映画「2012」を観て
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「2012」が公開されて約1か月になるが、客足は衰えず、かなりの興行収入をあげている。日本だけでなく、世界的に成績を伸ばしているようだ。この映画では、2012年に現在の地球が一旦終わりを告げるという、世界の終末が描かれている。これは古代マヤ人が残した暦が基になっている。古代マヤ文明は、高度な天文学を持っていた。チチェン・イッツア遺跡のピラミッドは、傾斜45度、四方の階段の合計と最上部の一段を加えると365段になる。太陽の動きだけでなく、月や金星の動きも把握し、正確な暦をつくっていた。その暦の長期暦は5125年を一周期とし、この暦が2012年12月21日にで終わっているというのである。これに呼応して巷では、太陽の極大期の到来、惑星直列、フォトンベルトへの突入など、地球終末へのシナリオが諸説飛び交っている。高度な数学の知識を持っていたマヤ人は「ゼロ」という概念を持っていた。その「ゼロ」は、次の新しいサイクルへの始まりであり、それはリセットされた新しい地球をも意味する。2012年の次には、新しいサイクル「0001年」が到来する。
    
2009年、惑星直列で太陽が活発化。地下3350mのニューデリー大学の宇宙研では、それまで人類が遭遇したことのない太陽フレアを観測する。大量のニュートリノが地球に降り注ぎ、地球の核がまるで電子レンジ状態なってきている。この地球の危機は米大統領に報告され、各国首脳のみに明かされる。政府内でもほんの十数人しか知らされない最高機密として、2012年に向け「チョーミン計画」が進められる。それは、人類の生き残りをかけた方舟の建造計画である。しかし、その4隻の巨大船に乗れるのは、選ばれた人たちと高額な乗船券を買うことのできる大富豪だけである。2012年、地核の温度が上昇し、地球の磁場が80%も減少する。売れない作家ジャクソンは、家族とともに崩壊の始まった地球を、間一髪すり抜けながら、方舟のある中国を目指す。飛行機で向かう途中、ハワイで給油する予定だったが、すでにハワイも全島が火山と化している。東シナ海で不時着を覚悟するが、幸いにも3000km陸地が動いて海は消え氷河に不時着する。必至でたどり着いた方舟だが、乗るすべを持たないジャクソン一家は果たして・・・・・
     
この映画に出てくる地球崩壊の要因は「惑星直列」による「太陽の活発化」である。しかし、「科学を語る会」では「惑星直列」による影響はないに等しいと言っていた。もうひとつ「フォトンベルト突入」説もある。我々の太陽系は、アルシオーネを中心として26000年で一周している。その途中に直角にドーナツ状のフォトン・ベルトが存在する。そのフォトン・ベルトを2000年かけ通過する訳だが、この光子(こうし=フォトン)の持つエネルギーの影響で、自然災害をもたらすというものである。来年、日本は「太陽光帆船・イカロス」を打ち上げる予定である。宇宙でこの帆船を進める力は太陽の光、つまり光子である。光子に質量はないようだが、光の粒が帆に当って跳ね返る、そのほんのわずかな力を帆いっぱいに受けて進むのである。このわずかな力も、継続して受け続けると、かなり強大な推進力になるという。そんなわくわくするような科学実験の話を聞くと、2000年をかけてフォトン・ベルトを通過するうちには、何かあるのではないかと思ってしまう。
     
映画ではVFXの技術を駆使し、全世界を襲う未曽有の天変地異を、かつて見たことのないスケールで描いている。監督からは、VFXのスタッフに「世界中を破壊したい」という指示があったという。雨あられと落ちてくる火山弾。巨大な津波に襲われ沈んでいく豪華客船や空母。世界の有名な建築物が崩壊する。大きな都市全体が、滑り込むように海の藻屑と消えていく。実際にはありえないシーンが、VFXによって次々に作り出される。さらに、逃げる車、追いかける地割れ。飛び立とうとする飛行機を追いかける道路の陥没。次々に崩壊する高層ビルと、その間隙を縫うように、すり抜ける飛行機。VFXに不可能なシーンなどない。しかし、それは決して荒唐無稽な映像ではない。世界トップレベルの頭脳集団が作り上げた、科学に裏付けられた映像である。わずか2秒のシーンに半年をかけてリアルを追及する徹底ぶりだという。しかも、それは単なるリアルではなく、いかに観客がリアルを感じてくれるかを追及しているのである。そこにこの映画のエンターテインメント性がある。この映画は、そこをひたすら楽しむのがよい。

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「2012」

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ジョン・キューザック、ダニー・グローバー

2009年/米
上映時間:2時間38分


2012/12/06 「イカロス」が、2つのギネスに認定された
2010年5月に金星探査機「あかつき」と一緒に打ち上げられた、「太陽光帆船・イカロス」がギネス世界記録として認定された。認定された内容は次の2点である。
(1)「イカロス」は、太陽光の圧力で航行した世界初の宇宙ヨットである。
(2)「イカロス」本体を撮影するために放出された2機の小型カメラが、世界最小の小型衛星である。
「イカロス」は、現在も太陽を回る楕円軌道を周回している。今回の受賞を弾みに、後継機の検討も進められるという。