映画「サブウェイ１２３」を観て

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File No.090911

　ニューヨーク地下鉄、午後２時。レキシントン・アヴェニュー線のペラム123号が急に停車した。NY運行司令室のウォルター・バーガー(デンゼル・ワシントン)が、運転室に呼びかけるが返答がない。この時123号は４人の男にジャックされていた。一味の首謀者はライダー(ジョン・トラボルタ)と名乗る男。ライダーたちは、車両を１両だけ切り離し、42丁目の北に停車させた。人質は運転手を含めて19人。ライダーは「NY市長に連絡して１時間以内に1000万ドル用意させろ。１分遅れる毎に1人ずつ殺す」と要求してくる。警察から人質救出班のカモネッティ警部補が到着し、犯人との交渉にあたろうとするが、ライダーは激怒し人質の運転手を射殺、ガーバーを再び交渉窓口にするよう要求する。運行司令室は凍りつき、ガーバーが再び交渉の窓口につく。身代金を載せた輸送車は、連邦準備銀行からニューヨークの市街を４２丁目へ向かって激走する。そして、ライダーは身代金受け渡し役にガーバーを指名する。ガーバーは死を覚悟し現場に向かう。

　この映画は、1974年に映画化された「サブウェイ・パニック」のリメイク版である。「サブウェイ・パニック」では、ウォルター・マッソーとロバート・ショウが演じていた。名前を聞いただけで、なつかしさがよみがえる。今回の「サブウェイ１２３」では、この二人をデンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタが演じている。原作とはかなり違っているが、現在のニューヨークを舞台に、かなり迫力のある映画になっている。ガーバーとライダーの息詰まる駆け引き、いつしか微妙につながる二人の心。身代金受け渡しのタイムリミットをクリアするための必死の攻防。ライダーが自分の意に沿わず人質を射殺するときに見せる冷酷さには戦慄が走る。また撮影は、今現在のニューヨークをそのまま撮影しており、生のニューヨークを見ることができるのも魅力である。ガーバーがライダーから身代金運搬を指名され、ヘリで向かうときの空から見るニューヨークがいい。この時、カモネッティ警部補が言った言葉が印象的だ。「すばらしい景色だ。守りがいがある」。

　 地下鉄レキシントン・アベニュー線は、実際にニューヨークを南北に走っている。舞台になった６番線は、ブロンクスのペラム・ベイ・パーク駅からロウアー・マンハッタンのブルックリン・ブリッジ駅までのローカルである。ペラム123号とは、ペラム・ベイ・パーク発１時23分の列車ということだ。この列車が最初に止められるのが57丁目であるから、丁度セントラル・パークの南端あたりになる。駅は南下するごとに数が減ってくる。42丁目のグランド・セントラル駅の少し北で人質をとった犯人たちの車両が停車する。身代金を手にした犯人たちが、車両を降りるのが33丁目付近だ。犯人たちは車両を降りる前に「68丁目からコニー・アイランドまで、信号を全部青にしろ」と要求する。ここが私にはちょっと理解できなかった。６番線は、ブルックリン・ブリッジまでで、同じ路線の４番・５番のエクスプレスはブルックリンへは行くが、コニーアイランドまでは行っていないようなのだが・・・。最後にガーバーが家に帰るとき、７番線に乗っていたので、おそらくガーバーはクイーンズに住んでいるのだろう。

　 先月の新聞に｢国交省方針：新幹線システムを輸出：日本企業の受注後押し｣と出ていた。高速鉄道構想が進む米国やブラジルで、日本の新幹線システムの売り込みを本格化するという。日本の鉄道技術の高さが海外では十分に認知されていなということもあってか、先ごろ｢鉄道総合技術研究所｣が中心になって｢鉄道国際規格センター・準備室｣が立ちげられ、国際標準獲得に向け動きだした。ところが、ニューヨークの地下鉄には、すでに川崎重工の車両がかなり導入されている。この頁のタイトルの下に掲載した車両の画像は、今回の映画のパンフレットに載っていたものだが、おそらくこれは川崎重工のR142と思われる。ガーバーは、導入車両選定において、日本企業からの収賄の疑いをもたれ、停職寸前という設定である。ライダーに脅され、35,000ドル受け取ったと白状するが、ガーバーはこう言う。｢決めたのではない。日本製を推薦しただけだ｣。これは日本製の信頼性の高い車両が、ニューヨーク地下鉄に多く導入されていることがベースにある。この部分は1974年の｢サブウェイ・パニック｣と大きく違うところだ。