「改正貸金業法」に思う
(2010年)
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File No.100721

先月18日から「改正貸金業法」が完全施行になった。大きな改正点は(1)上限金利を29.2%から15〜20%へ引き下げる(2)総量規制で、借入総額が年収の1/3までとなり、50万円以上の借り入れる場合や、すでに複数業者から100万円を超えて借りる場合などには年収証明書の提出が必要となった。専業主婦の借り入れには、配偶者の同意書と婚姻を証明する書類が必要となる。ところが、現状ではすでに借入のある人の約半数が総量規制にひっかかるという。消費者金融の利用者が1400万人というから、700万人が新たな借金はできなくなる。年収の1/3をオーバーしてサラ金を借りている人が700万人もいるのである。一人一人を見ていけば、やむにやまれぬ事情の人もあるとは思うが、これはどう見ても異常である。私としては、可処分所得の10%程度が正常な範囲と思っているが、利用者は家計のバランスシートをとことん見直した上でのことか、貸し手側は、正常な経営理念を以って経営体質を築いてきたのか。借り手側、貸し手側のいろいろな事情が重なり合って現状がある。

先日、「たかじんのそこまで言って委員会」で、ゲストに須田慎一郎氏を迎えてこの問題を取り上げていた。余談だが、須田さんは見ただけで金融に詳しそうな風貌をしている。須田さんの発言の要旨は次の通りである。「そもそも論から言えば、専業主婦に貸していたこと自体がおかしい。大前提が、消費者金融業界が貸して貸して貸しまくったケツを拭けというのはおかしな話。借金は、将来所得の前借りである。絶対返さなければならないもの。従って、借入にはおのずと限度額がある。低収入、あるいは収入のない人に貸すこと自体がおかしい。この10年くらい"自動貸付機"というのが出てきた。それまでは相対で貸付してきたが、あのあたりからハードルが下がってきた。夫のリストラや病気や高齢者を抱えているなどの問題の根本的な解決は、社会保障制度の拡充が必要。引き下げたとはいえ、20%弱の金利は十分に高い」。おっしゃる通りである。

消費者庁は、先日「こんにゃくゼリー」の規制を先送りした。これは「なれあい、なしくずし、先送り=骨抜き三兄弟」の匂いがする。即ち消費者庁としては、最近死亡事故もなく、規制をつくるのも難しいので、メーカー側の自主的な改善にまかせるというのである。消費者庁の監視委員会の意見も聞く耳持たず、消費者庁としては何もしないという結論だ。消費者庁の設立のきっかけになった事件でさえこの体たらくである。「一事が万事」というが、民主党の国家戦略室が格下げになる。重要政策決定や予算策定に官邸機能を強化するために創設されたが、何の働きもないまま今回格下げである。各省庁間を調整して、大所高所から判断を下し、文字通り国家の戦略を政治主導で決定するはずの組織であった。初代担当相だったのは、他ならぬ菅総理自身である。各省庁に飲み込まれ、官僚の言われるがまま操られているのが一番楽でいい。「各省庁一律1割削減」の話は、閣僚の反対で、あっという間に消え去った。そもそも消費者行政も、菅内閣組閣のとき、消費者行政担当大臣に、あの事務所費で有名になった新井国家戦略担当相の兼任ということにしてしまった。菅内閣はこの時点からすでに、消費者問題に取り組む気などなかったとしか思えない。

10年ほど前、私が勤務していた会社の当時の社長が「当社の経営理念と行動指針」として次のような内容を掲げた。(1)実体経済の裏付けのあるクレジットに徹する(2)サービスを制度化して自らの顧客を創造する(3)リスク・マネジメントの実戦で、質の良い体質づくりに努める---すべての根本は質にありとし、価値は質の積である。要は当社は質を重んじ、質を追及することによって"質をつみあげて量となす"ことを行動指針とする」。社会的責任については「企業は社会の公器であり、“収益性”“公益性”“公共性”をきちんと果たさなければならない」。一時期、サラ金が、「豪華な夕食をするのに、サラ金を借りましょう。可愛い子犬が買いたかったら、今すぐサラ金を借りましょう」と大量のCMを流した。この節操のない時代を通り越してなお、平成22年3月期の事業報告書の「当期における施策」にはこう書いてある。「当社グループは"モノ"を専門とするNo.1金融サービス会社を目指して規模的な拡大にとらわれない高付加価値事業の確立に努めるとともに、債権管理の強化、費用の圧縮に注力してまいりました。・・・・」。10年前の行動指針は見事に受け継がれ、経営文化として定着している。多重債務者を作った多くの責任は、貸し手側にあると言えよう。「改正貸金業法」の施行で、当面いろいろな問題も出るとは思うが、社会の体質が変わるための試練として受け止め、徐々に正常化していくことを願っている。
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2010/12/25西日本新聞より 悪質営業2社を公表:福岡市消費生活センター
福岡市消費生活センターは、悪質な勧誘など不当な営業行為があったとして、市消費生活条例に基づき2社に是正勧告した。福岡市単独の是正勧告は初めて。改善がなければ、特定商取引法に基づき業務停止処分などを検討する。
訪問販売「シティーミシン販売」
 (福岡市南区)
  無料点検が目的のような説明で関心を引き、高額製品を契約させるなどした。平均契約額は22万円で、最高は162万円。
   
エステサロン「ヴァルナ福岡店」
(福岡市中央区)
(経営は「アーチ」東京都港区)
  系列のネイルショップやアロマショップ前で、「アンケート」と称して声を掛け、お礼の無料マッサージをしながら、エステティックサロンのチケットを販売。平均契約額は67万円で最高は295万円。

2011/07/19 2010年度福岡市消費生活相談概要〜(西日本新聞掲載記事)
福岡市の消費生活相談件数は、2004年度以降減少傾向にありましたが、10年度は、1万4444件と、前年度比991件増となりました。相談件数の上位は昨年度に引き続き「デジタルコンテンツ(携帯電話やパソコンのワンクリック請求等)」「不動産賃貸借」「フリーローン・消費者金融」の順。年代別では、20〜30歳代の相談は減少したものの、その他の年代で相談が増加、特に60歳以上では、前年度比20%の増と、高齢者の相談の増加が目立ちました。
 高齢者の相談の特徴として訪問販売・電話勧誘販売を入口にするものが多く、手口では「利殖商法」「点検商法」「次々販売」などの問題商法が目立ち、特に「利殖商法」は昨年度の2.5倍に急増しました。
 一方、20歳未満及び20歳代の若年層ではエステに関する相談が急増しています。エステにおいては「無料商法」「キャッチセールス」「次々販売」などの問題商法による契約が多く、特に販売方法に問題の多いサービスと言えるでしょう。
 消費生活センターでは、商品やサービスの名称、契約日、事業者名、契約金額、契約のきっかけなどの経緯を確認し、解決への糸口を見つけます。早めのご相談がよりよい解決につながります。その際は、契約書やパンフレットなどの関係書類を用意し、事情のわかる契約者ご自身が相談されることをお勧めします。お気軽にご相談ください。
2011・07・26 2010年度福岡市消費生活相談〜若者編 (西日本新聞掲載記事)
 2010年度の福岡市消費生活相談の概要から20代までの若年層の特徴を見ると、相談件数は6年連続で減少傾向にありますが、相談があった商品を分類すると携帯電話やパソコンを利用した「デジタルコンテンツ」や「エシテティックサービス」に関する相談が昨年度より増加しています。
若者の相談に多く見られる問題商法で最も多いのが「無料商法」で、以下「サイドビジネス商法」「マルチ商法」となっています。
 特に無料商法は、デジタルコンテンツやエステ商品などでよく使われる手口です。「パソコンのあるサイトで『無料ダウンロード』と表示してあったのでクリックしたら突然請求画面が張り付いた」「無料体験エステと言うので行ってみたら、高額なエステコースを勧められた」など「無料」をセールストークとして消費者を勧誘する商法です。
 サイドビジネス商法は、就職が困難な現在の社会状況が背景にあります。「資格などを身につけ在宅ワーク」などと勧誘し、実際には高額な教材を売り付けたり、「パソコン上で店を出すだけで在庫管理など何もする必要がなく簡単に収入が得られる」といって高額な初期費用を請求したりする商法です。
 社会経験の未熟な若者を狙ってうまい話を持ちかける悪質な業者もいます。契約する前にもう一度「なぜ無料なのか」「本当に簡単に収入が得られるのか」よく考えてみましょう。




2011・08・01 2010年度福岡市消費生活相談〜30〜60代編 (西日本新聞掲載記事)
 2010年度の福岡市消費生活相談のうち30〜60代の相談件数は、30代を除く全ての年代で増加しています。
 相談があった商品を分類すると「デジタルコンテンツ」「不動産貸借」「フリーローン・消費者金融」が全ての年代で上位3位までを占めています。特に、40代で、携帯電話やパソコンによるワンクリック請求や架空請求など「デジタルコンテンツ」に関する相談が増えています。
 「不動産貸借」については、賃貸アパートにかかわるものが大半で、特に修理費の請求や敷金の返還、敷き引き特約などに関するものが多いので、契約内容を十分に確認し、退去時に必要な費用など理解した上で契約しましょう。
 また、「フリーローン・消費者金融」の相談の多くは、多重債務や過払い金返還請求、ヤミ金に関するものです。多重債務に陥ってしまった場合は、一人で悩まずに消費生活センターなどに相談し、早期解決を図りましょう。解決が遅れれば生活の立て直しにも時間がかかります。
 購入方法で分類すると、店舗購入による相談が全ての年代で最も多く4割以上を占めています。次に多いのがインターネットなどによる電子商取引を含む通信販売です。店舗購入や通信販売などは、クーリングオフ制度がありません。商品などを購入する場合は、返品が可能かなど契約内容を十分に確認しましょう。
2011・08・08 2010年度福岡市消費生活相談〜高齢者編 (西日本新聞掲載記事)
 2010年度の福岡市消費生活相談のうち、70才以上の高齢者からの相談件数は3年連続の増加で、2425件となっています。
 相談があった商品を分類すると、商品が特定できない「商品一般」が最も多く、前年度と比べて127件増の210件です。はがきなどによる架空請求が7割近く占めています。次に多重債務や過払い金返還請求などの「フリーローン・消費者金融」に関する相談、以下「工事・建築」「新聞」の順となっています。
 次に購入方法で分類すると、「店舗購入」の相談の割合がこれまでに比べて低く、逆に「訪問販売」や「電話勧誘販売」の割合が高いのが特徴。これらの販売に多く見られる問題商法では「利殖商法」が最も多く、以下「次々販売」、「身分詐称(かたり商法)」、「無料商法」「点検商法」の順となっています。
 利殖商法で多い商品は、株やファンド型投資商品などで前年度に比べ2.5倍に増えています。特に電話を使い、複数の業者を演じてそそのかす「劇場型」と言われる手口で勧誘するトラブルが目立っています。
 「高額で買い取る」と言われ未公開株を購入したものの、実際に買い取られた事例はありません。
 高齢者は、言葉巧みに勧誘され、だまされたことに気づかなかったり、だまされた自分が悪いと相談しなかったりします。被害の未然・拡大防止には、周りの人の見守りが大切です。