映画
「グリーン・ゾーン」
を観て
映画のページへ

随筆のページへ

トップページへ

File No.100524

ポール・グリーングラス監督とマット・デイモン、音楽ジョン・パウエルといえば「ジェイソン・ボーン」シリーズが思い浮かぶ。臨場感あふれる映像が特徴である。今回も手持ちカメラによる撮影を多用したリアリティあふれる映像に仕上がっている。その映像をさらに高めているのがジョン・パウエルの音楽である。今回観た劇場は、ユナイテッド・シネマ福岡の10番スクリーンだが、ここは音響設備の一番整ったスクリーンである。今回の映画は「ドルビーSRD」だったが、パーカッションによる畳みかけるような迫力のあるお馴染みの音楽で期待に応えてくれた。映画のテーマは「イラク戦争における大量破壊兵器」であるが、すでに「大量破壊兵器は存在しなかった」というのは周知の事実である。だが、監督が描くリアリティは映像だけでなく、歴史としての事実を追及することにもある。それは、2006年「ユナイテッド93」の作品でも知ることができる。その映画で監督は「事件に関わった人々の真実を知ってもらうことがこの映画の役目なのです」と言っていた。二つの作品は"そこで何が起きていたのかを突き詰める"という監督の考えが貫かれている。


2003年イラク戦争開戦から4週間後のバグダッド。ミラー上級准尉率いるMET(移動捜索班)は、大量破壊兵器が保管されているという倉庫へ向かう。しかしそれはまたしても偽情報だった。「指令書は精査を経ている」と政府は言うが、ミラーは情報源に疑問を抱く。そんな折「俺はあんたたちの役に立ちたい」というイラク人フレディから「西2.3キロの所で、フセイン政権の大物アル・ラウィ将軍が会議をしている」という情報がもたらされる。潜入したミラーたちは、最高幹部の側近サイードを確保し尋問する。「大量破壊兵器はどこにある」「アル・ラウィ将軍だけがすべてを知っている」。ところが、そこにヘリ3機で現れた米特殊部隊がサイードを連れ去ってしまう。「上官に報告するぞ」「もっと上からの指示だ」。調査に動き出したミラーは、収監されたサイードの面接に成功する。そこで虫の息のサイードから「ヨルダン」というキーワードを聞き出す。調べていくと米政府高官・パウンドストーンとアル・ラウィが同じ日にヨルダンに行ったという事実をつかむ。


先日、韓国は哨戒艦沈没事件を北朝鮮の潜水艦からの魚雷によるものと結論付けた。クリントン米国務長官は「韓国が直面している脅威は、日本が直面している脅威でもある」と言った。ところが、首相との会談は、わずか20分という状況である。一方、このところの中国の動きも不穏である。中国海軍が日本を見くびった行動に出ている。日本政府の通り一遍の反応は中国の思惑通りだったろう。国民投票法は施行になったものの、民主党は全く手をつける気がないらしい。国民投票法は、憲法改正の第一歩であるが、ただ施行期日が到来したというだけのことである。社民党などと連立を組んでいては可能性はほとんどゼロである。頭数のためならイデオロギーなど関係ないわけだ。もっとも、寄せ集めの民主党では、党内の意見さえまとまらんだろう。前にも書いたが、選挙しか念頭にない民主党は「選挙のためなら、日本が無くなってもいい」という方向にばく進している。今や日本の安全保障は、危機的状況にある。これは映画ではない。我々が直面している現実である。


この映画の広告に「114分間 あなたは最前線へ 送りこまれる」というキャッチコピーがあった。製作スタッフに、イラクでの戦争経験のある退役軍人や、実際に大量破壊兵器探索の任務に携わった軍人たちが参加している。ミラー上級准尉率いるMETが、大量破壊兵器があるという場所に向かうときに観せる最前線の騒然とした緊迫感がリアルである。どこに敵が潜んでいるか分からない。どこから狙撃を受けるか分からない。目まぐるしく変わる一瞬一瞬の状況を的確に判断し進んでいく。「合図をしたら左側へ一気に走るんだ」。一瞬の判断の誤りは、すなわち「死」を意味する。反面、ミラーがアル・ラウィに接触するために行動する時の、夜の静けさからもまた違った最前線の緊迫感が伝わってくる。最前線で彼らは常に「死」と隣り合わせの緊張状態にある。「ゲリラとの戦いはこうだ」。彼らに求められているのは、それに耐えうるだけの強靭な精神力でもある。VFXを使わない映像だからこそ、そんなリアリティが伝わってくる映画である

映画のページへ 随筆のページへ トップページへ
「グリーン・ゾーン」

監督:ポール・グリーングラス
音楽:ジョン・パウエル
出演:マット・デイモン

2010年/米
上映時間:1時間54分


音響システム(ユナイテッド・シネマ福岡のホームページより)
☆ SR-D (Spectral Recording - Digital)
ドルビー社が開発したデジタル音響システム。6チャンネル(劇場内、正面ステージスピーカー4、左右1ずつ)
☆ SRD-EX (surround EX)
SR-Dをグレードアップさせたバージョン。サウンド出力を左、後ろ、右に分割。例えば、ヘリコプターが旋回するシーンなど観客を取り巻く音響空間はより、臨場感あふれる。7チャンネル(6チャンネルに後方1が追加)
☆ THX
ルーカス・フィルムによる音響測定に合格した劇場だけに与えられる認証。特に音響においては映画制作者のニュアンスを劇場で忠実に伝えきるために、レベルやノイズ/残響音/音響機材/スピーカーの設置位置など厳格な品質基準が設けられており、最高の音響で映画を楽しめる。


2010/05/28 プチ自慢
 「笑っていいとも」の金曜日のコーナーで「ことわざアレンジ辞典」というのがある。これは「昔ながらの“ことわざ”を現代風にアレンジする」というものだ。なかなかみんな面白いアレンジをしていて、毎週感心しながら見ている。今日のことわざは「馬の耳に念仏」。ここでプチ自慢。この題を見て私は「そうだな〜“若林に演技指導”ってのはどうだ?」。ところが、今日の金賞はタモリさんで、その作品がまさに「若林に演技指導」だった。このコーナーは、一番最初の「あっこの後にピン子」の強烈なインパクトではまってしまった。それと川柳のやすみ先生同様、講師の先生がいい。北村先生のボソッを急所を一撃するひとことが実に小気味いい。
 話は変わりますが、矢田亜希子さんを久しぶりに見ました。全くブランクを感じさせませんでしたね。明日のドラマ
「刑事・鳴沢了」はちょっと見てみようかなと思っています。