集団的自衛権・越年へ 随筆のページへ

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File No.130925

数日前の新聞で「集団的自衛権・越年へ・与党協議先送り」という報道があった。まことに残念である。安倍首相は、有識者懇談会を再開し、年内にも集団的自衛権の行使容認に踏み切りたい考えだった。これで年内にまとめる「新防衛大綱」への記載はなくなった。「防衛大綱」は、今後10年ほどの防衛力整備の方針を定めるものである。中国の軍事的台頭とともに、東アジアの安全保障環境は劇的に変化してきている。その一方でアメリカは、防衛費削減などで、アジアでのプレゼンスが懸念される状況にある。今こそ同盟国や友好国の協力が求められる時である。一国が反対すれば機能しない国連軍など当てにできない。国の独立を守るためには、関係の深い国同士が、お互いに守り合わなければならない。そうすることで相対的な軍事力が増し、戦争を抑止する効果も大きくなる。安保法制懇が検討課題に挙げている集団的自衛権の適用範囲の「同盟国の米国に限定するか、他の関係の深い国に拡大するのか」は、エネルギー安全保障の観点からも"他の関係の深い国に拡大する"方向が望ましいと考える。

集団的自衛権の解釈変更が先送りになったのは、公明党の慎重な姿勢によるものである。公明党の山口代表は「国内の考え方のみならず、同盟国や近隣諸国の見方も合わせて考える必要がある。短兵急な議論ではなく、国際社会と共存するにはどうすべきか、先々を見据えた視点で考えなければならない」と話した。この発言からすると、与党内での合意はかなり厳しいように思われる。何とも悩ましい話である。今年初めに起きたアルジェリア人質事件は、自衛隊の在外邦人救出の要件緩和のきっかけをつくった。保護対象者を拡大し、車両による輸送も追加された。自衛隊の任務は拡大し、その分危険も増した訳だが、この時も公明党の慎重な姿勢によって、武器使用基準の緩和は見送られた。つまり相変わらず、身に危険が及ばない限り武器の使用は許されず、輸送が妨害されても警告射撃すらできないのである。このように与党内では、憲法解釈が絡むと合意ができないということの繰り返しである。何とか歩み寄ってもらいたいものだ。

上で述べた「武器使用規定」であるが、これは自衛隊法第95条の「武器等の防護のための武器使用」に基づいている。西修著「憲法改正の論点」(文春新書No.929)に、一つの例が書かれている。場面設定は「ある集団が自衛隊基地内の武器・弾薬を略取する目的で部隊を襲撃した」という場合である。
某集団によって、武器・弾薬の略取を目的としていることが認識されたら、自衛隊の部隊がまず最初にやらなければならないことは、基地内の武器・弾薬を退避させることである。武器・弾薬を退避させるまで武器の使用をしてはならないからである。退避によっても、その防護が不可能であると認定される場合のみ、武器を使用できるが、武器を使用できるのは、職務上武器等を警護する任にある自衛官のみである。その場に居合わせた他の自衛官は、たとえ武器を保持していても、武器を使用することができない。・・・・その集団が武器・弾薬を略取して、基地外に逃走したら、武器を使用することができない。・・・・
これを読んで腹の立たない人はいないはずだ。護憲派はあまりにも現実とかけ離れたこの規定も変えてはならないというのである。今回の安保法制懇の検討課題の中に「マイナー自衛権」というのがある。これは「テロ集団による攻撃や武装漁民が離島を占拠するなど、日本が武力攻撃を受けたとまではいえない事態への対応」という問題である。自衛官(海上保安官も同じだが)は、法の不備を一身に受け止め、苦悩し、命を削りながら任務に当たっている。集団的自衛権の容認とともに、自衛隊法も現実に則したものにしてほしい。

先日のテレビ番組「ウェークアップ・プラス」で集団的自衛権を取り上げていた。その中で橋本五郎氏から『自衛隊が違憲の存在であると、憲法学者の7割以上がそう思っている』という発言があった。これについて自民党・石破幹事長が、憲法9条第2項についてこういう発言をした。『2項は個別的自衛権はよくて、集団的自衛権はだめとは読めない。つまり、国の交戦権はこれを認めないということであるならば、それは個別的だってだめでしょ』。これに対して辛坊キャスターは『確かに、2項を読んで自衛隊が持てるという解釈に比べれば、集団的自衛権が持てるという解釈変更の方がよほど・・・・』。
因みに9条第2項は次の通りである。
前項の目的を達成する為に
陸海空その他の戦力は、これを保持しない
国の交戦権はこれを認めない
つまり自衛隊は最大の違憲であり、護憲派は自己矛盾も甚だしいということである。護憲派には憲法解釈に難癖をつける資格はない。だがもう議論は結構だ。外交の基本は「こん棒を持って、静かに話し合う」である。軍事力の均衡が、外交の裏付けであり、それによって平和が保たれる。今まさに結論を出して、しっかりとした法的裏付けをする時である。侵略しようとする相手国の顔色を伺っているばかりては領土と国民は守れない。


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2013/11/23 自衛隊邦人輸送、携行武器制限撤廃へ
政府は、自衛隊の海外での邦人陸上輸送について、自衛隊員が携行できる武器の制限を撤廃する方針を固めた。これを閣議決定すれば、今後派遣先の治安状況に応じた武器を携行できる。これまでの小銃などの小火器に加え、テロ攻撃が発生する危険のある国では「無反動砲」の使用も可能となる。

2013/10/03 日米2プラス2、防衛協力指針17年ぶり改定へ
安全保障協議委員会(2プラス2)が日本で開催された。日本からは岸田外相と小野寺防衛相、アメリカ側からはケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が出席した。日本で4閣僚がそろって2プラス2が開催されるのは初めてのことだという。
共同文書では、アジア地域の安定に「日米同盟が引き続き不可欠な役割を果たす」として、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を2014年末までに改定するとした。ガイドラインは、有事の際に自衛隊とアメリカ軍の役割を定めるものである。集団的自衛権が容認されれば、ガイドラインの内容もそれに沿ったものになる。集団的自衛権の解釈見直しに対して「アメリカは取組を歓迎し、日本と緊密に連携していく」という表現も入った。さらに強引な海洋進出を進める中国を念頭に、「尖閣諸島は日本の施政下にあり、日米安保条約の範囲内である」との確認もされた。
ケリー国務長官は「今回は歴史的会合です。日米同盟が近代化する重要なステップを踏めると確信している」述べ、 岸田外相も「本日の2+2を一つの節目と位置づけ、日米同盟の強化につなげたい」と述べた。政府関係者は「日米安保体制は新たな段階を迎えた」と話す。