映画「海猿」を観て
THE LAST MESSAGE
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File No.100921

公開に先立ち、主演の伊藤英明君はこう言った「ハリウッド映画と真っ向勝負した」。映画を観ればこの言葉に納得する。今回は3Dバージョンもあったので、観るなら3Dということで福岡ルクルのワーナーマイカル(6番スクリーン)まで足を伸ばした。「実写」と「セット」と「CG」を駆使して作り上げたスケールの大きい映像は確かに「ハリウッドと真っ向勝負」である。日本映画もここまで来たかと思わせる。映画の公開に先立ち、出演者がいろんな番組に出演して撮影の苦労話などをしていた。60トンの水が流し込まれたり、鉄の管が頭上から落ちてきたりと命の危険にさらされるようなシーンも多くあったようだ。相当にハードであったろうことは容易に想像がつく。この映画は海上保安官・潜水士の「鍛え抜かれた精神と身体能力」が主役であり、そここそがこの映画の持つ重要な主題である。その表現のため、あくまでも「実写」を制作の基本に据えたという。つまり爆発・炎上、暴風雨の直撃、荒れ狂う海というスペクタクルは、人間の機微を描くための小道具でしかなかったと言えるかもしれない。

福岡・玄界灘沖に巨大な天然ガスプラント「レガリア」が浮かんでいた。レガリアは日・韓共同開発の施設で、ロシアから技術提供も受けている。総事業費は1500億円という国家プロジェクトである。2010年9月、超大型台風がレガリアを直撃しようとしていた。荒れる海のなか、レガリアの横で作業していたドリルシップ(船式の掘削装置)が高波に煽られ、レガリアに激突した。この衝撃で火災が発生、施設内には300人を超える作業員や関係者がいる。さらに、レガリアには12万立方メートルの天然ガスも貯蔵されている。海上保安庁による消火と救助が続けられた。この緊急事態に対処するため、仙崎(伊藤英明)らはレガリアの設計者・桜木(加藤雅也)をサポートしてレガリアへ行くことになる。ところが、桜木は設計者として、レガリアを守るべく勝手な行動に出る。そのため仙崎ら5人は脱出が遅れレガリアに取り残されてしまう。そこに新たな問題が発生する。ドリルシップから、オイルが噴出したのである。これに引火し爆発が起きる。何としてもバルブを閉めなければならない。海上保安官として事故の最前線に立つ仙崎らは、敢然と立ち向かう。

この映画の舞台が、日韓EEZ水域ということで、海上保安庁は主に七管が協力している。巡視船「ちくぜん」やヘリコプターの「おおほり」「はまちどり」などが活躍する。映画の中で「ちくぜんにつないでくれ」「こちら“ちくぜん”、現在の状況ではヘリを飛ばすのは無理」などのセリフが飛び交う。私は2007年5月「ちくぜん」の博多湾内巡航に乗船したことがある。この時はただ巡航するだけでなく、海上で遭難者の救助や不審船の対処など、いろいろなパフォーマンスがあった。このとき「ちくぜん」に近づく不審船の役を演じたのが巡視船「みずき」だった。先日、尖閣諸島の日本領海を侵犯し違法操業した中国漁船に体当たりされたのがこの「みずき」である。中国人船長の逮捕と、日本の法律による捜査は当然である。中国という国は「他人のものは俺のもの。俺のものは俺のもの」という常識はずれの国である。その常識のない国が、あらゆる手段を使って圧力をかけてきている。海上保安官が、身を危険にさらしながら守っている日本国の主権である。ここは一歩も引いてはならぬ。微動だにしてはならぬ。

先日、昔のテレビ版の「海猿」が放映された。その中で言っていた。「死なない為の訓練なら俺は何も言わない。海上保安官は生きて帰るのが鉄則だ」。2か月ほど前、埼玉県秩父市の山中で、県の防災ヘリが救助活動中に墜落し、防災航空隊員ら5人が亡くなった。遭難現場の状況は悪条件であり、かつ千変万化する。常に不測の事態と対峙し、隊員は「死」と隣り合わせにある。その後のニュースで、同僚隊員たちが精神的なショックで、運航再開の目途が立っていないというのも聴いた。実に痛ましい事故だった。一方で、一年ほど前、八丈島近海で起きた漁船の転覆事故では3人を救助し、潜水士をたたえる多くの声が海保に寄せられた。海猿たちの大きな励みになったと同時に、国民に勇気を与えてくれた。テレビ版最終話では勝田船長がこう言う。「俺たちは人の命を救うためなら最後まで絶対にあきらめない。愛するものの為に、必ず生きて帰る」。これまでの「海猿」シリーズに一貫して流れるメッセージは、この言葉に代表されよう。さて「THE LAST MESSAGE」では、この信念がどう描かれているのか・・・・

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「 THE LAST MESSAGE 海猿 」
 2010年/2時間9分/ドルビーデジタル

監督:羽住英一郎
出演:伊藤英明、加藤あい、加藤雅也、時任三郎


巡視船「ちくぜん」


海保ヘリ「はまちどり」
(福岡スカイフェスタにて)

この「はまちどり」が
今回の映画の非常に
いいシーンで登場します

「ちくぜん」に装備されている
20ミリ機銃(手前)と35ミリ砲

巡視船「みずき」と
「ちくぜん」の艦載
ヘリ
「おおほり」
海上保安庁の平成23年度予算の概算要求を見てみた。 2010/09/21
全省庁で総額96兆円にのぼる概算要求であるから、どうなるか分からないが、その省庁の方向性は分かる。海上保安庁の概算要求には「治安対策の強化を図るため292人を要求」というのがあった。これは「治安対策の強化」や「海洋権益保全」などが目的である。緊迫化する情勢に、最前線の守りにつく海上保安官は、猫の手も借りたい状況だろう。
2010・09・22 大相撲
 もし双葉山の69連勝の記録が破られたら、その時点から、私は一切相撲を見ない。どこの国の相撲か分からないような相撲で、せいぜい金儲けをするといい。もはや我慢の限界を超えた。子供のころからずっと見続けてきた大相撲。父との思い出もある大相撲だが、誠に残念である。