文章教室・課題「さくら
日本人のこころとメガバンク

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大手都市銀行に「さくら銀行」というのがある。このさくら銀行は、もともと10年ほど前に太陽・神戸・三井の3行が合併した銀行である。その時、新銀行名を社員にアンケートしたところ、ダントツで約40%の行員が「さくら銀行」を希望したそうである。「さくら」の持つイメージが、どれほど良いイメージであるかがよくわかる話である。
日本人は、万葉の昔からさくらを好んできた。さくらの季節になると、新聞、テレビは、桜前線の状況を連日報道し、花見の名所を詳しくレポートする。家族、会社、恋人同士、さまざまな人々が花の下で酒を酌み交わし、カラオケに興じ、花見弁当に舌鼓を打つ。いまや、花見は日本人にとって、盆や正月に引けを取らない年中行事なのである。
 日本を代表する銀行が、伝統の「三井」の名を捨ててまで「さくら」というイメージに託したものは何であろうか。恐らく一般大衆に広く愛されることであったに違いない。そして、そうありたいと思うのはどの銀行も同じであろう。しかし、実態は大きくかけ離れている。多額の公的資金は、新たな不良債権で消えてしまい、企業との株式持ち合いは、株価不安まで引き起こしている。更に、個人に対しては、合併でATMの数を減らし、小口の預金口座からは、口座維持手数料を取る動きと聞く。怒り心頭、何をか言わんやである。
 メガバンク誕生の今こそ、日本人の心である「さくら」をイメージし、「一般大衆をベース」に強い基盤を確立してほしいものである。


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