尖閣問題について 随筆のページへ

トップページへ

File No.101022

 私は、前の随筆で「・・・守っている日本国の主権である。ここは一歩も引いてはならぬ。微動だにしてはならぬ」と書いた。ところがその3日後、突然中国の船長が釈放された。何が起きたのか、何があったのか、にわかには信じがたいことだった。ASEAN諸国は言うまでもなく、世界が固唾をのんで行方を見守っていた。その重要な外交問題を、こともあろうに「那覇地検のやったこと。政治介入はなかった」と知らぬふりをする。民主党にとって、日本の主権を守るより、国際会議を無難に切り抜けることの方が大事なのである。本末転倒もはなはだしいが、民主党ではこれを「しなやかで強い、柳腰外交」と言うらしい。私の目には、仙谷長官の「柳腰」は、相当"骨粗鬆症(こつそしょうしょう)"が進んでいるように見える。風が吹けば修復不可能なほどの「複雑骨折」である。ところが国会では、一転して「超合金の柳腰」に変身する。「恫喝」「はぐらかし」「居直り」と、やりたい放題、向かうところ敵なしである。"千獄"総理、その"内弁慶"をほんの少しでいいから外交に回せませんか。

 今の中国は、まるで風船をふくらませるかのように、領土・領海を広げようとしている。「領海法」なるものをつくり、尖閣諸島はもちろん南沙も西沙も、勝手に自分のものだと決めてしまう。しかも尖閣諸島は、中国の国有地になっているそうな。ふくらんだ先のあっちこっちで衝突し、ところ構わず武力を背景に横暴の限りを尽くす。南シナ海問題では、武力を用いず外交交渉で解決すると約束したらしいが、この約束は中国によって一方的に破られ、ベトナム漁民は銃撃を受けたという。まるで海賊まがいである。ところが中国の首相は日本のテレビに出演してこう言った。「・・・中国は他の国の領土を占領したことはありません。そして、私たちが軍備を発展させる唯一の目的は、防衛のため、自衛のためです。こうした点から言えば、中国はいかなる国に対しても脅威になりません。中国はこれからも、平和的発展の道を堅持していきます。いかなる国に対しても永遠に脅威になりません。中国が他国を支配し覇権を取ることは永遠にないのです」。何というこの「厚顔無恥」。「傍若無人」の中国に正常な外交交渉など通じない。

 米軍はこのところ積極的な動きを見せている。先ごろ、ゲーツ米国防長官は「いかなる脅威にも対処可能な最大限の軍事力の配備が米国のアジアへのコミットだ」と言った。三沢基地にはB52H爆撃機が飛来し、横須賀には9月はじめに最新鋭原子力潜水艦「ハワイ」が寄港した。9月末には特殊潜水艦「ミシガン」も寄港した。「ミシガン」は、トマホークやトライデント搭載のほか、特殊部隊シールズも乗せ特殊任務を遂行する潜水艦である。米軍はこの「ミシガン」をグアムに配備すると共に、最新鋭の長距離無人偵察機「グロバルホーク」も配備した。この「グローバルホーク」については、防衛省も3機導入の方向で検討している。こうした米軍の、西太平洋での動きは、当然中国の動きを牽制し、この地域での安定を維持するためである。クリントン米国務長官は「尖閣有事は日米安保の対象」と明言した。ところが、このところアメリカにおける日本の地位は下がる一方である。日米安保50周年での共同宣言は見送りの方向である。優柔不断な民主党政権には、手を差し伸べる気も失せてしまうということだろう。

 赤瀬川原平氏の著書で「優柔不断術」というのがある。この中で「・・・いづれ日を改めて。・・・そのうちおいおい。・・・そういう優柔不断のパラダイムを長い歴史の中で創出してきた国である。その国に生まれたのは幸か不幸か。でもこの国の中にしか未来図はないのである。・・・」。全国民が危機感を共有した今回の尖閣の問題は、国防を考えるいいきっかけになった。国民投票法も施行されている。だが肝心の憲法審査会はどうなっているのか。今の民主党に動く気配は全く感じられない。よりあい所帯の党で、考えがバラバラだから、党内の意見さえまとまらない。いくら安防懇が危機意識をもって提言しようと、内閣にその気がなければ絵にかいた餅である。外交交渉の基本は「こん棒を持って、静かに話し合う」ことだそうだ。武力の後ろ盾のない外交は無力である。それは今の中国をみれば誰もが理解できるだろう。日本が日本であるために、憲法改正を急がなければならない。自分の国を自分で守るという、ごく普通の国にしなければならない。今すぐ民主党政権を引きずり下ろして、しっかりした保守政党で舵取りをする方法はないものか。

随筆のページへ トップページへ

自衛隊のスクランブル発信回数 スクランブル発進とは
領空侵犯またはその恐れのある不明機に対し、戦闘機などが緊急発進すること。
回数
2004 141
2005 229
2006 239 領空識別圏とは
国の防空上の要求から設定されている区域。領空の外側に設定されいる。この区域に不明機が侵入するとスクランブル発進をする。
2007 307
2008 237
2009 299
2011・01・26TV「池上彰の学べるニュース」より