消費者金融のCM
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File-No.021012

最近TVコマーシャルで頻繁に目にするものに、三井住友銀行の「@ローン」がある。
女性  「私こう見えて、大食いなの」
ユースケ(女性が食べて積み上げた皿の山を見て)「あっ〜〜〜!!!」

この驚いてあげる大声が、我が家の居間に響き渡る。この@ローンは、三井住友銀行が、三洋信販などの出資でスタートさせた消費者金融である。こういう銀行系の消費者金融は他にも「東京三菱・アコムのキャッシュワン」「UFJ・プロミスのモビット」など続々と出来ている。サラ金に行くのは抵抗があるという顧客層をねらっているらしい。公的資金を、サラ金に回して稼ごうとしているか思うと、CMが余計にうるさい。

コマーシャルなら本家本元のサラ金「武富士」「アイフル」「アコム」「プロミス」「レイク」等々、我が世の春を謳歌するがごとく、ゴールデンタイムにがんがん流している。この不況の世の中、テレビ業界も、一社で年間数百億のCM料を使う業界は、お得意様々である。会社経営を考えれば、背に腹は変えられないというところであろうか。しかし、凶悪犯罪の裏には、必ずといっていいほど多額の借金がある。無人くん、お自動さん、など誰にも顔をあわせず、簡単に金を借りることが出来るシステムが定着してきた。「かわいい犬が買いたかったら、サラ金で今すぐ借りましょう」と頻繁に入ってくる情報が、多重債務者をつくる一要因になっていないだろうか。

レイクのコマーシャルにこんなのがある。
夫「パソコンほしいな・・・」
妻「そんな余裕、内にはないでしょ」(ここでレイクの屋上から魚型飛行物体が発進)当然、金を融資するためである。
妻「あなた、当たったわよ。パソコン。」
夫「うそ〜」(魚型飛行物体は、「ガクッ」とずっこけて元の屋上へ戻る)

これも「かわいい犬」パターンで、明らかに家計に余裕がないのに、ほしい物があったらサラ金で借りましょうである。「ご利用は計画的に・・・」と付け加えているサラ金もある。本当に計画的な家計管理とは次にあげるような内容であろう。

これはごく最近、無料で家庭に配られるタウン情報誌に載っていた、ある一般家庭の家計簿から、必要項目を抜き出し、分析してみたものである。

可処分所得
260,000

項目

金額

指標

比率

消費支出

220,000

消費性向

85%

内、食費

50,000

エンゲル係数

23%

内、ローン支払

23,900

ローン/消費支出

11%

エンゲル係数も近年ほぼこれくらいの比率になっている。内容はごく平均的である。消費支出に占めるローンの割合に注目してみると、約11%であった。私は大まかな掴み方として、可処分所得の10%程度が適当であると思っている。そういう意味で、健全である。この家庭は黒字であり、貯蓄も30,000円程度は可能なようだ。要は、収入と支出の適切なバランスであり、これ即ち家計管理能力である。

自己責任の問われる社会で、借りる側の責任はもちろんであるが、貸し手側の責任も大いに問われる。消費者の能力を超える購入と、代金回収の困難が社会問題化したため、「割賦販売法」には、業者に対し「正確な信用情報を利用して支払能力を超えると認めるときは与信を行わないように努めるべきこと」としている。更に「消費者金融に関する法」(貸金業法など)にも「貸金業者は、顧客・保証人の資力、信用を調査し、その返済能力を超えると認められる貸付契約をしてはならない」とある。しかるに、昨年度の自己破産件数は、前年を約2万件も上回り、戦後最悪の16万件にのぼった。少なくとも、サラ金で気軽に借りて、遊興費に使った結果、多重債務者に陥り破産した、などということは社会的システムで排除したいものである。


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平成14年12月21日 日本経済新聞
消費者金融CM 17〜21時自粛 ――――― 放送の第三者機関

NHKと民法でつくる第三者機関「放送と青少年に関する委員会」(原寿雄委員長)は20日、子供の金銭感覚への悪影響が懸念されるとして、青少年の視聴者が多い午後5時から9時に銀行系を含む消費者金融のCMを自粛するよう民放各社に求める見解を発表した。

見解は、消費者金融CMの現状が青少年の視聴者への配慮などを定めた日本民間放送連盟(民放連)の放送基準に抵触する、と指摘。自粛のほか、借金のリスクが分かりやすく、安易な借り入れを助長しないよう内容にすることも容貌した。

昨年春までに全民放が消費者金融CMの放送に踏み切り、CM量も増加。「“お金が無ければ借りればよい”と子供の金銭感覚をゆがめている」と多くの視聴者が批判を同委員会に寄せ、9月から問題点を検討していた。原委員長は「消費者金融予備軍をCMがつくっているのではないか。改善の動きはあるが、やめるべきだ」と訴えた。