宗像大社・辺津宮
宗像大社・みあれ祭 随筆のページへ

トップページへ

File No.091001

市杵島姫命がお出迎え
のためご出港

300隻の大船団が
姫神様をお守りする

三女神がお揃い
になりご入港

宗像大社・辺津宮に
お着きになった三女神

宗像大社の秋季大祭に行ってきた。せっかくだから、JRの列車と西鉄バスの乗り継ぎで、ゆっくり小旅行を楽しんだ。秋季大祭は宗像大社の年中行事のなかでも最も大きな祭礼である。なかでも一日目に行われる海上神行「みあれ祭」では300隻の舟が海上を埋め尽くし壮観である。気になる天気だが、何か目に見えない力が働いたのか、前後が雨で当日だけ晴れになった。辺津宮には、まだ人影もまばらな早朝に着いた。何はともあれ、まずは参拝を済ませ、おみくじをひいた。私としては最もいいと思っている「小吉(少しだけ縁起がいい)」だった。辺津宮から神湊へは、さらにバスで移動する。大祭のため臨時バスが運行されていて、そう待つこともなく乗れた。神湊にはもうかなりの人が来ており、自家用車は駐車場の前で列をなしていた。やはり、こう言うときには列車やバスを楽しみながら来るのが一番いい。防波堤には隙間なく見物客がいたが、一か所少し空いているところを見つけ「ここ、いいですか」と言うと、こころよく「どうぞ、どうぞ」とさらに開けてくれた。天気もいい、見晴らしもいい、おみくじもよかった。「みあれ祭」を存分に楽しんだ。


三世紀における交易の窓口は、一大率を置く伊都国であったが、当時から宗像には、伊都国・奴国とは違う文化を持つ勢力が対外交流をしていた。4世紀以降になると、その勢力の一つが玄界灘を制し、ヤマト王権と結び、航海はもちろん、朝鮮半島との対外交渉でも力を発揮するようになる。それが、豪族・宗像君である。大陸や朝鮮半島からの文化や資源を得るため、あるいは軍事的にも、玄界灘の航海の安全は国家的に重要だった。壱岐・対馬・宗像からほぼ同じ距離に位置する沖ノ島が、国家的な祭祀が行われる聖地となったのは必然であったろう。宗像地方で祀っていた神は、ヤマト王権による祭祀が執り行なわれることによって、国家的な神となったのである。祭祀は岩上祭祀→岩陰祭祀→半岩陰・半露天祭祀→露天祭祀と変遷し9世紀の遣唐使廃止まで続く。こうして古来より神宿る島として崇められてきた沖ノ島は、我が国の古代祭祀の流れを見ることができる重要な史跡なのである。現在においても沖ノ島の掟は厳しく守られている。


宗像大社の祭神は「宗像三女神」と呼ばれる三姉妹の神様である。三女神とは、それぞれ沖津宮(おきつみや・沖ノ島)の田心姫神(たごりひめのかみ)、中津宮(なかつみや・大島)の湍津姫神(たぎつひめのかみ)の、辺津宮(へつみや・宗像市田島)の市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)である。三女神とも美人だそうだが、なかでも市杵島姫命はとびきりの美人らしい。「古事記」によればアマテラス大神(おおみかみ)とスサノオ尊が高天原で誓約(うけひ)によって、大神がスサノオ尊の剣を噛み砕いて吹き出した霧のなかから生まれ、玄界灘の守護神になるよう命じられたとなっている。海上神行では、まず市杵島姫命が舟に乗りこみ、沖ノ島と大島からお出ましになるお姉さまたちを海上でお迎えする。私としては、ここが実にいいと思っている。一年に一回お出ましになるお姉さまたちに会える喜びがよく表れている。そんな姫神様のやさしさが、命がけの仕事に携わる海人たちの心を包み込んでくれたのではないだろうか。本来はちゃんとした意味があるのかもしれないが、わたしは勝手にそう思っている。


沖ノ島は宗像大社が管理する神体島である。神体島とは、島自体が御神体として祀られている島である。当然、島への立ち入りは厳しく制限され、基本的には神官のみである。ここで古代より執り行われてきた国家的祭祀は、連綿と引き継がれ守られ、日本人の心を形成してきた。最近、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界遺産の暫定リストに追加掲載された。世界遺産に登録する意味は、「人類共通の貴重な財産」として保護することにある。ところが、白神山地(青森県・秋田県)のブナの木は無残に傷つけられ、屋久島(鹿児島県)では増え続ける観光客に屋久杉の根が踏まれ、その人為的被害は深刻を極めている。有田町(佐賀県)では、国史跡の窯跡が盗掘にあっている。心ない人から御神体島を絶対に守るだけの自信はあるのか。平泉(岩手県)が登録延期されたのは、浄土思想が西洋的文化から理解されなかったからだという。本当に日本人の心の深い部分を、ユネスコの審査員に理解してもらえるのか。そここそが沖ノ島の一番重要な部分である。宗像市のあちこちに「沖の島を世界遺産に」という看板があった。世界遺産登録には、なによりまず日本の重要な文化を絶対に守り抜くという気概がなければなるまい。


随筆のページへ トップページへ


「おみくじ」のお告げ  運勢:小吉
“ 長閑(のどか)なる 春の野中を家人(いえびと)と 心安けく(こころやすけく) 行く心地(ここち)かな ”