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File No.110528

5月18日は国際博物館会議が1977年に制定した「国際博物館の日」である。今年は「博物館と記憶」がテーマになっている。その狙いは、人々の記憶を保存し、世界中の多様な文化を理解し守り、活用することで発見し考えるとしている。これに呼応して福岡でも博物館・美術館が「出会いの場」「知識の場」「発見の場」となるよう"福岡ミュージアムウィーク"が実施された。参加したのは「福岡市博物館」「福岡市美術館」「福岡アジア美術館」「福岡県立美術館」と、行政の枠を超えた4館の連携事業である。5/14〜5/29まで、常設展の観覧無料やスタンプラリーなど各館でイベントが行われた。先日、県立美術館の「示現会展」を観たとき、クイズで「大原美術館展」の図録をもらったのもこのイベントのひとつである。他にも西日本鉄道の「福岡シティループバス"グリーン"で巡るミュージアムガイドツアー」も実施された。このツアーは期間中に2回実施されたが、私は福岡市美術館が含まれているツアーに参加した。

ツアーは「福岡アジア美術館」から始まり、「福岡市博物館」、「福岡市美術館」というコースだった。それぞれの館で、ボランティアの人や学芸員さんが説明してくれる。普通聞けない話などを織り交ぜながら、作品の説明を聞くことができるのは貴重である。そこは本当に「発見の場」となる。ツアー終了後、私は福岡市美術館の「第42回 日展」(5/21〜6/12)も観てきた。日展は毎年欠かさず観ている。このところ毎回「日展アートガイド」を手に、作家たちが何を思い、どう表現しようとしたかを念頭に、じっくり観てまわるのが習慣になっている。美術は作家の考えを表現する手段である。現実を切り取って、一旦咀嚼し、作家の感性で形にする。構図の中に、主題を描き、心のゆらぎを描き、時の流れまでも表現しようとする。それはどんなに極めようとしても、ゴールのないマラソンである。あの葛飾北斎でさえ89才にして「90才からは再び画風を改め、100才になったら絵画の道を改革したいということだけを願っている」と言っている。

「日展アートガイド」は、今回のを含めて5冊(第38〜42回)持っている。このアートガイドの私なりの楽しみ方がある。それは今年印象に残った作家が、前にはどんな作品を制作していたのか。あるいは過去にインパクトを受けた作品の作家が、今年はどんな考えでどんな作品を出品しているのか。それが観れることである。たとえば、去年、私としては一押しだった佐藤哲さんだが、今年は「風韻(ふういん)」という作品を出品している。去年と同じように楽器と若い女性を描いている。今年も魅力のある作品に仕上がっている。39回で「荘川桜 情景」を出品していた稲葉徹應さんは、今年は「室内の情景」という作品で日展会員賞を受賞している。「水源の古樹」(特撰)の犀川愛子さんは、39回でもやはり同じ樹木と水をテーマに「春装上高地」(特撰)を出品している。稲葉さんも、犀川さんも、色彩が見事である。

展覧会を観終わった後、インパクトのあった作品の絵ハガキを、一枚だけ買ってくるようにしている。かなり迷ったが、今年は朝倉隆文さんが特選を受賞した「固定サレタ融合カラノ再生」(日本画)を買ってきた。朝倉さんのコメントは「・・・強く生きようとする人間の生命感を表現したく制作致しました。墨という素材で、再生をキーワードに詩情と物語性のある現代的な表現が出来ればと思って居ります」と書かれている。この作品を観ていると、何か心の中で、もがき、苦しみ、その中から這い上がろうとしている内なる力を感じる。そういう生命感は、谷口勇三さんの「時の位相」(工芸美術・)にもある。谷口さんは「・・・現在は過去からの延長線上の今であり、全体は一つ一つの集合体で成り立つ。成立に到るプロセスを大切なものとして、原素材の"土"を通して表現できればと思う」と書かれている。これらは私が、作家の思いに傾倒したという面もあるが、「美」とはある意味、作家の人生観そのものでもある。朝倉さんの言う"混迷し閉塞する現代"、福岡の人はもちろん、福岡を訪れる多くの人が"福岡ミュージアムウィーク"を楽しんでほしいと思う。



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(左)福岡ミュージアムウィークのパンフレット
(右)西鉄の福岡シティループバスのパンフレット

「第42回日展」のアートガイドと入場券


2011/05/15
ビクーニャと透明美色 県立美術館・展覧会のチケット 大原美術館展・図録

写真の台紙にしているのは
ビクーニャのバッグ

(上)今回の「示現会展」のチケット
(下)2009/10大原美術館展のチケット

今回賞品でゲットした
図録「名画に恋して」

福岡県立美術館で開催されている「示現会展」を観るため、久しぶりに天神に出かけた。今日が最終日でもあり、多くの人が来ていた。絵はみんな100号を超える力作ばかりである。ゆっくり時間をかけて観て回った。作品の中で「舞」という“文部科学大臣賞”を受賞した作品は見事だった。舞妓さんが舞扇を手に日本舞踊を踊っている姿だが、その凛とした表情とたたずまいに引き付けられた。この空気感こそが日本文化の原点である。自分の部屋に飾るなら、間違いなくこの一枚である。

4Fに行くと「ミュージアム・ウィーク」にタイアップして、クイズをしていた。記入した回答を受付に出し、それが正しければ“くじ”が引ける。正解だったので引いたら3等だった。賞品は2009年10月に開催された「大原美術館コレクション展」の図録だった。これは開催時、観に行った美術展なので、実に嬉しい賞品である!!!

美術館を出たら、やはり文具店めぐりは欠かせない。天神・ロフトに行くと「ぺんてる・ビクーニャ(3色や多機能)」で特設の売り場を設け、メーカーの人らしき人が賞品説明をしていた。ビクーニャの3色を購入すると、デザインされたバッグが付いていた。さらにじゃんけんで勝つと賞品があるという。じゃんけんにも勝って、ビクーニャをもう一本ゲットである。ついでに、「透明美色」を使い切っていたので買って帰路についた。

帰ったら早速図録の観賞である。大原美術館は、ヨーロッパ、アメリカ、日本の作品と多彩である。モディリアーニは展覧会の顔になっていた。
今日はついていた。しかし、これくらいだったら反動もそう大きくはなかろう。大いに楽しむこととしょう。
モディリアーニ(1884〜1920)の言葉
「私が求めているものは、現実でも非現実でもなく“無意識”すなわち、人類に本能的に備わっている神秘である」