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File No.130228

テレビ番組で「中居正広の怪しい噂の集まる図書館」というのがある。最近よく放映しているのが「美文字大辞典」シリーズである。タレントたちが、出された10文字程度の題を制限時間内で書く。それを先生が一文字ずつ採点し、合計得点で美文字、普通文字、汚文字でランキングするというものである。最近では、タレントが書いている姿勢を見ただけで、ある程度の予想がつくようになった。採点と指導をしているのが書家の中塚翠涛先生である(美人です)。この先生が監修した「30日できれいな字が書けるペン字練習帳」は、すでに第5弾まで出版され、90万部を超える売れ行きだという。書家であるから、字がきれいなのは当たり前だが、感心するのはボードに書くときの姿勢である。テレビであるから、手元が見えるよう斜め上からの体勢で、かつ中腰、太いマジックインキでと、かなり悪条件ながら、寸分たがわぬ見事な字を書いていく。素人は妙なところで感心する。


きれいな字が、次々と書かれていくと、自分もしっかりした「楷書」で書いてみたいという衝動に駆られる。という訳で、最近はノートするとき、極力楷書で書くように心がけている。だが、文房具ファンとしてはまず、ボールペンとノートにはこだわりたい。楷書のためのボールペンであるが、私の手には、ぺんてるの水性ゲル"ハイブリッド・テクニカ(KFGN5)"がしっくりきている。次にノートであるが、いろいろ検討した結果、ナカバヤシの"スイング・ロジカルノート"にした。このノートは一行が3分割されており、漢字は一行フルに、かな文字は3分の2の大きさで書くのにぴったりだった。これで大小のリズム感を心がけて書ければと思っている。さあこれで準備は整った。だが、ついついこれまでの象形文字とまで言われたクセが出てしまう。書き終わって見返してみると、個々の文字の安定感、全体としてのまとまり感みたいなものが無い。慣れるまでの道のりは長いが、それでも少しながら楷書で書く"心地よさ"みたいなものを感じている。

もう一つ最近のテレビ番組でよく観ているのが「プレッシャーバトル!漢字書順トーナメント」である。これはタレントがトーナメント形式で、まちがいやすい漢字の筆順を、一画づつ書いて勝ち抜いていくというものである。この番組は、私よりむしろ日見子が熱心に見ている。テレビ番組「ネプリーグ」の書き問題で、漢字としては合っているが、驚くような筆順で書いているタレントを見かける。ところが、書き順トーナメントを観てると、他人の事を言っている場合ではない。自分の誤りに気づかされることが度々ある。結局「漢字筆順ハンドブック」(江守賢治著、三省堂発行)を買ってきた。番組で正しい書き順を教えてくれているのが、書道師範・涼風花先生である。問題に出された漢字を書いている様子が映される。師範の先生に対して大変失礼であるが、これが実に見事である。一文字、一文字、先生が書いた文字を観ては、"いいね、すごいね"を連発している。



中塚先生にしても涼先生にしても、ホームページを見ると、芸術的な文字を書いているが、テレビでは、あくまでも基本が大事、楷書がきちんと書けないとだめ、と教えているように思える。「漢字筆順ハンドブック」を読むと、「筆順は、長い間の筆写の習慣によってだんだん固まってきた順序である。従って、これらの筆順どおりに書けば筆の運びが自然で整った美しい形に書くことができる」とある。中塚翠涛先生もボードに手本を書くとき、次の一画へ行く時のペンの運びを、点線で書いている。つまり、漢字を書くには"流れ"が大切であることがわかる。ただハンドブックでは、「筆順は必ずしもひとつとは限らない」として、可能な筆順を複数表示している。たとえば「上」であるが、縦棒からでも、短い横棒からでもいいとしている。私は横棒から書いている。ということでテレビを見ながら、日見子と勝った負けたと騒いでいる今日このごろである。

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