映画「ティアーズ・オブ・ザ・サン」を見て
( Tears of the Sun )

主演:ブルース・ウィリス  
モニカ・ベルッチ
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昨日テレビでブルース・ウィリス主演の映画「マーキュリー・ライジング」(98年アメリカ)が放映されていた。いつもながら孤独な戦いが似合う男である。そのなかでNSA(国家安全保障局)の局員がこう言っていた。「ヒーローはいない。みんなチームの一員、歯車のひとつだ。自分の役割を果たすこと、それが国を支えている。アメリカ自体、一つのチームだ」。今回の映画「ティアーズ・オブ・ザ・サン」のエンディングに、政治思想家エドムンド・バークのこんな言葉が出てくる。「善なる人々が行動を怠れば、必ず悪が勝利する」。この映画の意図するところを言い表したものであろうが、NSAの言った言葉と考え合わせるとアメリカの考え方がよくわかる。この映画は、当初「ダイ・ハード」の次回作として用意されたものだそうだが、そのデーマなどから独自の作品として作られた。ストーリーはいたって単純明快なので、その分映画に没頭できる。

特殊部隊のウォーターズ大尉は、内戦下のナイジェリアから、アメリカ国籍の女医リーナ・ケンドリックスの救出の命令を受ける。ウォーターズと7人のスペシャリストは、難なくリーナを救出できるはずだったが、リーナが患者を一緒に連れて行くことを強く要望した為、思わぬ展開となる。しかし、そこは百戦錬磨のエリート大尉。ヘリ合流地点まで難民を共にするが、ヘリにはリーナだけを乗せ飛び立つ。言ってみればだまし討ちだが、国家の命令に忠実であることを旨とするウォーターズにとって「重要なのは、任務遂行」であり、リーナの絶叫の抗議にも反応しない。ところが、彼女らを救出した協会のうえにヘリが差し掛かり、協会に残した全員が虐殺されている惨状を目の当たりにした時、大尉の心は動く。「ヘリを戻せ」。ウォーターズが始めて犯した“命令違反”である。国境まで60キロ、女医と28人の難民と共に、孤立無援の戦いが始まる。

「難民救助」は「内政干渉」である。隊員から「これは任務変更か」と質問されるが「いや、同じ任務だ」と答える。医師救助の任務に変わりはないのだが、山越えの途中で、村人を虐殺している反乱軍に遭遇すると、ここまできたらやるしかないと戦闘態勢に入る。エドムンド・バークはこうも言っている「何も行動しなかった人ほど大きな過ちを犯した人はいない。なぜならば、たとえどんな小さな事でも何か出来たかもしれないからである」。精鋭8人は、その見事な能力であっと言う間に制圧する。さて気になるのが後方から迫りつつある反乱軍。その確実な追跡に、難民の中にスパイがいると判断する。スパイを捕らえるが、実は重大な事実が判明する。この重大な事実は、外交問題にも発展しかねない。「我々の戦争じゃない」とウォーターズは、隊員に今後の選択を問う。しかし彼らはウォーターズを信頼し、人間として難民救出を選択する。

反乱軍との戦闘が展開される中、「必ず救出を成功させてくれ。犬死したくない」と言い残して部下が倒れていく。激しく飛び交う銃弾をくぐり抜け、感動のエンディングを迎える。実に面白い映画だった。見終わったあと、映画の心地よい余韻に浸りながら、私は延々と映し出されるクレジットを呆然と見ていた。見所もいくつもあった。ヘリ合流地点へ向かう途中、敵と遭遇したときの沈黙の緊張感、ヘリが引き返してきたとき見せた難民の希望の笑顔と涙、「また娘に会えるか」と問う難民ペイシシェンスの顔、隊員全員が救出に賛成したときの穏やかな顔、最後に救援に来てくれた爆撃機の攻撃であがる火柱などなど・・・。しかし、なんと言っても ヘリ合流地点の草むらで、救出ヘリを待つ イタリアの宝石 モニカ・ベルッチ(リーナ・ケンドリックス医師)の、あの“りん”とした姿でしょう。このワンカットだけでも価値があろうと言うものです。

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STORY
監督:アントワン・フークワ
出演:ブルース・ウィリス、 モニカ・ベルッチ  
米国海軍特殊部隊シールで、任務遂行に100パーセントの実績を誇るウォーターズ大尉(ブルース・ウィリス)は、内戦の激化したナイジェリアからアメリカ国籍の女医リーナ・ケンドリックス(モニカ・ベルッチ)救出を命じられ、精鋭部隊を率いてジャングルの奥地へ赴く。ところが、肝心のリーナは難民と一緒でなければこの地を離れることはできないと救出を拒否する。一旦は無理矢理リーナのみを救出用ヘリに乗せ飛び立ったものの、上空から難民の惨劇を目にしたウォーターズは命令を無視して引き返すのだった…。