3D映画
「アルビン号の深海探検」を観て
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「3D(スリー・ディー)」とは「3次元」のことだそうだ。昔風に言うなら、映像が飛び出してくる立体映画である。最近、急にこの3D映画が脚光を浴びてきている。その大きな理由はデジタル技術の発達である。奥行のあるリアルな映像とその質の高さは、昔の赤と青のメガネをかけて見ていた時代とは全く違う。上映館数も伸びているという。今回私が観にいったのは、AEON福岡ルクルの「ワーナー・マイカル・シネマズ」であるが、福岡市内で3D映画が観れるのは、いまのところここだけのようだ。AEONルクルの広場や、映画館のエントランスには誰でも3D映画が体験できるよう、テレビモニターとメガネが用意されていた。3D映画は「アルビン号の深海探検」のほか「戦慄迷宮」「ファイナル・デッドサーキット」が上映中だった。新方式とはいえ、衰えた私の目に長時間の3D映画は、かなりきついのではないかとの心配から、上映時間が40分ほどで、映像も穏やかな「アルビン号の深海探検」を観ることにした。もちろん、映画の内容も興味があったのではあるが。

そもそも3D映画というのは、どうして飛び出してきたり奥行感がでるのか。それは、専用めがねを通して入ってきた右目用の映像と左目用の映像で、脳が立体映像を作り上げるからである。デジタル技術の進歩で、この左右二つの映像がずれることなくスクリーンに映し出せるようになったという。3D映画では、スクリーン上で結ぶ通常の像に加え、極端にスクリーンより奥で結ぶ像と、極端にスクリーンより手前で結ぶ像などの情報が一緒に入ってきて、脳の中の錯覚で立体と認識してしまう。あたかも遥か奥であったり、手を伸ばせばつかめそうな至近距離であったりと、ど迫力の映像を生むのである。この脳内作業が連続して2時間も続けば、遠近両用めがねを必要としているおじさんは疲れ果ててしまうというのがこれまでの立体映画だった。しかし、「アルビン号の深海探検」を観終わった後、そのクオリティの高さを実感し、懸念は氷解した。新3D映画では、思う存分迫力ある映像にのめり込み、ストーリーを楽しむことができるようになったのである。

深海を探査する潜水艇といえば、日本の最先端技術を結集した「しんかい6500」がある。現在、有人では最も深い6527mの記録を持っている。2か月ほど前、テレビ番組で女性タレントが実際にこの「しんかい6500」に乗って水深5350mまで潜水し、深海の様子をレポートしていた。日本が世界に誇る「しんかい6500」に比べると、「アルビン号」は、潜水能力4500mと若干劣る。しかし、1964年以来、4500回を超える潜水調査を実施し、科学的調査によって深海を明らかにしてきた功績は大きい。「アルビン号」によって、初めて深海の「熱水噴出孔」とその周辺の生態系が明らかになった。映画の中では、この「熱水噴出孔」と、その周辺に生きる生命体の詳細を見せてくれる。「硫化水素」という猛毒から栄養を作り出し、これを目当てに不思議な生き物たちが生息している。ここだけで、ひとつの世界が形成されているのだ。その楽園も、新しい海底火山の噴火で、あっという間に破壊されてしまう。しかし、また新しい環境の中で、一から形成しなおされていく。映画では、この過酷な中で生きていく、生命力のたくましさを見せてくれた。

3Dを映写する新方式は、いくつかあるようだが、この館の3D方式は「リアルD方式」である。観賞用メガネのつるに「REAL−D」と印刷されていた。メガネのコストも安いらしい。今回使用したメガネをもらうことができたのもコストが安かったからだろう。非常に軽いメガネで、私のようにメガネをかけているものでも、全く問題なかった。ピエトロ・ジェルミ風の形をした、一見、薄い色のついたサングラスである。メガネをかけないでスクリーンを観ても特に変わったところがない。ところが、メガネをかけてスクリーンを見るとまるで別世界になる。アルビン号がゆっくり進んでいくと、ほんの目の前をマリン・スノーが通り過ぎて行く。奥行きが深く、今まで体験したことのない立体感に感動する。上映前に流される数本の予告編は、みな3D映画だった。画面が激しく切り替わる映画も、この予告篇で体験できた。私にも特に問題なく楽しめたので、次回は長編を観てみようと思う。ブーム到来の予感である。

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2009年作品
アルビン号の全容
運用: ウッズホール海洋研究所
母船: アトランティス
全長: 7m
重量: 17トン
動力源: 電池
潜水能力: 4500m
コクピット: 直径2mの球体
厚さ5cmのチタン製
乗員: 3名
トイレ: なし
覗き窓: 直径10cmの窓が3つ
推進: 6つのスクリュウで
進行方向を自在に変える

映画の中の紹介より
ワーナー・マイカルのエントランスでは、誰でも3Dが体験できるよう、テレビが用意されている