国際リニアコライダーを九州に 随筆のページへ

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File No.121114

先日、糸島市役所で「国際リニアコライダーでヒッグス粒子の謎を解く!」という講演会が開催された。第1部では科学的見地から、第2部では都市基盤の優位性や波及効果などについての講演があった。会場は満席で、講演終了後の質問も活発に行われ、糸島市民の興味の高さを伺わせた。科学的見地からの講演は、原子、分子、クオークなど、基礎的なことから、宇宙の成り立ち、ILCの研究の意義に至るまで、我々市民にもわかりやすい講義だった。ヒッグス粒子は、標準理論最後の素粒子である。CERNが発表したヒッグス粒子とみられる新粒子の存在を示すグラフが示された。グラフでは、小さな凸が認識でき、これがヒッグス粒子であるとの説明だった。しかし、CERNの円形の加速器では限界があるようだ。今回造ろうとしているILCは、直線で素粒子同士を加速させ、衝突させる為、効率がよく、この小さな凸が大きく突出するほどの分析ができるという。


次に都市基盤の問題である。福岡はイギリスの「モノクル」という情報誌が毎年発表している「世界で最も住みよい都市25選」にランクインしている。"世界で12位"というところに注目したい。しかも、このところ毎年ランクアップしてきている。ILCに従事する人は数千人に及び、その家族を含め、関係者が世界12位の環境で豊かな生活を送ることができる。その生活基盤の充実はある意味、研究者たちが仕事に没頭するうえで最も重要なことかもしれない。もちろん構想に掲げられている「九州のポテンシャル」には、研究基盤、大学研究機関の集積、優れた交通アクセスなどその優位性は広範囲に及んでいる。ILCの立地条件は当然、そういった環境の良さのうえに立脚することが望ましい。その立地条件とは、地盤が固く、断層が少なく、湧水も少ないなどである。これについては、すでに国内はもちろん、海外の物理学者なども現地を視察し、適地であることが確認されている。立地条件や社会的条件を総合的に判断するなら、九州は最適な地であると思われる。

そもそもILCとは何か。「サイエンスフロンティア九州構想」の簡易版に、その概要が簡潔に書かれている。
ILCは、史上最大で最高エネルギーの電子・陽電子を衝突させる次世代加速器です。
全長約30km(将来計画は50km)を超える地下の直線トンネル内に、精密な高真空ビームパイプを設置します。
ビームパイプの一方から電子、もう一方から陽電子ビームを入射し、ほぼ光速まで加速して、中央部で正面衝突させ、ビッグバン直後と同じ高エネルギー状態を実現します。
この瞬間に発生する素粒子を測定・解析し、謎に包まれている宇宙の起源の解明に挑戦します。
万物の質量の起源とされる「ヒッグス粒子」や「超対称性粒子」などの未知の粒子の解明が最初の目的です。

国は、この期に及んでいまだ正式に誘致の態度表明をしていない。誘致にあたって大きな問題となるのが、その建設費である。8千億円といわれる建設費の半分は、建設国の負担となる。岩手県は支出の理由に「震災復興」を掲げる。しかし、岩手は何もないところに、一から造ることになる。「震災復興」は確かに耳触りがいい。だが、それは本末転倒と言わねばならない。あくまでも"世界の候補地と比べて、純粋にどちらに勝算があるか"である。誘致できなければ、まさに「取らぬ狸の皮算用」になる。日本が生きていく上で最も重要なのは「高度な技術力」である。誘致による直接、間接に波及する効果は絶大なものがある。建設費の負担を言うなら、復興予算を関係ないところに900億円が使われていた。会計検査院が指摘した11年度の税金の無駄遣いは、約5300億円である。とにかく世界に勝つ勝負をしたいものだ。その為には、一刻も早く態度を示さねば、元も子も無くなる。



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「サイエンスフロンティア九州構想」
---科学の未来に挑戦する国際研究教育特区---
報告書


平成24年3月

福 岡 県 ・ 佐 賀 県
社団法人九州経済連合会
九州大学・佐賀大学ILC推進会議

2012/12/06 「イカロス」が、2つのギネスに認定された
2010年5月に金星探査機「あかつき」と一緒に打ち上げられた、「太陽光帆船・イカロス」がギネス世界記録として認定された。認定された内容は次の2点である。
(1)「イカロス」は、太陽光の圧力で航行した世界初の宇宙ヨットである。
(2)「イカロス」本体を撮影するために放出された2機の小型カメラが、世界最小の小型衛星である。
「イカロス」は、現在も太陽を回る楕円軌道を周回している。今回の受賞を弾みに、後継機の検討も進められるという。