映画
「サンシャイン2057」
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FileNo.070515

今からわずか50年後だというのに、早くも太陽の活動が衰え、地球は氷河期になっている。太陽のエネルギーがなくなれば、地球上の生命も滅亡する。そこで太陽にマンハッタン島大の核爆弾を打ち込み再生させようというのである。核爆弾を操作する物理学者など“人類の救世主”として選ばれた8人のクルーが、宇宙船イカロス2号で太陽へ向う。1号は7年前、この任務に失敗している。人類が持つ最後の“核”を積み込んだ今回の任務は、文字通りラストチャンスとなる。太陽と地球の距離は、1億5千万キロ。光でさえ8分かかる距離だ。「16ヶ月も経てば、環境には慣れるが、価値観は混乱する」と、映画は旅立って16ヶ月の時点から描かれている。外には、人間など一瞬にして溶かしてしまうほどの強烈な太陽の光が降りそそぐ。シールドで守られた宇宙船内には「酸素菜園」があり、水が流れ、植物が育ち、酸素が供給され、生態系が維持されている。

この映画には、究極の選択の場面がいくつかある。水星の裏側を回ったとき、イカロス1号から発信された音を拾う。「進路を変更し、行くべきだ」という意見に対し、「太陽が死に、人類の死滅を助ける為だ、彼らの命より我々のミッションが先だ」という場面。酸素菜園に火災が発生し、目的の位置まで行くために必要な酸素が足りなくなる。二人減らせば何とか行けるという、これぞ究極の選択。結局は、酸素や核爆弾を手に入れるため、イカロス1号に行くが、3人が1号に乗り移ったあとアクシデントで船が切り離されてしまう。さてその3人に対し、宇宙服は一つしかない。更に「サールが死ねば酸素がもつ」という場面。結果的にサールは自殺するが、いずれの選択も「人類の未来 対 人間一人の命の重さ」という選択である。宇宙船本来の使命をまっとうするためには、爆弾を扱える物理学者が生き残らなければ意味がない。結論はそこに行き着く。

太陽といえば昨年9月、内之浦から最後のM5ロケットで打ち上げられた「太陽観測衛星・ひので」がある。24時間ずっと太陽を観測できる軌道に打ち上げられ、搭載された三基の最新鋭望遠鏡は最大限の能力を発揮する。10月末にはコロナの鮮明な画像を、11月には爆発により2万キロ上空までガスが噴き上がる画像などが公開された。太陽表面が約6000度Cに対し、なぜコロナが数百万度の高温になるのか、天文学の謎の解明が期待されている。更に、「ひので」は太陽の磁場の分布が正確にわかるという。映画のなかで「太陽風の値が異状に高い」と話す場面もあったが、昨年12月に発生した太陽フレアは、放出された電磁波が2万倍という大規模なもので、一時的にNASAなどのGPSにも影響があったという。太陽は2011年の極大期に向け、活発になっていく。磁気嵐による深刻な被害も予想され、「宇宙天気」のより高い精度の予測への貢献も望まれるところだ。

最新のVFXを存分に使った映像は見事なものだった。しかし正直言って、私がこの映画に期待した内容とはかなり違うものだった。「人類の未来 対 人間一人の命の重さ」の選択にも見られるように、舞台が宇宙というだけでストーリー展開は「極限状態のおける人間の行動」が主だったと言える。太陽は中心部で約1500万度C、圧力が約2500億気圧という超高圧で「核融合」により巨大なエネルギーを出している。地球の100倍を越える巨大な太陽をわずかマンハッタン島くらいの核爆弾で、果たして元どおりの巨大エネルギーを呼び戻せるのか。太陽の寿命は100億年以上あり、現在は46億年が経過したところだ。映画は、わずか50年後だというのに、人類滅亡の危機にさらされるほど太陽が衰えている。いづれも、その根拠などの説明は一切ない。50年後なら、むしろ地球上の環境悪化による人類滅亡の方がよほど現実味があろうというものだ。

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STORY
監督:ダニー・ボイル
出演:キリアン・マーフィ、真田広之
2057年。太陽はその輝きを失い、地球上の生物は滅亡の危機にさらされていた。人類のいちるの希望を乗せて、宇宙船・イカロス2号は太陽へ向かう。搭乗した8人のクルーたちは、太陽にマンハッタン島大の核爆弾を打ち込み活性化させるという任務を負っていた。しかしそのクルーに次々とアクシデントが襲いかかる。果たして任務は成功するのか、人類に未来はあるのか…。
2007/09/06 宇宙研究開発機構は「M5」の後継機ロケットのアウトラインを決定し、文科省の承認を得た。名前は「イプシロン」という案が有力だそうだ。3段式固体燃料ロケットで、第一段にはH2Aの補助ロケットを使用するという。打ち上げ目標は2011年。
先月(2007/04)文部科学省は、平成19年の科学技術週間に「一家に1枚 宇宙図」を頒布した。福岡市でもロボスクエアなどで配布されたので、一枚手に入れた。この宇宙図は宇宙の歴史と構造をデザイン化したもので、完成までに7ヶ月を要したという。「宇宙はどのように生まれたのか?」「人間の材料はどこから来たのか?」というようなことが書かれている。わずか一枚によくぞこれだけの内容が分りやすく、効率よく盛り込まれたものだ。宇宙についての基礎的な知識は、この一枚で十分得られる。
例えば「主系列星」については次のように書かれている。
成熟し、宇宙に輝く星・・・核融合反応と星の寿命
恒星は生涯のほとんどを「主系列星」として過ごします。これはいわば、一人前となった恒星の呼び名。その中心では、4つの水素原子から1つのヘリュウム原子をつくる核融合反応が進んでおり、この反応が、恒星が放つ大量の光を生み出しています。星が主系列星として輝く期間は、その星の質量で決まります。太陽より軽い星の場合は100億年以上ですが、太陽の10倍重い星は、数千万年にとどまります。
Web上でも見ることが出来るし、ダウンロードも出来るようです。
平成19年5月17日 西日本新聞
「まいど」ついに宇宙
 宇宙航空研究開発機構は16日、来年夏にH2Aロケットで、大型衛星と相乗りさせて打ち上げる小型衛星6個を発表した。昨年、初めて公募を実施し、民間企業や大学などからの応募約20件の中から選定した。
 一辺50センチ級の大きさでは、ものづくりの町として知られる大阪府東大阪市の中小企業が集まって設立した東大阪宇宙開発協同組合が開発し、「まいど1号」の愛称を持つ雷の観測衛星「SOHLA−1」と、高層大気の発光現象を調べる東北大の「スプライト観測衛星」を選定。
 さらに小さいサイズでは、オーロラの電流を観測するソフトウエア開発会社ソランの「かがやき」、地球画像取得実験をする東京大の「PRISM」、衛星と連結したロボットの技術実証を行う香川大の「STARS」、姿勢制御の実証する都立産業技術高専の「航空高専衛星」を選んだ。
 H2Aが民間企業の衛星を打ち上げるのは初めて。打ち上げ費用は無料。「かがやき」を開発するソランは、障害がある子どもを対象に衛星の製作過程の見学や、描いた絵を衛星とともに宇宙に送る取り組みも行う。