女性宮家創設問題 随筆のページへ

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File No.120429

今日は国民の祝日「昭和の日」、明日はその振替休日である。昭和の日は「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす日」である。だが、世の中は大型ゴールデンウィーク突入で、大方の国民は連休中の天気の方が気になっている。今日の新聞を見ても、国民の祝日としての記事など、どこにも見当たらない。わずかに「今日は昭和の日なので、昭和のヒット曲をひとつ・・・」を見つけたくらいである。そこで、あえてこの日に、国の将来に思いをいたす意味で、今問題になっている「女性宮家創設問題」を考えてみたい。この問題がクローズアップされたのは、去年の秋、宮内庁が皇族女子による「女性宮家創設」の検討を政府に要請したことに始まる。皇室典範第十二条によれば、女性皇族方は、結婚により皇籍を離れることになっている。今のままでは皇族が極端に少なくなり、皇室の活動に支障をきたす恐れがある。しかし、問題はこの女性宮家創設が、皇位継承問題に強い影響があると思われ、事は本質的な重大問題になっている。


まず「女性宮家創設」についてであるが、私は「賛成」である。現在、未婚の女性皇族が8人おられる。この女性皇族方が結婚され、皇籍を離脱されれば、将来、悠仁さまおひとりで、すべての皇室行事を支えることにもなりかねない。そうなる前にきちんと皇室典範の改正をしておく必要がある。皇籍を離れてしまわれてからでは遅い。ただ、皇位継承問題で、男系男子を主張する識者は、女性宮家創設は、女系天皇につながるとして反対している。その解決策のひとつが、結婚後民間人となられても、内親王などの称号をお持ちになることでご公務に当たっていただくという意見である。だが私としては、皇族という特別なお立場から、ご公務に当たっていただくことが自然ではないかと思う。宮家としてのご公務と、尊称によるご公務は自ずと違ってくるのではなかろうか。皇族が悠仁さまお一人になるような事態を考えれば、女性宮家の創設は適切と思う。


さて、最も重要なのは皇位継承問題である。男系男子を主張する識者いわく、女系天皇は、我々世間の浅はかな感情による問題とは次元が違う。日本の皇位は神武天皇以来125代にわたり「男系」によって継承されてきた。それは日本が世界に誇ることであり、「女系天皇」は、その歴史を否定することだと言っている。そこで「男系」維持派の案のひとつが、旧皇族の復帰である。戦後、GHQにより、天皇のご兄弟以外は、臣籍降下させられた。その旧宮家の中には、現在未成年の男子が三人いらっしゃる。その方々に復帰いただくというものである。しかし、考えてみれば戦後、臣籍降下の時点で、誰が今の危機的状況を予想しえただろうか。臣籍降下した11宮家ですら、すでに絶家となったり、現当主で断絶する宮家が6宮家もある。しかも、現在では側室制度が廃止されている。仮に未成年の男子を復帰あるいは養子に迎えたとしても、「安定的な皇位継承」の根本的な解決にはなりえないと思われる。


今回の女性宮家創設問題が浮上したことで、「男系」の意義をあらためて認識した人も多いだろう。これまでの2000年間、第一に神武天皇以来の血を継いだ方、第二に男系、第三に直系が望ましい、として皇位を継承してきている。それが日本としての伝統・文化の基本であることを考えれば、その歴史はやはり大事にしたい。男系を守っていくことを最優先とし、そのための方法として、旧宮家の復帰も検討する必要があるだろう。あるいは、旧宮家の男子と女性皇族のご結婚という意見もある。禍根を残さぬよう、あらゆる可能性を模索しておきたい。しかし、今の規定をあまりに厳格に守るがゆえに皇統が途絶えては、本末転倒である。現状を見るに、今言われる男系維持方策だけで安定的な皇位継承が確保されるとは到底思えない。やはり、皇室の将来を見据えれば、男系男子の維持に加え、最後の砦として女性・女系天皇を認めておくことも必要かと思う。



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