西鉄・1日フリー乗車券で
福岡・歴史散歩
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ONE DAY PASS
西鉄では去年から一年間期間限定(※延長決定)で「にしてつ電車・バス共通1日フリー乗車券」を発売している。西鉄の電車とバスが“エリア限定”ではあるが、1日乗り放題である。期間終了を前に、この乗車券を使って「福岡・歴史散歩」を楽しんだ。1月18日西鉄福岡駅に着いたのが、朝7時過ぎだった。ところが何やら騒々しい。朝6時半頃、平尾駅で人身事故があったらしい。繰り返し、お詫びと状況の説明がアナウンスされている。だがとりあえず「フリー乗車券」を買って、ホームに待機していた電車に乗った。この花畑行きは、本来6時38分発の急行だったようだが、動き出したのが8時10分だった。私が乗ってからでも待つこと1時間、やっと出発進行である。事前の計画では、最初に久留米まで行くようにしていたが、ダイヤの乱れも気になるので、まず二日市で降りて「大宰府・客館」跡を見ることにした。今日の予定の中でも、ここだけは絶対外せない。

西鉄電車・運行状況の案内


去年暮れ、この「大宰府・客館」発掘について、メディアでかなり報道していた。場所は西鉄二日市駅のすぐ北側で、大牟田線と太宰府線の分かれるところにある。遠いので現地説明会には行けなかったが、その時の説明資料が、フェンスに掛けてあった。この客館は大宰府条坊内にあり、奈良時代から平安時代にかけての約100年間、外国使節の接待に使われた。それは丁度、平城京に「造客館司」が置かれた732年から、平安京の東鴻臚館が廃止された839年の約100年と一致する。「延喜式」にも、大宰府政庁の「客館」は記載されているという。新聞に載っていた航空写真をみると、朱雀大路沿いの条坊中央部というのがはっきり分かる。外国使節団の受け入れには、中央にお伺いを立て、指示がくるまで、かなりの期間を要する。正倉院に所蔵されているのと同じ型の高級食器なども出土している。外交の場として、かなり丁重に接待したことがうかがわれる。存在した時期は福岡の「鴻臚館」と重なるが、鴻臚館で受け入れた使節団の中で、許されたものが「客館」に招かれたという見方もある。今後の調査を待たないといけないが、条坊内の客館ということからすれば、納得がいく考えである。太宰府市は、国の特別史跡の申請をする。
大宰府・客館跡

遺跡の説明


電車のダイヤは乱れていて、駅員さんは“ダイヤ表”片手に、ホームに立っていた。それでも順次列車は運行され、間もなく来た列車に乗って久留米を目指した。久留米駅では「遅延証明書」を配っていた。久留米駅は、駅舎の1階にバスセンターがある。待っていたバスに飛び乗って、石橋美術館に向かった。時間に余裕があれば、国史跡装飾古墳である「日輪寺古墳」も見たかったがとりやめ、できた若干の余裕を美術館でゆっくりすることにした。


西鉄・二日市駅


5000形で久留米へ
西鉄久留米駅・遅延証明書
バスで石橋美術館へ

石橋美術館

美術館内休憩室から日本庭園を楽しむ
石橋美術館には、開館時間である10時に入館。「もっと知る美術・展(エピソード編)」という展覧会があっていた。この企画は「作品や作家にまつわるエピソードを軸に、石橋美術館のコレクションを楽しく紹介する」というものである。久留米からは、青木繁、坂本繁二郎など有名な画家が出ている。作品は青木繁の「海の幸」、岸田劉生の「麗子像」などのほか、坂本繁二郎、黒田清輝、藤田嗣治などの作品160点が展示されていた。私の注目はやはり青木繁である。石橋美術館は、青木繁の作品を多く所蔵している。「海の幸」「わだつみのいろこの宮」「海」などの作品が展示してあった。「海の幸」は、当時としては相当インパクトのある作品だったろう。神話の純粋な世界に魅せられ、いい作品を描いたが、反面久留米に帰ってから、食べるために描かざるをえなかったのはつらかったろう。「補筆あるいは描き直し」のコーナーに展示されていた「大穴牟知命」(青木繁)では、“X線透過写真”が横に展示してあった。それでは右側の女性が男性の方を向いていた。貴重で興味深いものだった。帰りに「海の幸」と「わだつみのいろこの宮」の絵ハガキを買って美術館を後にした。
西鉄・甘木線にフリー乗車券が使えれば、久留米から甘木に行き、その後一旦宮の陣まで戻って、小郡へ行くのだが、順序を逆にして三国が丘の九州歴史資料館を目指した。

西鉄 三国が丘駅

九州歴史資料館
九州歴史資料館は、もと九州国立博物館の横にあったが、三国が丘へ移転してきた。訪問してみて、その立派さにびっくりした。駅から館までの道をゆっくり散策するのもよさそうだ。常設展示では「歴史(とき)の宝石箱」として多くの文化財が展示されていた。九州の歴史や文化が時代ごとに紹介されている。私としては、客館跡発見などもあり、大宰府に関する資料をじっくり観てきた。大宰府は、奈良・平安時代、律令国家のもと、地方の支配体制では最大の役所だった。その統括範囲は九国二島(※)と、九州一円に及んだ。さらに中国や朝鮮に近く、外交の窓口であると同時に、軍事的にも防衛の最前線として重要な役割を担っていた。特に、白村江の戦いに敗れた時、水城、大野城、基肄(きい)城などを築き、防衛体制も確立されていった。館では所蔵品の説明用に「展示解説シート」を用意している。これは実にありがたい。家に帰って、一冊の本にした。

(※)九国二島→筑前・筑後・肥前・肥後・豊前・豊後・薩摩・大隅・日向・壱岐・対馬

三国が丘から、一旦小郡まで戻って、小郡駅近くにある「小郡官衙(かんが)遺跡」を訪ねた。ここは国指定史跡で、官衙とは役所のことである。ここには7世紀から8世紀にかけて郡の役所が存在した。おそらく大宰府政庁の管理下にあったのだろう。大きくは3期に分けられ、それぞれの期の所在場所が表示してあった。「郡庁」建物を中心に、納税品を納める「正倉」、役人の宿舎などが確認されている。当時としては、代表的な官衙の配置だったという。

西鉄小郡駅と甘木鉄道小郡駅は、ほんの近くにある。甘木鉄道の車両では、小郡駅舎にも描かれている
卑弥呼をデザインした車両がいい。この車両は宝くじ協会の助成金で購入したもので、「宝くじ号」と書かれている。だが実際に乗ったのはAR300形だった。乗り込んで約20分で甘木である。

小郡官衙(かんが)遺跡

運賃310円を支払い
甘木鉄道で甘木へ

卑弥呼の里・あまぎ
(甘木鉄道駅前)
甘木歴史資料館
甘木・朝倉には貴重な弥生時代の遺跡が多くあり、遺跡の宝庫と言われている。その代表が「平塚川添遺跡」である。環濠を幾重にも巡らし、柵列や物見台や祭殿など、邪馬台国の時代を彷彿とさせる。平成13年には、国史跡に指定された。係員の説明によれば、周辺台地にまだまだ大きな発見の可能性を秘めているという。他にも朝倉橘広庭宮で崩御された斉明天皇を仮に葬った陵墓やもがりが行われたという場所などもある。朝倉の人たちは、残してもらった豊かな遺産を大事に守っている。

西鉄バスで
西鉄・朝倉街道駅へ

太宰府天満宮

スターバックス・太宰府天満宮表参道店
時間も午後4時を過ぎ、最終行程である。甘木から、バスと電車を乗り継いで、太宰府へ向かった。残念ながら九州国博の時間には間に合わなかった。到着したら、まず天満宮に参拝である。学問の神様なので、時期的にも参拝する人が多い。参拝を終え、一休みするのに、1ヶ月ほど前にオープンした「スターバックス」に寄ってみた。ここはオープンを前に、新聞やテレビがかなり報道していた。デザインは有名な建築家・隈研吾氏によるものである。天満宮の表参道に相応しく、杉材2千本を使い、日本の伝統的な木組み構造になっている。さて、これで今日の歴史散歩は終了した。福岡駅に着いたのは午後6時だった。

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2012・02・12 西鉄「1day pass」利用範囲拡大し、期間延長
平成24 年2 月10 日(金)〜平成25 年2 月9 日(土) 1 年間
〔料   金〕大人2000円
〔西鉄電車〕天神大牟田線 福岡(天神)駅〜柳川駅間( ※太宰府線、甘木線含む)
〔西鉄バス〕利用エリア 福岡・久留米・佐賀・筑豊地区を運行 する一般路線バス
        福岡シティループバス 「ぐりーん」
        ※高速バス、特急バス、コミュニティバスは除く

アンダーライン部分が前年度からの変更箇所。料金は1500円から2000円になったが、電車では、久留米〜柳川、甘木線が適用拡大、バスでは福岡シティループバス 「ぐりーん」が適用拡大になっている。