いとしま サイエンスキャラバン
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先日、"九大・糸島会"が開催した「いとしまサイエンスキャラバン」に行ってきた。「九大・糸島会」とは、九大が伊都キャンパスへの統合移転を機会に発足したもので、九大と糸島地域の交流を目的としたものである。今回は「宇宙のはじまりと今〜最先端科学で宇宙を考えよう!」というテーマで、講演内容は「宇宙図2013」と「国際リニアコライダー」だった。会場は満席で、糸島市民の科学に対する関心の高さを感じさせた。質問コーナーは、入場時に配られた質問票(ポスト・イット)に記入し、休憩時間にホワイトボードに各自が貼り付けていくという方法だった。手を挙げて質問というと、せいぜい2〜3人だが、今回は50数件の質問が出された。特に子供たちが積極的に貼り付けにいっていたのが印象的だった。
講演の資料として「宇宙図2013」が配布された。宇宙図は前回、2007年版が発行されたが、最新の内容で2013年版が発行される。これを見ると、「宇宙の誕生」のところに「無のゆらぎ?」と書いてある。最新科学でも「?」なのである。ものの本によれば、一般相対性理論の宇宙の始まりである「特異点」は、物理学の計算では破綻してしまうという。そこで「量子論」による「不確定性原理」で「無のゆらぎ」という仮説が考えられた。極微の世界では、他からのエネルギーが無くても、一瞬であればエネルギーが存在するという。その空間ではエネルギーは"ゼロ"のままでいられない、つまり"ゆらいでいる"状態にある。現れては消えていた小さな宇宙のひとつが、ある瞬間、対消滅せず、我々の宇宙として誕生したのである。
宇宙図2013(部分)
「無のゆらぎ?」
話は違うが、先日TVQの「宇宙ニュース」で「宇宙エレベーター」の話題を放映していた。宇宙エレベーターは、次世代の宇宙輸送手段として、50年後の試験運用を目指している。先日開かれた第5回の学会では「だからできない!宇宙エレベーター」と、本格的に実現に向け、踏み込んだ内容の討議だったようだ。宇宙エレベーターは、日本が発見したカーボンナノチューブという新素材で一気に実現への階段を昇りはじめた。地上36,000mの静止軌道上の人工衛星と地球上をカーボンナノチューブで繋いで、そこを昇降機がモーターで上下するというものである。完成すれば、ロケットに比べ、100倍以上の輸送能力が実現する。人類は、宇宙の始まりは「?」でも、地球の周辺はほぼ手に入れたも同然である。
さて「国際リニアコライダー」である。ILC自体のことは前にも書いたので省く。問題は、九州に誘致できるかどうかである。2年ほど前の随筆「パラレルワールド」では「その経済効果は大きく広がる。両県(福岡県と佐賀県)は熱意をもって取り組むべきだ」と書いた。去年の7月にも随筆「ヒッグス粒子」で、「もっと積極的に、具体的に動かないと厳しいと思うが・・・」と書いた。そして今年になって、ようやく「ILCアジア〜九州推進会議」が発足した。会見では「研究会だけでは活動が不十分だったと反省している」と言っていたから、自覚はあるようだ。純粋に科学の研究を考えた場合、九州の環境の優位性は圧倒的である。さらに「サイエンスキャラバン」の反応でも分かるように、市民の科学に対する意識は相当高い。後は推進会議の熱意と、政治力である。



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活発だった質問コーナー

配布された宇宙図2013」


2013/04/19 JAXA「イカロス」チーム・文科省科学技術賞受賞
2010年に打ち上げられた「イカロス」の研究チームが、科学技術賞を受賞した。「イカロス」の世界初小型ソーラー電力セイル実証機としての研究成果が認められたものだ。その評価する意義は次の通りである。
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、 その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、 もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的とする科学技術分野の 文部科学大臣表彰を定めている。
表彰を受けた三人とも30歳代という若さである。