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File No.110707

最近科学に関するニュースがいくつか報道された。その一つは「反物質1000秒超捕捉・宇宙の謎解明へ一歩」である。理化学研究所と東大などの国際研究チームが、反水素原子を1000秒以上真空中に閉じ込めて捕捉することに成功した。反物質は物質と出会うと消滅する。宇宙誕生時には同量あったはずの反物質がなぜ現在の宇宙には存在しないのか。今回の成功で、反物質の精密観測が可能になり、水素原子と比較することにより違いを見出せる可能性があるという。もう一つのニュースは「ニュートリノ変化検出・世界初"電子型"兆候」である。高エネルギー加速器研究機構などの国際チームが、世界で初めてとらえたのは、「ミュー型→電子型」の変化である。クオークの"対称性の破れ"と同じく、ニュートリノでも"対称性の破れ"があるという。ニュートリノは、他の粒子とほとんど反応せず、すり抜けてしまう。今回の実験では東海村からミュー型を発射して、約300キロ離れた岐阜のスーパーカミオカンデで電子型を検出している。こういう素粒子の研究というのは、地球をすり抜けるようなレベルの観測をしているのである。

去年暮れ、新聞で大きく報道されていたのが「宇宙誕生、脊振で解明・国際研究施設誘致へ」だ。脊振は福岡県と佐賀県の間にあり、東西50キロ、南北30キロの山系である。誘致しようとしているのは「国際リニアコライダー」(ILC)という実験装置である。ILCは地下トンネル内に全長30〜50kmに設置する次世代加速器である。両端から電子と陽電子を光速に近いスピードで衝突させ、ビッグバン直後の高温・高圧状態をつくりだし、発生した素粒子を観測する。脊振山系で計画されている加速器は直線である。これは円形の加速器と比べ、エネルギーのロスが少ない分、高エネルギーが発生させられるという。誘致に成功して、ここで観測した素粒子が、ダークマター(暗黒物質)の解明につながればこれ以上のことはない。九州の地で"宇宙"が解明されるのである。この事業は福岡県と佐賀県の共同事業で実施するようだが、地質調査に着手したかどうか、その後報道を目にしてない。誘致できれば、科学的な成果の期待と同時に多くの研究者や研究機関も誘致でき、その経済的効果は大きく広がる。両県は熱意をもって取り組むべきだ。

テレビドラマ「JIN」の最終回は、視聴率26.1%、瞬間最高視聴率は31.7%だった。年齢を問わず人気が良かった。私も最終回は、どんな結末を用意しているのか興味があってじっくり観た。南方先生のタイムスリップとパラドックスは、パラレルワールドということで説明していた。南方先生は、A世界から、B世界へタイムスリップ(ワームホール?)した。だからB世界は、A世界の歴史と少し違ってくる。先生が戻ってきたのはB世界の現代では、B世界の南方先生がC世界へタイムスリップして、パラドックスは回避される。幕末に南方先生が存在していた痕跡は、その時代にペニシリンや仁友堂が存在していたという歴史で確認できる。ところが、歴史の修正力によって、南方先生の存在は、関わった人たちの記憶から完全に消されてしまう。それに気づいた咲さんは、消えていこうとする記憶を必死に記録し、その手紙は橘未来の手で南方先生に渡される。「橘咲は、先生をお慕い申しておりました」という時空を超えての告白が切なく感動的だった。

私は、前々からパラレルワールドは存在せず、現在時点で修正した修正後の流れが本流になると思っていた。しかし、あまりにも簡単に、歴史が修正されるのを目の当たりにしていると、ひょっとして私が見ている世界は、あるいは仮想なのではないかとさえ思える。それほど、いとも簡単に世界を変化させている。「JIN」におけるB世界のように、A世界からコントロールできるのではないか。A世界は決定論で、設定された通りの歴史をたどり、B世界ではコントロールとコントロールがぶつかり合う。よーく観察していると、人の命でさえ実に簡単に扱われている。あたかも、今見ている世界は、物質(A)と反物質(B)の関係のごとく、普通だったら(A)、(B)同時に消滅するはずだが、場合によっては(A)が残るから(B)は消えてもいい、とでも言いたいような扱いなのである。別の言い方をすれば、支店は閉めても本店は全く問題ないようなものである。もしそうだとすると、B世界における「死」とはどういうものなのか、ますます興味が湧く。


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2015/10/07 梶田隆章氏・ノーベル物理学賞受賞
        ・・・・「人類の知の地平線を広げる研究」
梶田氏は、素粒子ニュートリノに、質量があることを発見した。ニュートリノには「ミュー型」「電子型」「タウ型」の3種類がある。このニュートリノが飛んでいる間に別の種類に変身してしまう「振動」という現象を観測し、ニュートリノに質量があることを実証した。今回の研究はニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」で行われたが、今後はさらに検出能力が20倍の「ハイパーカミオカンデ」の建設が検討されている。

2012/03/15 九大に素粒子研究班
九大は、理学研究院に「素粒子・原子核研究特区」という研究グループを4月に発足させ、素粒子の世界的研究拠点を目指すと発表した。将来のセンター化、国際共同研究への参加も視野に入れている。2月にはCERNに研究者二人を常駐させたという。大型直線加速器「国際リニアコライダー」(ILC)を福岡、佐賀県境の脊振山系に誘致する中心的な存在にする。いよいよ動き出した。大いに期待したい。


2011/07/11 高校野球とは
今日ネットのニュースを見ていたら、高校野球の兵庫大会で最多得点を記録したというのが目にとまった。これは「姫路工−氷上西」戦で「71−0」という大差で姫路工が氷上西を下したという試合である。ただ、私の目にとまったのは、点差ではない。
氷上西ナインは「気持ちが切れそうになったが『最後まで諦めるな』というスタンドの声援に支えられた」と戦い抜いた。
という部分である。
この炎天下、1イニング打者4巡となれば、守備は精神的にも、肉体的にも相当ハードであったろうことは想像に難くない。しかし、その折れそうなナインの気持ちを支えたのは、スタンドからの声援だった。
全国高校野球選手権は、本来それぞれの高校の部活動の延長線上にあるはずだ。全国からエリートを集めて、高校野球の名門と言われる学校もある。しかし、それは各県の大会を勝ち抜いて、県代表として全国大会に出場するというシステムからすれば、本来の意義から逸脱している。
何年か前、長崎県代表の清峰高校が優勝したことがあった。そのナインは全員長崎県出身者だった。文字通り県代表としての誇りをもって出場し、精一杯戦い抜いて優勝したのである。これこそ高校野球選手権の原点である。
毎日激しい練習に耐え、勝利を目指した結果、勝利すればそれに越したことはない。しかし、現実はそんなに甘くはない。敗北することから何を得るかもまた、部活動の重要な意義である。高校の学友や先生方が、ナインをどう迎えるかでその意義も決まる。
「気持ちが切れそうになったが『最後まで諦めるな』というスタンドの声援に支えられた」と、負けても精いっぱいであったことに大いに拍手を送ろう。きっと、「よくぞやり抜いた」と両手を広げてなんなが迎えてくれる。