図は、紙による地形図を基本としてきたが、今回の改正で「電子国土基本図」が基本となり、紙による地形図はあくまでも提供の一形態にすぎないということになった。これは平成19年に制定・施行された地理空間情報活用推進基本法に基づくものである。デジタル化によるメリットのひとつに、常に最新の情報に更新されていくことが挙げられる。急激に拡大するネットによる情報の提供や取得に則したものである。「デジタル化は時代の要請」とは言うものの、50年間にわたって利用されてきた紙に替わる大改革には、メリットもあればデメリットもある。それを補完するのが今回の紙による地形図の刊行である。
今回刊行された2万5千分の1地形図は、多色刷で印象が大きく変わっている。これまで黒・青・茶の3色だったが今回、赤・青・黄・黒が基本の色となった。この4色を組み合わせることで多彩な表現が可能になった。道路についていえば、高速道路が緑、国道が赤、都道府県道は黄色といった具合である。だから道路は色を見ただけでその属性を判断できる。大きく変わったといえば建物の色が、これまでの黒からオレンジ色に変わっている。これは市街地の地名など表記を読みやすくするためだという。さらにこれまで密集した市街地は概略表示だったが、新地形図はそれぞれの建物が描かれている。同時に道路の情報も詳しくなっているという。これは国土基本図(2500分の1)をそのまま縮小しているためである。
変更点(地図中心解説より)
●建物を橙色に着色しました。これまでは市街地では集中・混雑する様々な地物を黒一色で表現していましたが、識別しやすくなりました。
●鉄道記号については、これまで同様、JR線はいわゆる旗竿、JR以外は実線にしています。
→→
←← 変更点(地図中心解説より)
●緑色の陰影を付けました
。これにより、地形の外観が分かりやすくなりました。
地形に陰影をつけたのも大きな変更点である。この影は北西の方向から平行光線を当てたという設定だという。これをボカシ表現と言うらしいのだが、たしかに立体感が感じられる。ところが、この陰影表示による問題点もあるようだ。山間部における山小屋や山間集落が、分かりにくくなったという。市街地を意識したオレンジ色の家屋表示もまた、山間部だと山小屋を探す登山者にとってはかえって判読しにくく「致命的な欠陥」とまで書かれている。



正確性、迅速性に優れる「電子国土基本図」を国土の基本と位置づけることは時代の流れである。100年に一度というような天変地異が毎年のように襲っている昨今、常に最新の情報に更新され維持されることは重要である。一方でこれを利用する側の国民は地形図離れが進んでいるという。せめて自分の住む町の地形くらいは確実に読み解き、万一に備える能力は備えておきたい。国家の基本である国民の生命と財産を守るという観点からも、最新の地形図の提供、それを読み解くだけの教育は必須である。さらに、ダウンロードによる地図利用の広がり、紙ベースの地形図による歴史の保存などその重要性は改めて言うまでもない。
変更点(地図中心解説より)↑↑
●国道は茶色に着色して国道番号はカッコ書きでしたが、新しい多色刷の地形図では赤に着色の上、国道番号はおにぎり型に変更しました。
●都道府県道は着色していませんでしたが、新たに黄色に着色しました。


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2014年1月号「地図中心」
(通巻496号)

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