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File No.130227

先日、ロシア中部に落下した隕石は、NASAの分析によると、直径が17m、重さ1万トンだったという。この隕石が秒速18km(時速64000km)という猛烈なスピードで突入し、地上付近の濃い大気との摩擦で強い衝撃波を発生させた。落下の瞬間をとらえた写真を見ると、ほぼ水平に横切っている。その侵入角度が浅かったことが100kmという広範囲にわたる被害をもたらした。1200人という人的被害はこれまでになく、被害総額も30億円以上にものぼるとみられている。隕石落下、ところ嫌わずである。当然日本にも降ってくる。福岡県・直方(のうがた)市の須賀神社に落ちた隕石は、現存する隕石では最古(平安時代・861年)だという。大きさは、人のこぶし大で「直方隕石」と呼ばれ、今も神社に保存されている。今回のような大きな隕石は希であるが、年間数千個から一万個くらいは降っているというから、一日数十個は地球のどこかに降っている。

先日「笑っていいとも」の緊急企画で「隕石」を取り上げていた。出演した教授が、今回のロシアの隕石は、鉄が10%ということなので「Lタイプのコンドライト」ではないかと言っていた。番組に出演した隕石マニアの所有する隕石の分析結果では、ほぼ25%は地球に存在しない物質だった。宇宙からの飛来といっても、今回の隕石は火星と木星の間の「小惑星帯」から飛来したもののようである。この小惑星帯では30万個以上の小惑星が確認されている。ここから軌道をはずれたものが、地球に降ってくる訳だが、幸いなことに木星の重力によってかなり抑えられている。同番組に出演した科学雑誌「Newton」の編集部・部長は、隕石を扱った同誌の特集で、1.1km以上の小惑星が、地球に落ちるかもしれない確率は、2880年以上先に、0.33%と予測していた。もし木星無かりせば、それこそ雨あられ状態で降り注ぎ、あるいは我々人類は存在していないかもしれない。

ブルース・ウィリス主演で「アルマゲドン」(1998年)という映画がある。この映画では、テキサス州に匹敵するほどの巨大な小惑星が、時速3万5千キロで地球に迫ってくる。もし衝突したら、地球は壊滅する。映画では衝突した場合の状況を、こんな風に説明をしていた。「小惑星本体が太平洋に落下すると、一瞬で海水を沸騰させ、海底に激突する。そして高さ500mの津波が、太平洋を時速1600kmで突っ走り、西海岸からコロラドまで呑み込む。日本もオーストラリアも消滅、人類の半分は焼死し、残りはその後の氷河期で凍死する」。地球に残された日数は18日。「衝突回避のあらゆる方法を検討するんだ。NASAの存在意義を示せ」と必死で方策を探る。核爆弾150発を表面に撃ち込んだところで何の効果もない。そこで実行されたのが、小惑星に240mの穴を掘り、核爆弾をセットして内側から爆破しようというものである。掘削のプロが集められ小惑星に向かう。

この映画の中で出された案の中にこういうのがある。「帆を張った宇宙船です。帆は薄いフォイル製、太陽風で進みます」。それは日本が3年ほど前に世界で初めてソーラー・セイルを成功させた「宇宙ヨット・イカロス」のアイデアである。「もっと現実的なアイデアを出せ!」と一蹴されるが、現実の世界で小惑星の軌道を変えるための方策として検討されている。他にも、NASAの「ディープ・インパクト計画」など映画の世界のようなことが実際に行われようとしている。そのためには小惑星の動きを、把握しなければならない。地球に衝突する可能性のある天体を観測しているのが「スペースガード」である。この24日に「日本スペースガード協会」は、隕石による被害予測をするため「小惑星衝突情報センター」を新設することを決めた。この観測体制の強化によって、直径10m以上の隕石落下を、2日前までに予測する体制をめざすという。こういう地道な努力によって、宇宙の脅威から守ろうとしている人たちには頭が下がる。



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