邪馬台国・近畿説をぶった斬る 随筆のページへ

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File No.090719

今日(7月19日)、テレビ番組「たかじんのそこまで言って委員会」で「邪馬台国」を取り上げていた。そもそも「邪馬台国論争に決着をつける」と言うには、わずかなこの時間では所詮無理がある。ゲストは九州説から高島忠平氏、近畿説から春成秀爾氏だった。番組のなかで「箸墓古墳がつくられた年代は(炭素14法で)240年〜260年と断定した」と紹介していた。近畿説側の春成氏は、国立歴史民族博物館(以下・歴博)の名誉教授ということなので「あ〜、この人が"炭素14年代測定法"のA級戦犯か〜!」と思って見ていた。数日前、西日本新聞に福岡大学の武末純一教授が、「炭素14年代の諸問題」として寄稿されていた。それ以前にも「季刊・邪馬台国」(安本美典教授・責任編集、梓書院発行)の100号記念号や次の101号でこの炭素14年代測定法(以下・14C)について徹底追及していた。その中で安本教授の言われている一文が、すべてを言い表している。「(箸墓古墳の発表は)幅を持った多くの推定値のなかから、"自説"に都合のよいものを取り出して発表しているように見える・・・・データから仮説を導きだしたのではなく、はじめに"仮説ありき"で、その仮説に基づいて読み取った結果を、新聞に発表しているように見える」。

武末教授が指摘する問題点をここで整理してみる。まず14Cの前提が(1)過去数万年間は14Cの濃度は一定であった(2)この地球上のどこでも14Cの濃度は一定である----という条件のものである。ところが、過去の14Cの濃度が一定でなく、増減を繰り返しているため、世界共通の標準変化曲線(以下・較正曲線)を作成した。ところがこれも、深い海に接する陸地では、古い時期の二酸化炭素が溶け込んだ深海水が供給されるなど、大気中の14C濃度は地域によっても異なっていた。そこで歴博は日本版の較正曲線を作り始めた。しかし、この日本版の較正曲線も、日本の中の地域差や、なぜズレが起こるのか、など未解決な問題があり、いまだ未完成だという。つまり、プラス・マイナス10年という幅に絞り込めるようなものではなく、断定できる状態ではないという。安本美典教授も「14Cによる測定は、当然誤差を伴う。箸墓古墳の築造年代などであれば、100年ぐらいの幅をもってしか推定できないはずのものである」と述べられている。しかも、このあやふやなデータに基づく結果を、新聞報道で既成事実にしてしまおうという姑息な手段にでた歴博だが、これに手を貸したのが、大手A新聞というから話が出来すぎである。

「たかじんのそこまで言って委員会」は、毎週楽しみに見ている。出席者の顔ぶれが実にいい。まずは、いまやご意見番の大御所として君臨する三宅先生。だいたい過去のご意見番は、威張りくさっているような印象があるが、三宅先生は、いつもにこにこしている印象なのに風格がある。宮崎さんと勝谷さんの静と動の組み合わせもいい。紅一点の金美齢さんは、見目麗しく才知あり、怒るざこば師匠には納得がいく。これに大阪府知事の橋下さんがいたわけだから最強である。このアクの強い組員どもをまとめるには、たかじん親分の存在感あってのことだが、辛坊若頭の鋭い仕切りもまたさすがである。今日のゲストに森本敏氏が出席されていたが、私のパソコンに個人名でフォルダをつくっている人が4人いる。そのなかの一人が森本敏氏である。あと、こちらも見目麗しく才知ありの櫻井よし子氏、竹中平蔵氏、百地章氏の4人である。ちなみに日見子に、コメンテーターは誰がいいか聞いてみた。宮崎哲弥氏、金美齢氏と、ここまでは何となく予測がついたが、あと一人屋山太郎氏がいいと言っていた。

今日の番組の中の説明で、高島先生がこう言っていた。「近畿説をとる考古学者には、意識的な時代の操作があって、吉野ヶ里遺跡は前の時代だと言っているが、実は紀元前3〜4世紀から、紀元後3〜4世紀の約700年間継続して存在した集落。吉野ヶ里を充分知らない。紀元1世紀から3世紀にかけて巨大化していく。邪馬台国時代に最大の規模と内容が整う。近畿説の人には、そういうものがあると都合が悪い」。これは、最初に書いた安本美典先生の話とも相通じるものがある。「ナポレオンの辞書には"不可能"という文字はない。近畿説の辞書には"我田引水"という文字しか載ってない」。卑弥呼のもらった100枚の鏡だが、近畿説の方々は、数百枚も出土し棺の外に粗雑に置かれている「三角縁神獣鏡」がその鏡だと言っている。その鏡が4世紀の古墳からしか出土しないと言えば「伝世鏡」と言い、中国からは一枚も出土していないと言うと、「特鋳品」だと言う。14C問題一つとってみても、100年のスパンの端の端を、かろうじて"かすったら"それを大黒柱に据えるために、なりふりかまってはおれないということがよく分かる。近畿説の方々は、実に哀れで可哀そうな人たちである。

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古代日本の総合雑誌 安本美典責任編集
「季刊・邪馬台国」100号記念号 (梓書院 2008年12月発行)

  特集 「箸墓古墳の年代・虚構の報道」
  〜おかしいぞ!!国立歴史民族博物館の炭素14年代、最近の発表〜