映画「スター・トレック」を観て

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File No.090618

「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。これは人類最初の試みとして、5年間の調査旅行に飛び立った宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である」かつてのテレビシリーズは、若山弦蔵さんのこんなナレーションで始まっていた。今回の映画は、そのシリーズ(宇宙大作戦'66〜'69)誕生前のエピソードである。若きカークやスポック、マッコイがいかにしてUSSエンタープライズの乗組員になったのか。バルカン人の父と地球人の母を持つスポックが、「感情」というものに揺れ動く心なども描かれている。物語は、宇宙大作戦と食い違うところもあるようだが、パラレルワールドでの出来事という設定になっている。今回戦う地球外生命体は、ロミュラ人である。ロミュラ人の祖先は、バルカン人と同じ系統の人種であるが、バルカン人が知的で誠実な社会を形成しているのに対し、ロミュラ人は破壊を好む正反対の人種のようだ。VFXを駆使した強烈な映像は、23世紀の宇宙での戦いを余すところなく描いている。

時は2233年、惑星連邦の宇宙船USSケルヴィンは、重力センサーが異常値を示す。そこに突然現れた巨大なロミュラの掘削船ナラーダ。フェーザー砲による反撃も、全パワーによるシールドもきかない。「15分経ったら船を捨てろ」と言い残してナラーダに向かう船長。船長を失ったケルヴィン号に、全員脱出命令が下る。しかし、ケルヴィン号は、敵の攻撃により手動でしか動かない。急きょ船長となったジョージ・カークは、脱出した船上で誕生したばかりのわが子に"ジェームス・タイベリアス・カーク"と名付け、脱出した800人の命を守るべく、ケルヴィン号で敵を食い止め散っていく。これが、USSエンタープライズ号のカーク船長が生まれた時の物語である。それから25年後、バルカン星から緊急救難信号が入る。この日はエンタープライズNCC1701が、処女航海に出る日だった。緊急事態に最大ワープでバルカン星に向かうエンタープライズ号。そこにいたのは、かつてのネロ船長率いる、にっくきロミュラの巨大ナラーダ号だった。そして、ネロが仕掛けた赤色物質によるブラック・ホールで、バルカン星は消滅の危機に・・・・。

今回、24世紀からタイムトラベルしてきたスポックを、宇宙大作戦(TOS)のスポック役、レナード・ニモイが演じている。SFにタイム・トラベルは、必須アイテムである。1986年の映画「故郷への長い道:スター・トレック4」は、23世紀と20世紀(1986年)間をタイム・ワープする話だった。異星からの探査船が発するエネルギーにより地球が死に直面する。この探査船とのコミュニケーションは、すでに絶滅したザトウクジラしか出来ない。そこで、20世紀へタイム・ワープしてザトウクジラを連れ帰り探査船と会話させ、地球を救うというものだった。テレビのTOSでも、タイム・トラベルをテーマにしたものはいくつもある。「宇宙からの使者・Mr.セブン」ではエンタープライズ号が20世紀の地球に戻ってくる。このときは1975年に人類が核による絶滅の危機をいかに乗り越えたか、歴史上の調査にやってくるというものだった。このときのエンタープライズ号は、言ってみれば未来から来たUFOということになるが、人類に察知されないように"電磁スクリーン"でカバーして地球の周回軌道に乗る。結局、Mr.セブンの働きで地球は救われ、歴史が変わることはなかった。

連邦艦隊の最新鋭艦エンタープライズが調査のために航行するのは、我々の住む天の川銀河系である。この中には少なくとも1000億個の恒星が存在するという。スター・トレックには、メデューサ人、ケルパ人、エラス人など、さまざまな地球外知的生命体が登場する。先ごろNASAが打ち上げた「ケプラー宇宙望遠鏡」は、はからずも天の川銀河系内の地球型惑星の発見を目指している。この時代にあって「スター・トレック」は、40年以上も前のテレビシリーズでありながら、今だに新しい映画でよみがえるほどの根強い人気と先進性がある。宇宙という未知の世界に対する我々の好奇心は無限に広がる。ケプラー打ち上げの意義は「この広大な宇宙の中にあって、我々人類ははたして孤独なのか」を探査することだという。それはまた、人類が生き残りをかけ、宇宙へ飛び立とうとする夢でもある。先日、ハッブル宇宙望遠鏡の修理が無事完了した。これで、観測能力も更に向上し、少なくとも次の宇宙望遠鏡打ち上げまでは大丈夫のようだ。今や宇宙の誕生から137億年と推定させたこのハッブル宇宙望遠鏡の活躍する時代である。いつの日か必ずやスター・トレックの時代が来ることを信じたい。

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パンフレット表紙

完成したエンタープライズ号

1986年の劇場映画「スター・トレック4」

監督 : レナード・ニモイ
キャスト☆
カーク : ウィリアム・シャトナー
スポック : レナード・ニモイ
マッコイ : ディフォレスト・ケリー
2009年 :  アメリカ映画
監督 :  J.J.エイブラムス
キャスト☆
カーク :  クリス・パイン
スポック :  ザッカリー・クイント
未来のスポック :  レナード・ニモイ
マッコイ :  カール・アーバン


2009・06・27 土星の衛星「エンケラドス」に液体の海?
土星の衛星のひとつ「エンケラドス」の表面の氷の下に、液体の海がある可能性が高いと、英科学誌「ネイチャー」に掲載された。無人探査機「カッシーニ」が分析した結果、地球の海と同じように塩が豊富に含まれているという。生命誕生に適した環境かもしれないということだから、最優先して地球外生命体の探査をしてほしいものだ。どんな生命体がうごめいているのか、考えただけでもワクワクする。