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File No.111017

今、福岡県では「ふくおか県民文化祭」が開催されている。今年度のテーマは「文化を紡ぐ、未来を創る」である。平成5年から毎年開催されている。その目的は「文化芸術を鑑賞・参加・創造する機会を提供し、文化活動の裾野の拡大や新しい県民文化の創造と発展を図る」である。そんな中、今年も「今津人形芝居」(福岡市西区・今津校区)が開催された。今年は15年記念公演として、例年の今津小学校での本公演に先立ち、西部地区交流センター「さいとぴあ」大ホールでの「前公演」が行われた。私も今年は「さいとぴあ」の記念公演を観に行ってきた。この公演の中で、今津人形芝居保存会恵比須座に対して、公益財団法人伝統文化活性化国民協会から、「地域伝統文化功労者」の表彰式が行われた。福岡市では初めての表彰だという。


私は以前、このホームページの「写真館」のコーナーで次のような写真と記事を掲載した。
今津人形芝居 (福岡市西区今津)
福岡県指定無形民俗文化財  2008/10/18撮影
伝統文化が受け継がれていくには、後継者を育てることが重要である。この今津人形芝居では、子供後継者による浄瑠璃や、今津小学校3年生による「傾城阿波鳴門」の上演など、その情熱が伺われる。現代の子供には、浄瑠璃の声を出すことはもとより、正座もままならない。そんな子供たちがわずか数ヶ月で見事な出来栄えを披露した。人形の操りや浄瑠璃の見事さに、会場からも惜しみない拍手が沸き起こる。この子供たちがやがて大きくなって、次の世代の子供たちを指導し、貴重な民俗文化を受け継いでくれることだろう。

伝統文化の難しさは「伝承」にある。その意味で今津小3年生の公演が毎年受け継がれていることは大きな意味をもつ。今回の表彰のあいさつの中で「昭和45年少年部を形成、それが今の中心メンバーである。すばらしい」と言っていた。そして、今年も3年生の子供たちが、見事な人形芝居を見せてくれた。演目は「傾城阿波鳴門」である。芝居の中で、母・お弓が、娘・お鶴と別れていく場面で「もう一度こちらを向いて」と泣き崩れる場面では、期せずして会場から大きな拍手が沸き起こった。それは、観客が子供たちが演じている芝居ということを忘れて、芝居そのものに感動した結果である。これこそ6月頃から夏休みも返上して一生懸命練習を積み重ねてきた成果である。聞けば、子供と一緒に浄瑠璃を語った方は、担任の先生だという。最初に台本を渡された時、不安だったそうだが「子供たちの一生懸命の姿、だんだん上手になっていく姿、そして今日の立派な演技で満足感でいっぱい、ほんとうにしあわせです」とあいさつされた。

公演に先立つ挨拶で、福岡市の26団体の無形民俗文化財のうち、12団体が西区にあり、その中の8団体が西部地区にあると言っていた。今回友情出演した今宿校区の「青木獅子舞」の歴史も古く、その起源は8世紀奈良時代まで遡る。当時怡土城(山城)が築城されたとき、その落成祝として奉納されたのが始まりという。こういう伝統文化を支えている地域の人たちには、並々ならぬ苦労がある。そうして受け継がれていく文化には、すなわちそれを支えている地域の安定した基盤が存在する。私の住む糸島地域には、多くの遺跡がある。今回の芝居の案内の中に、「今宿平野の前方後円墳」の地図と説明が入っていた。糸島には国宝レベルの豊かな歴史がある。そしてそれを支えてきた多くの無形民俗文化財がある。私がこの地を終の棲家としたのは、偶然ではあったが、実に幸運であったと言える。



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前公演平成23年10月15日
会場:西部交流センター「さいとぴあ」大ホール

演目
戎舞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(えびすまい)
恵比寿座
傾城阿波鳴門・・・・・・・・・・・・
(けいせいあわのなると)
今津小学校3年生
艶競里恋唄・・・・・・・・・・・・・・・
(つやくらべさとのこいうた)
南区人形浄瑠璃宣伝隊
艶容女舞衣(酒屋の段)・・・・
(はですがたおんなまいぎぬ)
恵比寿座
花鼓周〜和太鼓・・・・・・・・・・
(はなこしゅう)
周船寺校区・友情出演
青木獅子舞・・・・・・・・・・・・・・
(あおきししまい)
今宿校区・友情出演

「公益財団法人・伝統文化活性化国民協会」
[目的]この法人は全国各地における伝統的な歌、踊り、祭礼、工芸、茶道、華道、武道などの伝統文化の活動の支援、伝統文化活性化のための普及啓発、研修・交流、調査研究等を通じ、伝統文化の活性化を図り、もって、我が国の文化の向上に寄与することを目的とする。(同協会ホームページより)