純国産哨戒機・P1 随筆のページへ

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File No.130330

昨日(3/29)、新型哨戒機P1が、厚木航空基地に配備された。海上自衛隊は現在P3C哨戒機を約80機保有しているが、最初の配備から30年以上が経過し、老朽化のためすでに退役が始まっている。今後P1配備の進捗に合わせてP3Cとリプレースし、最終的にはP1を70機配備する予定である。このP1は2001年から国内の企業が総力を結集し、開発してきた国産の哨戒機である。川崎重工業が主契約企業であるが、それぞれの分野を国内の大手企業が分担し製作している。それはエンジンのIHIをはじめ、三菱重工(中胴・後胴)、富士重工(主翼・垂直尾翼)、東芝(搭載レーダー)、日本電気(音響処理装置)、三菱電機(自己防御装置)といった日本のトップ企業群である。それらの企業から、延べ1800人の技術者が参加したというから、文字通り純国産技術によるジェット機である。哨戒機の開発は、日本の航空業界長年の希望だったというから、今回の量産機の配備は喜びもひとしおだろう。

日本の技術の粋を集めたジェット機であるから、当然その性能はP3Cを上回る。P3Cがプロペラ機であるから当然かもしれないが、巡航速度と最大速度とも約1.3倍、実用上昇限度も8、600m→13、520mと大幅に向上している。レーダーや赤外線カメラの能力、人工知能を搭載し潜水艦探知能力も向上させている。操縦系統では、搭載している電子機器からの電磁波の影響を避けるために、光ファイバーを通して制御するシステムを採用している。これは「フライ・バイ・ライト方式」といって、実用機としては世界初だという。武装は、空対艦ミサイルを8発搭載でき、ほかに対潜爆弾など9,000 kg以上が搭載可能になっている。多くの点で高い能力を有し、哨戒機としては世界最高の性能を持っている。アメリカが現在開発しているP−8よりも優れた性能であるというから、日本の技術力の高さを世界に示すものである。

近年戦闘機の開発などは費用が高騰し、複数の国による共同開発が主流になっている。日本の次期主力戦闘機「F−35」も例外ではなく、この最新鋭ステルス戦闘機の製造には米を主体として9カ国が参加している。ところが日本は従来から「武器輸出三原則」がネックとなって参加ができなかった。これを「F−35」の部品については例外扱いとし、日本企業の参入を容認することになった。緩和の目的の一つが「わが国の防衛生産および技術基盤の維持、育成、高度化に資する」である。日本の戦闘機の製造は、F−2の調達終了で終わり、今後の技術基盤が失われることが危惧されていた。技術というものは人から人へと受け継いでいくものである。日本のH−2Aロケットが、このところ16連続打ち上げが成功している。これは現在、N−1、N−2、H−1の開発に携わった人たちが運用しているからである。世界最高性能のP1を造った技術も、F−2を造っていた技術も、維持し続けなければ失われてしまう。

中国は先ごろ開催された全国人民代表大会で、「中国海警局」をつくり、「海洋強国化」を打ち出した。尖閣諸島はもとより、南沙、西沙を中国の「核心的利益」として侵略しようとしている。ところが中国は「国防力強化は地域のさらなる安定と平和に有益である。中国の国防政策は、平和的かつ防御的で、他国を脅かすものではない」などとアホなことをほざいている。中国政府の活動報告書は「国家の海洋権益を守っていく」だから、間違いなく尖閣を取りに来る。つまり、尖閣を取るまでこの侵略行為は続く。そのための大型警備船の投入、空母やフリゲート艦の建造と着々と進めている。こんな中にあって、レベルアップした純国産哨戒機P1の投入は大きな意味を持つ。海自航空集団司令官は「安全保障環境を踏まえれば、各種兆候を早期に察知するための警戒監視活動は極めて重要だ」と訓示した。運用試験を終え、一日も早いP1の戦力化が待たれる。



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