防空識別圏・中国の暴挙 随筆のページへ

トップページへ

File No.131127

中国が東シナ海に「防空識別圏」を設定した。「防空識別圏」は領空の外側に設定され、早い段階で「国籍不明機」を確認し、国籍の識別、飛行の目的などを確認、領空侵犯に備えるものである。自衛隊機が頻繁に行っている「スクランブル」はこの空域を基準としている。ところが今回問題なのは、日本の防空識別圏と大きく重なり、しかも尖閣諸島など「日本の領空」をも含んでいることである。韓国が国際法に反して勝手に「李承晩ライン」を設定し、竹島を自国のものだと言っているのに酷似している。防空識別圏が重なるということは、日本と中国の戦闘機が、お互いスクランブルで接近する可能性があり、重大な事態になりかねない。ところが中国は「設定した防空識別圏により、日本の政治家による相次ぐ危険な挑発を抑え、地域の平和や安全につながる」などと笑えない冗談をおっしゃる。しかも、防空識別圏の設定は東シナ海だけにとどまらない。今後南シナ海など他の地域にも設定していくという。勝手な規制を強制し、従わない場合は「武力による緊急措置」をとるとする行為は、アジア全体に対する挑戦状とも言える。

この暴挙にどう対応するのか。安倍首相はこう述べている。「わが国固有の領土である尖閣諸島の領空が、あたかも中国領空であるかのごとき表示で、全く受け入れることはできない」「力を背景にした現状変更の試みには、確固たる決意で、毅然と冷静に対応していく」。今回の空域には、在日米軍の訓練空域も含まれているため、アメリカの反応も速かった。「米軍はこの地域で訓練を行っており、今後も変更はしない。中国側の求めている飛行計画の提出などは行わない」、「中国の今回の発表によって、米国の地域での軍事作戦のあり方が変わることは全くない」という考えを表明した。昨日、早速B52爆撃機2機が、中国への事前通報なしに尖閣諸島上空を飛行したが、中国からの反応はなかったという。一方、国土交通省も「わが国に何ら効力を有するものではなく、これまでのルール通りの運用を行っていく」とし、容認しない日本の立場から、国内航空各社にフライトプランの提出をしないよう要請した。こういう暴挙には、毅然と対応しなければならない。

日米ともに中国が勝手に設定した防空識別圏は無視する意向である。中国の目的のひとつに、日米の連携を牽制することにある。最近のアメリカは、できればもめごとを起こしたくないというのが本音だ。それを見透かすかのような今回の中国の動きである。こんな状況下、アメリカの駐日大使として、キャロライン・ケネディ氏が着任した。近く沖縄を訪問する予定もあるようだ。しかし、ケネディ氏は、政治・外交経験がまったくない。だが彼女の武器は、オバマ大統領との間に太いパイプを持っていることである。きっとうまく対処し、諸問題をいい方向に導いてくれる。それに彼女は、日米双方で絶大な人気がある。先日、天皇陛下にオバマ大統領からの信任状を届ける「信任状奉呈式」に臨んだときには、皇居までの沿道に数千人が詰めかけた。ケネディ家は今もアメリカで絶大な人気がある。彼女が動けば、メディアが動く。もともと親日家であるケネディ氏である。彼女の日本への理解が、正しい日本の姿をアメリカに伝え、日米の連携をさらに強固にしてくれる。

中国は力をつけてきた武力を背景に、「海洋強国」を国家戦略として掲げ、海洋資源や海上輸送路の確保を目指している。中国には「真珠の首飾り戦略」というのがある。東シナ海からインド洋、アラビア半島にいたるシーレーンを確保する戦略である。さらには西太平洋からインド洋までを掌握したいという野望もある。尖閣諸島への侵略は、第2列島線への突破口に過ぎないのである。加えて政権維持のために、内政面からも対外的に強硬に出ている。そんな状況下で、今回の防空識別圏の設定は、空軍がその存在感を示したかったのではないだろうか。しかしこの暴挙は、周辺国との摩擦をさらに深刻なものにし、経済発展で国民の所得倍増を目指す習政権としては、自分で自分の首を絞めることになりはしないか。だが中国は「誤った大国意識」から目を覚ます気配はなさそうだ。日本は早急に憲法を改正し、自立した国家として、領土、領海、領空を守り、アメリカ及び東南アジア諸国との連携を深め、東アジアの安定に寄与することが求められている。


随筆のページへ トップページへ

2013/11/29 ケネディ駐日大使・初講演
ケネディ大使は、11/27東京都内で就任後初めての講演を行った。この講演で、中国が尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定したことについて、「地域の緊張を高める」と強く非難した。また、日本はアジアで最重要の同盟国とし、「日本版NSC」の創設を支持し、「日米安保政策の進展」を歓迎する意向を示した。