ウルフ由伸・・・2000年優勝へのカウントダウン


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尚、左の画像は
http://www.yomiuri.co.jp
/hochi/giants より


File-No.000909

先制

[2000・8・30 対 阪神 戦 東京ドーム]

前日、9回 救援岡島が踏ん張れず4連敗を喫した巨人。「あたりが出るのを待つしかない」と打線復活を待ち望む長嶋監督がいた。模索する監督は、不振の江藤に替えウルフ由伸を3番に上げた。4回、福原の132キロのスライダーは高めに抜けた、低迷を振り払おうとするウルフの打球は、右翼席上段への2ラン。東京ドームの巨人800号のホームランだった。更に6回ウルフの一振りは、低い弾道を描いてバックスクリーン左に飛び込んだ。2打席連続の本塁打が、離れかけた勝利の女神を「力ずく」で呼び戻した。「3番高橋」は見事に成功した。

中押し

[2000・9・2 対 中日 戦 中日球場]

7回まで 1:0 で リードしているとはいえ薄氷を踏む思いの巨人。 得点は、江藤のホームランによる1点のみ。 先発 平松は、中日の6回まで、6残塁と ボール打ちの目立つまずい攻めに助けられて 5安打 打たれながらも無失点に押え 6回 を投げきった。7回巨人は、中日のバッターとの駆け引きで三沢・柏田・木村 の3投手をつぎ込んだ。巨人は、こう着状態を打ち破る1点がどうしても必要だった。追加点をとって 流れを引き寄せたい巨人に8回表 「ノーアウト 満塁」 願ってもない絶好のチャンスが来た。バッターは、 3番ウルフ由伸 。打順が3番になってからのウルフは5割を打っている。確率5割で2点、3点取れるはず。しかし、高橋は自らそれを望まなかった。流れを引き寄せるには1点でいい。この試合における1点の重みを充分理解していた。普通、打者はバッターボックスに立つとき、キャッチャー寄りギリギリに立つ。しかし、この打席の高橋は、あえてピッチャーに一番近い位置に立ったのである。キャッチャー寄りに立って、落ちる球をひっかけダブルプレーなら完全に中日に流れが変わる。マジックが点灯して最初のゲームである。絶対にマジックを消してはならない。高橋は、自分の個人的な打率も、大量点も望まなかった。一点でいい。犠牲フライでいい。ピッチャーの投げた球が変化する前に叩こう。試合の流れをすべて把握した頭脳プレーである。結果、みごとな犠牲フライで一点を追加した。これで流れを引き寄せた巨人は、マジックを「16」とし、優勝へのカウントダウンが始まった。

だめ押し

[2000・9・5 対 広島 戦 東京ドーム]

この日、先発 ひさのりは調子は今一歩。6回を投げて責任回数は投げたものの勝ち投手の権利なく、自責点2でマウンドを下りた。7回を終わって2:2の同点。しかし、巨人の2点はいずれも犠牲フライによるもので、重量打線は鳴りを潜めていた。8回裏、バッターは好調 江藤 。打ったと同時に ホームランと分かるあたりだった。打った江藤は最初から走らなかった。大いに盛り上がり、誰もが今日の勝利を信じた。が!しかし9回表 リリーフ 岡島 は、勝ちを急いだ。3人で終わらせようと焦りがあった。若い岡島である、責めるのは酷かもしれない。これに乗じた広島は、2本のヒットでしぶとく同点に追いついた。同点でありながら、ムードは完全に広島になった。延長戦に縺れ込んだら 岡島 が持つか? 桑田に全幅の信頼を寄せられるか?敗戦のイメージがよぎる。明日につなげる試合にする為にも、何としてもこの暗雲を振り払わねばならない。9回裏2アウト、その重責をになって バッターはウルフ。ウルフの一振は、巨人ファンと巨人ナインの夢を乗せてライトスタンドに突き刺さった。派手なガッツポーズで、完全に流れを巨人に軌道修正した。試合後、長嶋監督に「ここにいたって、一気にこの“勢い”で突っ走りたい」と言わしめた価値ある「さよならホームラン」であった。

「優勝という目標がある。自分の成績は、そのあとついてくればいい」。チームを V へ導く天才打者の 力強い言葉である。実力と自信に裏付けされたプレーが、巨人の優勝への「道しるべ」になった。


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