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地下鉄−貝塚線 直通問題

西鉄貝塚線と言えば「市営地下鉄」との直通問題がある。先月、福岡市は直通に伴う初期投資費用と需要予測の試算を発表した。発表された内容は下記[別表]の通りである。天神まで250億円、中州川端まで210億円と算出された。この案はいづれも、3両編成の車両を新たに導入することが前提となっている。これは現在の西鉄の車両が、不燃化構造ではないためである。ほかにも貝塚線のレールの強化や信号設備や通信設備などの改良が含まれている。中州川端案より天神案の費用が多いのは、天神駅で列車折り返し用にホームを延長する費用などがかかる為である。一方、需要予測については、発表を見て、「ああ、そんなものか。予測がこれだと実際はどうなるのか?」という印象である。費用は、初期投資だけではない。それにプラス、ランニングコストもある。福岡市としては「引き続き収支予測や費用対効果の調査を進める」と言っているが、今回の発表からだけでも採算性に問題があるのは明らかである。

先日発売された、週刊「エコノミスト」12月7日号で「全国1750市区町村・借金ランキング」というのを特集していた。それを見ると“ワーストランキング”で「実質公債比率16.8%」の福岡市は、1750市区町村中424位とかなり悪い位置にあった。2兆5千億円の借金を抱え、財政健全化が急務の福岡市である。福岡空港滑走路増設など、優先してやらなければならない事業も多い。先日は、七隈線延伸で、キャナルシティ経由で初期投資費用が450億円となっていた。市の財政状況を考えると、かなりの負担であることは間違いない。ましてや、採算性に疑問がある貝塚線の直通など如何なものか。大型公共工事では、工事が終っても、その後の維持に多額の税金をかけることになる。だが、そんなことは業者には関係ない。議会とつながった業者は、常に新しい仕事を次々と要求してくる。新しく決まった福岡市長は、全く行政経験がない。本当に議会と対決し、渡りあって財政健全化を進められるか注目である。

一方、西鉄はどうか。高速道路1000円や景気低迷のあおりを受けて、バス事業は赤字が拡大した。一時、高速バスが好調な時は10億円くらい、赤字路線の補てんをしていたという。日本最大のバス会社が、そのドル箱を失った訳だ。しかし、経営陣の反応は早かった。今年初めには高速バスはもちろん、路線バスも大幅に廃止、乗務員の新規採用もやめた。加えてニモカの設備投資も一段落して、次の決算は、大幅に改善するという。収益の見込みがなければ、債務超過でもない会社を解散させるという厳しい姿勢の経営陣である。貝塚線についても同じであろう。直通に250億円の初期費用となれば、積極的に手は上げないだろう。貝塚線は、沿線人口は増えているにもかかわらず、利用者数は低迷している。平成2年と平成21年を比較してみると、利用者数は、ほぼ半減している。地下鉄の民営化という声も聞こえるが、西鉄は逆に貝塚線を買い取ってもらいたいくらいだろう。

「千円高速」でドル箱を失った西鉄だが、七隈線の博多駅延伸で「100円バス」というドル箱も失いそうだ。そのしわ寄せは、結局赤字路線の切り捨てということになりはしないか。今回リストラにあった路線は、人口の少ない地方の路線のようだ。ただ、交通弱者の地方路線を切り捨てて、収益が大幅に改善というのもどこか釈然としない話である。世の中は、すでに高齢化時代に入っている。これから先、更に超高齢化時代がくる。しかも、人口は減少し、確実に利用客は減少する。だからと言って、交通弱者をどんどん切り捨てていくわけにはいかない。地方自治体としては、いろいろな公共交通機関を、どう組み合わせて、税金の費用対効果を最大に持っていくかが問われる。現状では貝塚線直通問題はかなり厳しいと思う。ましてや、アイランド線などもっての外である。リレーつばめと800系新幹線は、新八代駅で“同じホームで”乗り換えている。素人考えで申し訳ないが、とりあえず貝塚駅を島式ホームにして、天神行き地下鉄と“同じホームで”完全に連絡させるということで成り行きを見てはどうだろうか。



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[別表]
地下鉄直通運転2案の比較
    中州川端案 天神案
施設整備費 150億円 180億円
車両購入費 60億円 70億円
[初期投資計 210億円 250億円
利用者増加数(貝塚線) 4400人 5800人
利用者増加数(地下鉄全線) 1800人 3200人
※利用者は2025年の一日当たりの予測

2010・12・08 地下鉄民営化の問題
 今朝の西日本新聞に、高島新市長の記者会見の模様が載っていた。その中で市長は、地下鉄民営化を検討する方針を明らかにした。地下鉄民営化の意義について「民営化で利便性が高まり(マイカーからの切り替えが進んで)天神の渋滞問題解決に寄与すれば・・・」と述べた。

 「民営化で利便性が高まり、マイカーからの切り替えが進む」という話だが、その詳細な根拠を知りたい。逆に「なぜ市営では利便性が高まらないのか」という素朴な疑問も生じる。そういうところを厳しく改善し、財政再建につなげていくことが、行政の改革ではないのか。

 福岡市交通局によれば「箱崎線や七隈線の駅業務などは既に民間委託しており、人件費削減などの余地は大きくない。国内で公営地下鉄の資産を譲渡して完全民営化した例はない」という。是非、都市交通全体を見つめた、大所高所からの戦略的なマスタープランを示してほしい。

2012・02・10 西鉄貝塚線−福岡市営地下鉄 直通運転は困難
福岡市は「西鉄貝塚線−福岡市営地下鉄」の直通運転について、「投資に対する効果が低く、直通は困難」とする試算を発表した。収支予測では、収入は年間2億〜2億6千万円増加する。しかし、貝塚駅の改良工事や車両更新費などで、年間の減価償却費が7億〜7億3千万円になり、採算性の確保は困難との結論を出した。発表を待つまでもなく、素人が考えても採算が取れないのは明らかである。当然アイランドシティ線など、国や市の財政を考えればもっての外である。