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FileNo.061106

吉野家の牛丼が2004年2月以来、2年7ヶ月ぶりに復活した。10月と11月は1〜5日の限定販売で、12月からは昼の時間に限定して毎日販売するという。さすがに駐車場入り口には警備員二人が出て誘導していた。値段は以前に比べて100円程上がっているが、これでもコストが上がっているので、利益にそれほど貢献しないらしい。それはさておき、とにかく久しぶりである。私は、牛丼を食べる時に“紅生姜”がないといけない。これが牛丼の味を引き立ててくれる。“つゆだく”で食べる人もいれば、“コショウ”を死ぬほど振りかけて食べている人もいる。人それぞれ味わい方は違うものだ。店内には「米国産牛を使用しています」と大きな張り紙がしてあるが、だれも気にしている様子はない。そんなことは百も承知で、待ちに待って食べに来ている人ばかりだ。しかも、吉野家で使っている肉は「ショートプレート」という特定危険部位に該当しない部分だそうだ。

とは言うものの“食”に絶対安全などありえない。BSEのようにセンセーショナルには取り上げられないまでも、我々の周りにはいたるところに危険が存在する。これを全部排除することは不可能だ。山奥で仙人みたいな自給自足の生活をしようとも、中国で汚染された雨が降ってくる。食品添加物などは、使い放題である。米牛肉にしても、加工・調理品などは原産地表示の義務がない。ましてや“原産地偽装”に至っては何を信用していいかも分からない。今日安全なものでも、明日もまた安全とは限らない。日見子は「人間の体が、ある程度浄化能力があるにしても、どれだけの量を排除できるのか分からない。なるべく少なく摂るように心がけるしかない。少なくとも同じものを集中して大量に摂らないことが大事」と言っている。毎日の食事では、同じメニューは必ず一ヶ月以上空け、同じ素材ならなるべく間を空けているようだ。要は自覚して食べることが重要なのである。

私が勤務していたころ、会議で当時の社長(現会長)から経営についてこんな講和があった。「理念は経営の根本であって、最も重要なものです。したがって理念なき経営は経営ではありません。理念や倫理観がないのに、経営が永続するはずがありません」。更に「経営はリーダー、環境、あるいは組織によって“ぶれやすい”ものです。原理・原則がぶれない経営こそ大事です」。「通期、黒がいいでしょ。何で黒黒にできないの」と暗に、架空売上で粉飾決算を指示したという、どこかのIT企業の社長に聞かせてやりたい話だ。吉野家は、今回の米国産牛BSE問題に対して、「吉野家の味を守る」としてかたくなに米国産使用にこだわり、主力商品の販売を休止してきた。当然、厳しい経営を強いられるが、「ぶれない経営姿勢」を見せてくれたことで、その評価は上がったはずだ。しかも、06年8月中間連結決算は、牛丼再開を待たずして純利益2億円の黒字化を達成している。

先に書いたように“食”に絶対安全などありえない。食べるかどうかは我々消費者の選択である。新聞(10月21日)によれば、輸入量は禁輸前の5%にしか過ぎないという。私としては、“吉野家の味”を守り通した“ぶれない経営姿勢”、政府の安全基準に加え、吉野家自身による、生産過程と品質のチェック、再開前にすでに黒字化している経営状況、それとメディアによく登場している社長も信頼できそうだしなどなど、ここは一つ信用して食べてみようと思ったのである。と書くと何だか格好がいい。確かに大きな要因に違いないが、本音を言えば、要するに吉野家の牛丼を食べたかったのである。カウンターに座って、同時に出て来た牛丼を前に、「自己責任だわね」、「病気になるときは一緒ってことか」、「あ〜ら、お生憎さま。こういうときに前世の悪業が出るのよ。私のは大丈夫だけど、そっちはどうかしらね」などと言いながら、久しぶりの牛丼を味わった。

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平成20年(2008年)4月24日 西日本新聞
米産牛肉・・・吉野家「点検が奏功」
 米国産牛肉から特定危険部位が見つかった問題で、牛丼チェーンの吉野家は23日「自社工場でのチェック体制がきちんと働いた。吉野家の牛丼は安全だ」と強調、牛丼の店頭販売を継続する方針を表明した。
 問題の部位は、埼玉県大利根町の工場で21日、牛肉が入った段ボールを開けた社員が発見した。工場では牛肉を手作業で扱いながら点検しているという。
 吉野家の牛丼は米国産牛肉しか使用しておらず、問題の牛肉を出荷した工場を含めて米国の13工場と取引している。ナショナルビーフ社カリフォルニア工場からの調達をストップし、ほかの工場からの調達を続け、必要な牛肉を確保する。
 吉野家は米国産牛肉の輸入禁止を受けて2004年2月に牛丼の販売を中止。その後、時間限定で販売を再開し、3月に24時間販売を再開したばかりだった。


追伸平成18年(2006)12月04日 西日本新聞
加工食品の原料原産地表示
JAS法に基づく表示基準の改正で、10月2日から、より多くの加工食品に原料原産地表示が義務付けられました。生鮮食品の場合、原産地表示は2000年7月から義務付けられています。しかし、加工食品はたくさんの原材料で構成されていることが多いため、それぞれの原産地を表示することが難しく、制度として定められていませんでした。外国産原材料を用いて国内で加工した場合、国内産として表示できたため、消費者に誤解を与えかねない実態だったのです。そのため01年10月から、一種類の生鮮食品を単純加工した梅干しなどの特定品目ごとに加工食品の原料原産地表示が始まり、徐々に表示対象が拡大されました。今回の改正では、より多くの食品について表示対象とするため、個別品目ではなく、以下の要件で選ばれた20品目群に対して原料原産地表示が義務付けられました。
加工程度が比較的低く、生鮮食品に近い加工食品
原材料の原産地によって価格差があり、商品の差別化がされている。
原材料の調達先が海外を含め多様である。
原材料全体の重さに占める主原料の農畜水産物重量が50%以上。
現在では「乾燥きのこ類、乾燥野菜・果実」「緑茶」「もち」「調味した食肉」などの加工食品に原料原産地表示が義務付けられ、加工地との違いが明確になりました。しかし、店内で加工、直接販売する場合や、畜産加工品の加熱調理品・冷凍食品は対象外です。制度をよく理解して食品を選択しましょう。
福岡市消費生活センター
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