小惑星探査機「はやぶさ」、満身創痍の凱旋 随筆のページへ

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File No.100613

 小惑星探査機「はやぶさ」が、7年の歳月を経て地球に帰還する。先ほど(日本時間13日午後7時51分)、内臓カプセルの分離に成功したというニュースが流れた。ついに静止軌道の内側に入ったという。その60億キロの旅は、即ちプロジェクトチーム「不屈」の物語でもある。「イトカワ」で着陸時に襲ったアクシデントを皮切りに、通信が途絶え一時行方不明になったり、イオンエンジンの故障で姿勢制御不能になったり、帰還途中での再度のエンジン故障など、数々の困難に見舞われた。再三にわたって襲ったトラブルも、プロジェクトチームの不屈の精神で「復活」した。通信が途絶えたときは、太陽電池に一瞬でも光が当れば、わずかな時間でも回復し応答があるはずと、1ヶ月半ひたすら待ち続けた。イオンエンジンの故障は、4つあるエンジンのうち、使える部分をつなぎ合わせて一つのエンジンとして使うという「コロンブスの卵」のような離れ業をやった。いづれのトラブルも、チームの執念を伺わせるものばかりである。まさに"満身創痍"の凱旋である。

「はやぶさ」は、多くの"世界初"という新技術の実証に"挑戦"した。2005年12月号の科学雑誌「ニュートン」によれば、主なものが五つある。(1)イオンエンジンによる惑星間の航行、(2)イオンエンジンと地球スイングバイを併用した加速、(3)光学観測による自律的な小惑星への誘導、(4)微小重力下でのサンプル採取技術、(5)惑星間空間からの地球上へのカプセル回収の五つである。(1)のイオンエンジンをメインエンジンにしたのは世界初で、しかも3台同時運転も世界初だという。(2)のイオンエンジンと地球スイングバイの併用というのも世界初。このミッションでは、1500万キロ先にいる「はやぶさ」の軌道を、位置で1km、速度で秒速1cm以内の誤差という想像もつかない精密さが要求された。(3)の自律航法も成功し、見事に「イトカワ」に到着した。(5)のカプセル回収は、おそらく成功するだろう。問題は (4)のサンプル採取である。金属球は発射されていなかった模様だが、願いを込めて採取出来ていると信じたい。

  先月21日、種子島宇宙センターからH2A・17号機で打ち上げられた「宇宙ヨット・イカロス」だが、現在金星に向け順調な航行を続けている。11日には無事に「帆」が開いたと、画像が公開された。帆は超薄ながら丈夫な樹脂製の膜で、この膜に太陽の光子(フォトン)が当たって跳ね返るときのエネルギーで進んで行く。光子は質量はゼロだが、運動エネルギーがあるため進む。力は弱くても、宇宙の航行には有効という意味では「はやぶさ」のイオンエンジンも同様である。この「イカロス」にも世界に誇れるものがいくつかある。たとえば、小さく折り畳んだ14m四方の帆を、無重力の宇宙で回転しながら遠心力で広げていく技術。地球から770万キロの宇宙空間で、大きな帆を広げたのは世界初だという。もちろん、このソーラーセイルによる宇宙航行そのものが世界初である。「宇宙ヨット」のアイデア自体100年も前からあったそうだが、薄くて丈夫な膜の技術などを得て実現可能となった。しかし、何と言っても、精一杯帆を広げ、太陽の光を受けながら、悠々と宇宙空間を進んでいく帆船「イカロス」の姿にはロマンがある。

小惑星「イトカワ」の名前は、もちろん日本のロケット開発の父・糸川先生の名前から付けられたものである。私が子どもだったころ、日本でロケットの研究が糸川先生によって進められた。ロケットを身近なものに感じ、今だにロケットや宇宙に興味を持つ私がいる。今回の「はやぶさ」も、子供に夢や教訓を与える最高の教材になるだろう。教科書などでもとりあげてもおかしくない内容である。きっと、このミッションに感動し、宇宙に興味を持つ子供も出てくるだろう。「イカロス」には"ロマン"があり、「はやぶさ」には"感動"がある。「世界で二番目ではだめですか」という暴言を吐いた方は、今度お偉い大臣になられたようだが、くれぐれもこういう"ロマン"や"感動"を「ケチな仕訳」で、潰さないようにお願いしたい。プロジェクトチームは、燃え尽きる「はやぶさ」に、もう一度地球の姿を見せてあげたいと、カプセル放出から3時間、最後の力を振り絞って、カメラを地球に向けさせるという。もはや「はやぶさ」は、チームが熱く心を通わせるかけがえのない仲間である。

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6月13日 22時57分
地上からカプセルの発光が確認できたそうです。つまり、カプセルが大気圏に突入したということです。管制室には、拍手が巻き起こったそうです。
6月14日 00時30分
 JAXAはカプセルが、オーストラリアの砂漠地帯に着地したと発表しました。カプセルが発信した電波信号などで着地を確認し、カプセルを発見したそうです。
 また、JAXAのHPには、「はやぶさ」が、燃え尽きる直前に撮影した地球の画像も公開されています。
6月14日 17時52分
 JAXAは、16時08分カプセルを回収したと発表しました。カプセルに損傷はないとのことです。18日に日本に到着予定だそうです。


平成15年5月10日
M−5
ロケットによる「はやぶさ」打ち上げが成功
平成17年11月27日
イトカワを離れ、帰還の軌道へ向かう
平成17年8月19日
「ペンシルロケット50周年」を記念して、当時の実験がそっくり再現された


2010/11/16 やったぞ「はやぶさ」!!
2回目の着陸で使った容器から、約1500個もの「イトカワ」の物質が確認された。人類史上初の快挙である。「はやぶさ」の最大の目的が達成されたのである。関係者は今、感無量に違いない。片田舎に住む私でさえ、喜びを分かち合いたい気分である。
微粒子は、分析の結果、地球のものとは構成比が大きく異なるという。1回目の容器はまだ開封していないようなので、さらに試料は増える可能性がある。これで太陽系の起源の解明が大いに進むことになる。やはり、世界初を目指したことによって得られた金字塔である
2010/11/16 川口プロジェクトマネージャーの会見
「7年間、ほんとうに飛行が完結してよかった。長い苦労が報われた」
「期待以上の成果で、夢を超えたものをどう表現したらいいか分かりませんけど、それほど感慨に胸がいっぱい・・・」
(聞いていて、本当に最高のコメントでした。世界に向かって胸の晴れる快挙により、国民に夢を与え頂いたことに感謝します)



2010/12/14 ボイジャー1号、33年かけ太陽系の果てに
1977年にNASAが打ち上げた「ボイジャー1号」が、「太陽圏」の端に近づいている。同機は現在太陽から約170億キロの位置のある。NASAによれば、「ボイジャー1号」が観測している「太陽風」の速度がゼロになったという。これは太陽から吹き出す太陽風が届く端を意味している。今まさに、ターミネーション・ショックに到達したのである。秒速17キロで飛行中の「ボイジャー1号」は、あと4年で太陽圏を脱出するそうだ。