航空自衛隊・西部航空音楽隊 随筆のページへ

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File No.110305

毎年3月に催される、航空自衛隊・西部航空音楽隊の定期演奏会に行った。去年、尖閣諸島、北朝鮮の砲撃などの問題が発生し、西部航空方面隊の任務も重要性を増した。西部航空方面隊司令官・中島空将は、定演プログラムの挨拶に「西部航空方面隊は、西日本の空の守りの要として、精強で健全な部隊の育成に努めるとともに、我が国の独立と平和を守るため何時いかなる時にも任務に対応できるよう日々訓練に励んでおります」と書かれていた。私は過日、新防衛大綱を一応評価したが、その後、識者の意見を見ると、どうも評価がよくない。要するに南西諸島の広大な島しょ区域は、動的防衛力では「焼け石に水」のようで、予算を減らし、人員を減らしては、結局「絵に描いた餅」だという。佐藤正久議員(自民)は、基盤的防衛力をしっかり構築した上に、動的防衛力を機能させなければならない、と言っていた。やはり、民主党のやることは「言葉だけが踊っている」ということなのか。


定期演奏会は、毎年聴きに行っている。今年も実にいい演奏会だった。具体的な数字は忘れたが、中島空将の話では、かなりの人が抽選にもれているらしい。私は、どうしても聴きたいので、後援会に入っている。後援会といえど、必ずではないかもしれないが、今のところ一応毎回聴くことが出来ている。今年のゲストは、サキソフォン奏者の平野公崇さんだった。と言っても知っていた訳ではなく、今回初めて聴いた。演奏曲目は平野公崇さん自作の「七つの絵」という曲だった。平野公崇さんのインスピレーションによる作曲だという。今回は全七曲の中から、第四曲〜第七曲の四曲が演奏された。平野公崇さんの手にかかると金属製のサキソフォンが、あたかも命を吹き込まれたかのように多彩に躍動する。ある時は駈けまわり、あるときは静かに静かにまどろみ、聴いていると何か不思議な世界に誘い込まれる。


演奏というものは、常に緊張するものだ。特にソロはそうである。最初の「市民のためのファンファーレ」は、いきなりの金属音のような高音である。「ボレロ」も、最初各楽器のソロが続く。特にリード楽器は、油断するととんでもない音が出る。サキソフォンやクラリネットもそうだが、ダブルリードのオーボエはかなり難しいと聞く。そういう意味でも、曲が終了して、それぞれフューチャーした演奏者に立ってもらって、客席から大きな拍手を送るのは実にいいものだ。演奏会は、心おきなく右脳で楽しむものだが、どうも私の悪いクセで、時々左脳が働いている。「七つの絵」の「春」のようだと、ついつい左脳が動き出す。プロの指は、あんなにも動くものなのか。まるで神業である。楽譜はどんな風か、怖いもの見たさでちょっと見てみたい気がする。しかし、見たら恐らく吐きそうになるかもしれない。空自音楽隊の人たちも、この共演はかなり緊張したのではないだろうか。


新燃岳の報道で「空振」という被害を初めて耳にした。これは噴火に伴って発生する空気の振動が、衝撃波となって大きな被害をもたらすものである。演奏会に足を運んで、生の演奏を聴くと、CDなどでは味わえない感動がある。その一つの要因はまさに「空振」ではないかと思う。こちらの「空振」は、被害ではなく"感動"を与えてくれる。音とともに体全体を包み込んでくれる"振動"は、演奏会でなければ味わえない。パーカッションはもちろん、演奏者の息遣いまでもがそうかもしれない。もうひとつの要因は「超音波」である。我々が耳で聴きわけることができる可聴域は20ヘルツから20キロヘルツである。おそらく家庭で聴く音楽は、その可聴音だけを聴いている。しかし演奏会では、超音波を皮膚で感じ、味わっているはずである。そこに奥深さが生まれる。演奏会が終わって帰りがけ、近くの人が「いい演奏会だったね」と話しているのが聞こえてきた。みんなが存分に楽しんだ演奏会だった。




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航空自衛隊のパンフレットより(一部抜粋)
近年、世界情勢も大きく変動してきており、国際社会における航空自衛隊の果たす役割は、ますます重要なものとなってきています。私たちは、一人の日本国民として、また自衛隊員として、我が国の平和と安全・国際社会の平和と安定を確保したいと願いながら、これからも精進してまいります。
防衛力の役割 演奏会プログラム
(1)新たな脅威や多様な事態への実効的な対応
防衛大綱では、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織の活動などにより大きく変化した安全保障環境を踏まえ、新たな脅威や多様な事態への実効的な対応を防衛力の第一の役割として位置づけています。
そして、新たな脅威や多様な事態のうち、主なものに関する対応と自衛隊の体制の考え方について、
 @弾道ミサイル攻撃への対応
 Aゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応
 B島嶼(とうしょ)部に対する侵略への対応
 C周辺海空域の警戒監視および領空侵犯対処や武装工作船などへの対応
 D大規模・特殊災害などへの対応

の5項目を例示しています。航空自衛隊は、主に空というフィールドにおいてこれらの事態の対処を行っています。
(2)本格的な侵略事態への備え
わが国に対する武力攻撃が行われる場合には、周辺を海に囲まれたわが国の地理的な特性や現代戦の様相から、まず航空機やミサイルによる急襲的な航空攻撃が行われ、この航空攻撃は反復されると考えられます。
航空自衛隊では、敵の航空攻撃に即応して国土から出来る限り遠方の空域で迎え撃ち、敵に航空優勢を獲得させず、国民と国土の被害を防ぐとともに、敵に大きな損害を与え、敵の航空攻撃の継続を困難にするよう努めます。
(3)国際的な安全保障の改善のための主体的・積極的な取り組み
今日のように、お互いが依存しあって成り立っている国際社会においては、世界全体が平和でなければ、一国の繁栄もありません。
私たち航空自衛隊は、国際平和協力活動を通じて国際平和のための努力、国際緊急援助活動などによる国際協力の推進など国際社会の平和と安定を維持・増進していくため、平素より二国間・多国間訓練を含む安全保障対話・防衛交流を積極的に推進しています。