映画
「ハッピー・フライト」
を観て
FileNo.081119
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鉄道に興味がある人を“鉄ちゃん”と言うようだが、私は飛行機にも興味があるので自分のことを“テツヒコ”と称している。テツヒコとしては、この「ハッピー・フライト」を見ないわけにはいかない。先日、福岡空港に、綾瀬はるかさん、田辺誠一さん、矢口監督が来て「トークライブ・ショウ」が行われた。綾瀬はるかさん、開口一番「こんにちは、綾瀬です。ツリーもあり、冬になったなあと思う今日この頃でございます。風邪などひかぬようお気おつけください」。独特の間合いで話すそのド天然ぶりには思わず笑い、引き込まれてしまう。映画では、巨大なB747-400ジャンボが主役である。矢口監督はこのジェットを「彼女」と呼んでいたという。その「彼女」を安全に飛ばし、お客さまに満足していただく旅を提供するために、様々な部署が懸命に働く。そんな映画なのだが、なんと言っても、主役であるB747-400の迫力ある姿が見れるのが魅力である。ネタバレになるので詳しくは書かないが、ド迫力のシーンもある。

この映画の主役は「B747-400」通称「ダッシュ400」と言われるジャンボ・ジェットである。登録記号は「JA8096号」で、実際に国際線に就航している。ダッシュ400は、初期のクラシック・ジャンボとは電子機器が全く違う。コンピューター化によって、2人乗務が可能になりANAでは「テクノ・ジャンボ」(JALでは“スカイ・クルーザー”)と呼んでいる。1990年代初めに登場し、ANAの世界での存在を大いに高めた機だ。しかし現在では、777の登場で次第に世代交代が行われつつある。ANAの会社概要を見ると2007年と2008年では747-400の保有機数が23機から17機に減っている。ANAフリート戦略の中で、ダッシュ400の退役に加速度がついている。当然、初期に導入されたJA8096号機も例外ではなく、すでに売却も決まっている。初期導入機のため8096のロゴは「全日空」だが、映画ではCG処理で「ANA」になっている。だが映画の最後、エンドロールの直前に、一瞬だけ「全日空」と書かれた実写の8096が出てくる。

最近の全日空といえば、B787の話題だろう。ローンチ・エアラインとして、世界に先駆け引き渡しを受け、華々しく北京五輪でデビュー予定だった。ところがボーイング社の数回にわたる延期に加えて、9月にはストがあり、先日解決はしたものの、2年〜3年納入遅れの可能性も出てきている。そもそも、B787はANAが50機発注したことで開発がはじまったものだ。怒りが収まらないのはANAである。損害賠償請求という話もあっていたので「ANA航空教室」
(注1)で質問してみたが「雲の上のことですので・・・」とうまくかわされてしまった。エアバスA380を検討しているといううわさもあったが、他の機種への変更はないという見解だった。素人の私が考えても、方向性が全く違うので、これはないだろう。787は機体の50%に炭素繊維を使い、徹底した軽量化を図っている。その大きな役割を果たしているのが日本の企業群である。三菱重工業は先日、航空・宇宙事業の09/03期受注見通しを500億円減額した。この異常な遅れは日本としてもただ事では済まされない。

お客様を乗せて飛行機が飛ぶには、その裏で様々な部署が関わりあっている。映画ではパイロット・CA・OCC
(注2)・整備士・旅客スタッフ・航空管制官などが登場する。それぞれがアクシデントが発生しないように、細心の注意を払う。しかし、万一アクシデントが発生したら、それぞれの部署が連携し、より早い正常化にむけて全精力を注ぎ込む。そこには“プロとしての知識”と“積み重ねてきた経験”による“的確な状況判断”の集大成を見ることが出来る。「ANA航空教室」で、整備士の人に“水平尾翼”についての質問をしたとき、メカニズムと安全性の詳しい話のあとに、こんなことを言っていた。「車は、故障すれば路肩に止めればいい。しかし、飛行機はそういうわけにはいかない。無事着陸させるために、あらゆるところに二重、三重の安全が確保されている。だから、飛行機は非常に安全な乗り物なんです」。映画の中でも、飛行機を怖がる客にこんな話をする。「飛行機に毎日、毎日乗ったとしても、事故に遭遇するのは400年に一回です」

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(注1)2008年9月、福岡空港「スカイフェスタ」にて開催
(注2)OCC=オペレーション・コントロール・センター

STORY
公開:2008年11月
監督:矢口史靖
出演:田辺誠一 ・ 綾瀬はるか
 舞台は羽田空港。ホノルル行きANA1980便は定時出発に向け、それぞれの部署が忙しく働いている。
 コー・パイ鈴木和博(田辺誠一)は、今日の操縦が機長昇格の最終試験だ。当日の試験教官は、温厚な望月機長(小日向文世)なので鈴木は安心していた。ところが望月機長は風邪でダウン、代わりに来たのがその厳しさで、泣く子もだまる原田機長(時任三郎)だった。それを知った鈴木の緊張感は一気に高まる。
 一方、新人CA斉藤悦子(綾瀬はるか)は、この1980便が国際線初フライトだ。チーフパーサーは“鬼チーフパーサー”として鳴り響く山崎麗子(寺島しのぶ)。のんきな悦子の態度を一喝。悦子の緊張感も一気に高まる。

2008・11・10 トークライブ会場
福岡空港(国際線ターミナル4F)
映画の主役となったJA8096号機。
売却も決まり、もうすぐ退役
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「お疲れさま クラシック・ジャンボ」
 日航が所有するクラシックジャンボ(747-300)の最後の便が31日、ホノルルから成田空港に到着した。退役を記念するセレモニーで、機長らに花束が手渡され、出迎えた関係者やファンから大きな拍手が起こった。歴代の制服を着た客室乗務員も並び、花を添えた。
 大型機の先駆けとなったクラシックジャンボは1970年代から活躍。大量航空輸送を実現したことで日本人の海外旅行を身近にし、高度経済成長を支えた。
 計器類を監視する「航空機関士」が乗務していたが、退役で日本の空から消える。