今、そこにある危機 随筆のページへ

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File No.090409

北朝鮮の長距離ミサイルは、一応予告に近いコースを飛んだようだ。「人工衛星」と言ってはいたが、真の目的はミサイル技術の確認のようだから、"失敗とは言えない"くらいのところだろうか。日本は、万一日本領土内に飛来するようなことがあれば、これを迎撃するため万全の備えをした。イージス艦「こんごう」と「ちょうかい」を日本海に、太平洋側にはイージス艦「きりしま」を展開。秋田・岩手と、東京周辺にはPAC3を配備した。「こんごう」と「ちょうかい」は、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載している。打ち上げを前にして、一部に"迎撃は技術的に困難ではないか"などと雑音も聞こえていたようだが、自衛隊法に基づき、現在とりうる最大の防衛態勢によって国民を守ることは当然である。「迎撃は戦争を意味する」と北朝鮮は言っていたが、今回「破壊措置命令」をはっきり公表して臨んだことも、大いに評価したい。とは言うものの、結局何事もなく終わってほっとしたというのが正直なところだ。


今回、有事の際の情報伝達システムが、実にうまく機能したように思う。4日には、一刻も早く国民に知らさなければと、極度の緊張状態にあったのか、フライングをしてしまったが、人間には学習能力がある。5日の対応は全く問題なく推移した。11時30分の発射されると、32分には政府発表があり、Em−netを通じて流された情報は、34分には防災無線で地域住民に知らされた。私もテレビの速報で、ほとんど遅れなく発射を知った。常々、地震の速報なども即刻流されており、日本の情報伝達システムは実に優れている。4日のフライングも、逆に考えれば、瞬時に情報が国民にまで届いたからこそ問題も大きくなったと言えなくもない。今回は伝達手段にEm−netを使用したが、本来「国民保護法」では「J−アラート(全国瞬時警報システム)」を使うことになっているらしい。J−アラートは、人工衛星経由で防災無線などを自動的に起動させるので、住民へ警報が即時に伝わるという。


昨日の新聞に「米、F22生産中止へ」と出ていた。無敵の戦闘機という評価ながら、あまりのコスト高で断念したようだ。日本のF−Xも、F22は有力な候補だったが、アメリカは、F22が高性能であるがゆえに情報開示を渋り、禁輸措置をとっていた。これではっきり、F22の可能性はなくなった。F−4EJの老朽化で待ったなしだが、聞くところによると「F−15改」でしのぐようだ。どれくらいの時間の余裕があるか分からないが、F−35という可能性も出てきたのではないか。米軍は、米国内に部隊を置いて、有事の際はC−17で兵員や兵器を輸送しようとしている。そうなればF−22を軸に制空権を握ることが絶対条件になろうが、主力で実戦配備されるのはやはりF−35だろう。台湾も次世代戦闘機は、F−35を考えているようだ。日米合同訓練などの機会が増えていけば、当然同じ機材の方が有利だ。以前、私はもう少し待って、F−35ではどうだろう、と書いたことがあるが、それが現実になりつつある。


北朝鮮は、今回打ち上げに使われた舞水端里の約5倍のミサイル発射施設を新たに建設中だという。どんなに世界が話し合いのテーブルにつかせようが、合意しようが、核の開発をやめる様子はない。北朝鮮にとって"約束は破るためにある"というのが現状だ。すでに、核弾頭10個分のプルトニウムを抽出したと見られている。実戦配備しているノドンに核弾頭を搭載して、日本全土どこでも狙い撃ちできる状況にある。過日、中国も戦略ミサイル部隊が、巨大な訓練基地を建設した、と新聞に出ていたが、中国も新型の中・長距離弾道ミサイルの装備増強が加速しているようだ。米軍も「最も注意すべきは、台湾海峡周辺の中国軍のミサイル戦力」と言っている。こういう軍事的脅威にさらされている現状を考えれば、イージス艦やPAC3の更なる整備は必要だろうし、「J−アラート」にいたっては、いまだ整備率15%だという。今回のミサイル発射は、現実の脅威を肌で感じ、日本の国防をあらためて考える機会になった。

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2009/05/24 F-Xは「F-35」に決まりか?
 次期主力戦闘機(F-X)の選定で、空自は依然「F-22」の可能性を捨てていないようだが、米国防長官が「日米防衛相会談」で「F-35」の採用を打診したという。会談でゲーツ長官は、米軍の次世代戦闘機をF-35に一本化する方針を決めたと、日本へもF-35の採用を暗に求めた。米はさらにシーファー国防副次官補を日本に派遣し、追い打ちをかけるようだから、F-35採用の可能性はかなり高くなった。F-Xは「F-35」に決まりか?
次世代型戦闘機 F35 (西日本新聞・ワードBOXより)
 米国と英国、イタリア、オランダ、オーストラリア、シンガポールなどが共同開発中で、レーダーに捕捉されにくいステルス性と超音速巡航能力を備えている。メーカーはロッキード・マーチン社。1機約90億円と見込まれている。米軍は冷戦期の主力だったF15など第4世代戦闘機の後継としてF22とF35の開発に入り、次世代型(第5世代)と総称される。米軍はF22を配備済みだが、外国には禁輸措置を継続。米政府はコスト高などを理由に新規発注停止を表明した。
2009/06/21 新「防衛大綱」(2010〜2014年度)基本方針 判明
今年末決定する新防衛大綱の基本方針が判明した。主なものは、まず「防衛予算を増額」させることへの転換。さらに「自衛隊員の増員」「MDシステムの強化」「敵基地攻撃能力の保有」「サイバー攻撃への対処を充実」などである。骨子は下記の通り。
新防衛大綱基本方針の骨子(西日本新聞記事より)
☆周辺地域の軍事力の近代化、活発化
☆現在の防衛力は各種事態への対応に限界。実効的な対応が必要。
☆装備、要員の縮減方針の転換を図る必要。
☆対応能力を常続的に運用し高い能力を示すことで各種事態を抑止。
☆情勢の変化を踏まえた選択肢の確保。→(これが「敵基地攻撃能力の保有」のこと
☆費用対効果を高めるよう防衛力の役割を再整理。
☆国際協力活動への積極参加。防衛交流の活発化。
2009/07/31 西日本新聞  米有力議員が F-22 調達断念
 【ワシントン共同】日本が次期主力戦闘機の有力候補としている最新鋭ステルス戦闘機F22をめぐり、追加調達を主導してきた米上院ダニエル・イノウエ歳出委員長(民主党)と下院のジョン・マーサ国防歳出小委員長(同)が29日までに、調達をあきらめる考えを共同通信に明らかにした。
 強い予算策定権限を持つ有力2議員の意向を受け、米軍向けのF-22の生産中止は確定的になり、輸出仕様が実現しても価格は現在の1機200億円〜300億円からさらに高騰するのは必至。米国防省の反対も根強く、日本導入は絶望的となった。
 イノウエ氏は、上院が予算の大枠を規定する国防権限法案からF-22調達条項を削除したことを理由に「国防歳出法案で予算化できそうにない」と事務所を通じてコメント。マーサ氏も「論争は終わった」とした。
2009・10・05 西日本新聞 「F35情報料 10億円」・・・性能開示で米要求
航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)選定で、日本が有力候補に位置付けている次世代戦闘機F35の性能に関する情報(※)提供料として、米政府が約10億円を要求していることが3日わかった。複数の日米関係筋が明らかにした。レーダーに捕捉されにくいステルス性能については、購入が決まった段階で提供する意向も伝達した。今月20日に来日するゲーツ国防長官と北沢俊美防衛相の会談で、F35採用を軸に調整する見通しだ。
(※)戦闘機の詳細な攻撃能力に加え、一定の時間にどれだけ早く旋回できるかなど機動性に関する性能のデータとみられる。